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【書評】「コンテキスト・リーダーシップ 「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる」山口 周

2026/05/21公開 更新
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「コンテキスト・リーダーシップ 「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる」山口 周


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー


「任せる」と「丸投げ」はどこが違うのか

電通・ボストン コンサルティンググループを経て独立した著者が、リーダーシップの本質は「文脈(コンテキスト)」にあると説いた一冊です。本書の最初の問いは、「任せる」と「丸投げ」の違いです。


「任せる」と「丸投げ」は、実は行為としてはまったく同じです。どちらも「細かな指示を出さずに仕事を与える」という行為です。しかし一方は「最高のリーダーの行為」として称賛され、もう一方は「最悪のリーダーの行為」と批判される。この違いはどこから来るのでしょうか。


それは、その人の行動が「どう受け取られるか」です。それを決めるのは、それまでに築いてきた関係性や経緯、つまり「コンテキスト(文脈)」だというのが著者の主張なのです。


リーダーシップにおいて真に重要なのは「何をするか」という問題、つまり「行為論」なのではなく、周囲の人々がリーダーの言動をどのように受け止め、解釈するかという問題、すなわち「意味論」になるのです(p27)

コンテキストは言語と非言語で伝わる

「コンテキスト(文脈)」を共有するには、どうすればよいのでしょうか。


著者の経験では、多国籍メンバーで構成されるコンサルティング会社のリーダーは、指示や依頼を出す際に必ず背景と意図を丁寧に説明する、つまりコンテキストの共有に時間をかけていたといいます。


そして、その「コンテキスト(文脈)」の伝達において、言語以上に重要なのが「非言語」のメッセージだと著者は指摘します。欧米のリーダーシップ教育プログラムに演技・演劇がカリキュラムに含まれている理由も、ここにあります。


著者自身が演技トレーニングを受けた際、コーチから「あなたの叱り方では、状況のシリアスさをメンバーに共有できない」と言われたというエピソードを紹介しており、言葉のだけでは伝わらないものがあることを示唆しています。


言い方、表情、間、声のトーン、こうした非言語の要素が総合して、相手に「コンテキスト(文脈)」として伝わるのです。


新人は、上司が顧客に謝罪する電話のやり方や、先輩が後輩に指導している場合、会議室の外で交わされる雑談など、必ずしも「共育のため」に用意されたものではない情報を周辺から吸収しながら成長します(p88)

ポジションでリーダーシップスタイルを変える

上司の仕事のスタイルとして、「お手本を示す」と「自分でやってしまう」という行為も同じですが、ポジションで意味合いが変わってきます。課長レベルまでは「指示命令+率先垂範」によって一定の成果を出せます。


しかし部長以上になると、組織構成員の数が増え、責任範囲が広がるため、スタイルを「ビジョン+民主+育成」へとシフトし、それまで頼ってきた「指示命令+率先」を意識的に手放す必要があるといいます。


課長レベルまでは「お手本を示す」良い行為であったものが、部長以上になると「自分でやってしまう」悪い行為になるのです。


それまで「お手本を示す」ことで評価されてきた人が、「動かない」ようにすることへの恐怖は切実です。しかしその恐怖を乗り越え、お手本を示さず、ビジョンを示し、意見を聞いて、部下を育てなれけば、次のステージには進めないのです。


離職率の高い部署のマネジャーは「指示命令」と「率先」のスコアが顕著に高く、離職率の低い部署のマネジャーは「ビジョン」「民主」「育成」のスコアが顕著に高いことがわかった(p60)

ナラティブ(物語)が世界を動かす

「コンテキスト(文脈)」を積極的に編集して社会に発信すると、それは「ナラティブ(物語)」となります。


例えば、チャーチルが第二次世界大戦において直面したのは、軍事的にも経済的にも追い詰められた大英帝国という現実でした。しかし彼はその状況を「自由と民主主義を守る文明史的な試練」として意味づけることで、国民と連合国を動かす物語をつくり上げました。


一方でヒトラーは「ユダヤ人が社会を食い物にしている」という物語を語り、人々を虐殺へと駆り立てていったのです。


ビジネスにおいても社会状況に適合した「コンテキスト(文脈)」と「ナラティブ(物語)」は組織を発展させる力となります。


例えば、ピーチ・アビエーションの創業期に、井上慎一社長は、会社の存在意義を問われて、「それは戦争をなくすことです」と答え、「若いうちから外国に出て、さまざまな文化に触れ、多くの友人を持つことが大事で、そのために、安く利用できる航空会社が必要なんです」という「ナラティブ(物語)」を語ったという。


また、ユニ・チャームは、もともとベビー用おむつのメーカーでしたが、少子化に対応して、他社に先駆けて大人用介護おむつに注力するという「ナラティブ(物語)」を会社方針とすることで、大きな利益を上げててきたのです。


コンテキスト(文脈)を編集し、集団を束ね、モチベーションを高める「人文学的知性」が決定的な意味を持つ(p313)

AIの時代にこそ問われるリーダーシップ

AIの時代だからこそ、リーダーには「コンテキスト(文脈)」が重要になると著者は主張しています。


AIが弱いのは「問うべき問題を設定する力」と「多くの人を束ねてリーダーシップを発揮する力」です。つまり、コンテキスト(文脈)を読み、編集し、集団を「ナラティブ(物語)」で束ねる力こそがAIにできないことであり、人にしかできない貴重な能力なのです。


「コンテキスト(文脈)」や「ナラティブ(物語)」などと英語ばかりでわかりにくかったのですが、内容は納得です。山口さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・「的確な指示」と「マイクロマネージ」の違いは、行為そのものによって生まれるのではなく、それまでに築き上げてきた上司と部下との関係、その状況へ至るこれまでの経緯・・・ひっくるめたコンテキスト(文脈)によって生まれる(p28)


・アリストテレスは、著書「弁論術」」の中で、人を動かすためには、「ロゴス=論理、パトス=情熱、エトス=倫理」の三つが重要だと指摘しました(p138)


・アリストテレスは・・・人を動かすためには・・・説得するタイミングやコンテキスト(文脈)、つまりカイロスの見極めが重要であり、適切なタイミングを逸した説得が実を結ぶことはないと述べています(p138)


・英国の外交に関わる原則として、京都大学で長らく国際政治に教鞭をとられた中西輝政先生は、「早く見つけ、遅く行動し、粘り強く主張し、潔く妥協する」と説明しています(p141)


▼引用は、この本からです
「コンテキスト・リーダーシップ 「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる」山口 周
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山口 周 (著)、光文社


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次


第一章 コンテキストとリーダーシップ
第二章 メソ・コンテキストとリーダーシップ
第三章 社会・経済のマクロ・コンテキストとリーダーシップ
第四章 私たちを取り巻くマクロ・コンテキスト
補章 コンテキストを「読む力」「編む力」


著者経歴


山口周(やまぐち しゅう)・・・1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。


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