「龍馬のマネー戦略 教科書では絶対に教えない幕末維新の真実」大村大次郎
2021/09/01公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
元国税調査官が明治維新前後の坂本龍馬のお金に焦点を当てて、歴史を振り返ります。明治維新の混乱期は、力とは武力であり、武力は資金力でした。薩摩、長州は海外との交易と貨幣の改鋳(偽金作り)で資金を作り、武器を購入していたのです。
また、福井藩の由利公正などは藩札という貨幣を創造して、藩内の産業を育成して藩財政を回復させており、坂本龍馬が新政府の財務官として招聘しています。現代でも財政規律を重視する専門家がいますが、デフレ・スパイラルを抜け出すためには、一定の資金投入が必要であり、若干のインフレを許容して、経済発展→財政改善が歴史の教訓なのでしょう。
・龍馬は越前に向かった・・・龍馬は、由利(公正)の財政に関する知識にほれ込み、以前から新政府ができたら、彼を絶対に財政官に招聘したいと考えていたのだ(p203)
それにしても坂本龍馬の見識の高さを再認識しました。薩摩、長州を橋渡しする戦略眼。海援隊という貿易会社を作ってしまう実行力。大政奉還から議会制を目指す先見性。松平春嶽、勝海舟から認められる人間力。海援隊で会計をしていた岩崎弥太郎が龍馬の死後、海援隊の船などを引継ぎ、海運業で稼いで三菱グループとなったのですから、坂本龍馬が三菱を作ったようなものです。
龍馬は大政奉還の直前に、「幕府が銀座を京都に移すなら、将軍職は残してもいい。そうすれば、将軍職の名はあっても実はないので、恐るに足らない」という手紙を書いています。こうした先見性を持った人物は、既得権者から危険人物とされ、幽閉されるか暗殺されることが多いのが、歴史の教えてくれるところです。
・(岩崎)弥太郎のつくった「三菱」は龍馬の発想を受け継いだ・・・明治維新以降、海援隊の船などを引継ぎ、瀬戸内海の海運業を一手に引き受けることで、三菱財閥の基礎を築いた(p130)
明治維新の書籍は多いのですが、こうして龍馬のお金という切り口で学び直すのも、楽しく読めました。東北に住む者としては、その後の戊辰戦争は気持ちの良いものではありませんが、明治になって日本の人口が増えていったことを考えれば、幕府を廃止した明治維新は、正しい方向だったのでしょう。
日本では混乱時こそ発展のチャンスのように感じました。大村さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・薩摩、土佐さけではなく、偽金づくりをしていた藩は判明しているだけでも十数藩に及ぶ・・・会津藩でさえ偽金をつくっていた(p157)
・龍馬は国事に奔走する傍ら「北海道開拓の計画」も立てていた(p225)
・新撰組は、江戸のあぶれ浪人たちを取り立てて、京都で不逞を働いている浪人を取り締まらせるという、いわば「毒をもって毒を制す」という策だったのである(p43)
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1章 誰とも繋がる「史上最強の浪人」
第2章 幕末を制した「瀬戸内海の海上王」
第3章 私設艦隊「海援隊」とは何か?
第4章 「龍馬の偽金」で倒幕を果たした官軍
第5章 明治新政府を支えた「龍馬マネー」
著者経歴
大村大次郎(おおむら おおじろう)・・・元国税調査官。国税局に10年間、主に法人税担当調査官として勤務。退職後、ビジネス関連を中心としたフリーライターとなる。単行本執筆、雑誌寄稿、ラジオ出演、テレビ番組の監修等で活躍している。
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