「お金の流れで読み解くビートルズの栄光と挫折」大村大次郎
2022/09/29公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
ビートルズが現代の音楽ビジネスの常識である、ファンクラブやミュージック・ビデオなどをはじめたと聞いて手にした一冊です。1960年代の音楽業界ではロックバンドの成功例はほとんどなく、ソロ歌手として売り出すのが常識でした。しかし、ビートルズは4人組のバンドとして売り出されたのです。
これはビートルズのマネジャーとなったブライアン・エプスタインに先見の明があったということなのでしょう。無名のバンドと契約し、レコード会社に売り込みをかけてくれたのです。メジャーデビューにあたり、それまでリーゼントの不良ロックバンドだったビートルズを、マッシュルームカットの礼儀正しいアイドルバンドに生まれ変わらせたのもエプスタインと言われているのです。
・ビートルズがはじめておこなったもの・・・ミュージック・ビデオ、ファンクラブ、世界ツアー(p61)
また、エプスタインがレコード店のオーナーであったことも影響したと思われますが、ビートルズはアルバムの売上を柱としたビジネスモデルを展開します。当時はライブで稼ぐミュージシャンが多かった中で、画期的なビジネスモデルです。このレコード中心戦略は、アルバムは高額で売れにくいというデメリットがありましたが、作詞・作曲も行っているビートルズにとって印税収入が多いというメリットもあったのです。
ビートルズはライブでの演奏料を格安にして、露出を増やすことに注力しました。また、お金を出してテレビ番組に出演することまでしており、「レコードを売ること」を最終目標に販促活動を行っていたのです。さらに、それまでのミュージシャンがシングルを中心に売り、シングルが下火になったころでシングルを寄せ集めてアルバムにして再販するというのが常識の中で、ビートルズはシングル曲を入れないアルバムを売ることまで挑戦したのです。
・レコード売上を収益の柱にするビジネスモデル・・・当時、ミュージシャンの多くは・・ライブでの演奏料を主な収入源としていた(p130)
ビートルズは音楽の天才でしたが、税金や著作権については素人であり、お金が原因で8年間で解散してしまったのは残念にでした。お金とは評価や価値を定量化できる便利な道具ですが、お金に支配されるようになると、本業に悪影響を与えることもあるのです。お金とは、切れ味のよいナイフのようなものであり、お金のあ使い方に失敗すると痛い目に会うのです。財務担当の人選は、要注意ですね。
ビートルズのデビューの背景や、当時のリバプールの音楽が「マージー・ビート」と呼ばれたこと。リバプールにマージーという川が流れていたことなどはじめて知り、楽しく読めました。大村さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・素早く本気を出して取り組めば、夢が叶うスピードも上がる。また自分に才能がない場合も、早めに気づくことができる(p30)
・ロックバンドという概念は、じつはビートルズと、アメリカのビーチ・ボーイズが世間に広めたものなのだ(p62)
・欧米のマネジャーは、アーティストの代理人とも言うべき存在で、売り込みの宣伝活動、レコード契約や興行など、交渉のいっさいを引き受ける(p67)
・インド音楽をポップスに取り入れたのもビートルズが最初であり・・・シンセサイザーを初めて本格的に導入したのもビートルズである(p104)
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第1章 「好きなこと」で稼ぐ技術はビートルズに学べ
第2章 前例なき世界で稼ぐ「最強チーム」のつくり方
第3章 市場ごと巨大化させた「マネージメントの極意」
第4章 売れ続ける「ビジネス戦略」をどう築いたのか?
第5章 音楽業界の常識を打ち破った「収益化の革命」
第6章 世界制覇とブリティッシュ・インベンション
第7章 所得税95%!ビートルズを苦しめた税金問題
第8章 「意外な解散理由」急で巨額な収益は分裂しやすい
著者経歴
大村大次郎(おおむら おおじろう)・・・元国税調査官。国税局に10年間、主に法人税担当調査官として勤務。退職後、ビジネス関連を中心としたフリーライターとなる。
単行本執筆、雑誌寄稿、ラジオ出演、『マルサ!!』(フジテレビ)や、『ナサケの女』(テレビ朝日)の監修等で活躍している。
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