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「ホモ・デウス(下)テクノロジーとサピエンスの未来」ユヴァル・ノア・ハラリ

2021/08/31公開 更新
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「ホモ・デウス(下)テクノロジーとサピエンスの未来」ユヴァル・ノア・ハラリ


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

 上巻ではテクノロジーの発展により生物工学、ロボット工学、人工知能の発展により、人の寿命が画期的に伸び、新しいロボットが創り出されるだろうという話でした。下巻では資本主義や市場経済を採用した自由主義が、経済成長によって飢饉や疫病や戦争といった課題を解決してきたことを示し、テクノロジーが自由主義にどういった影響を与えるのか考察します。


 世界には自由主義、社会主義、全体主義などの国家群がありましたが、自由主義の国々が社会主義の医療・福祉など良い点を取り入れ、先進国として生き残って現在に至ります。特に資本主義については、人々が経済活動によって、あなたの得は私の得でもあるという、誰もが満足する状況と見るよう促す仕組みであり、世界の平和と発展に重要な貢献をしたと分析しています。


・自由主義は、競争相手の社会主義やファシズムからさまざまな考え方や制度を採用した。特に、一般大衆に教育と医療と福祉サービスを提供する責務を受け容れた(p88)


 テクノロジーの発展は、多くの分野に影響を与えています。人工知能が人間の仕事と同じことをできるようになったら、人間が不要になってしまうのではないか。遺伝子操作によって子孫を選べるようになってしまったら、金持ちだけが優秀な子孫を作り、格差が広がるのではないか。戦争がロボットやドローンだけで遂行されるようになったら、将来の戦争はどうなるのか。


 例えば、自立型のロボットやドローンは、今後どんどん導入されるとしています。そもそも人間の兵士はロシア軍のように民間人を殺人したり、強姦や略奪をするからです。まだ、ロボットのほうがましということなのでしょうか。


 また、宗教はテクノロジーの発展に、どういった答えを準備できるのでしょうか。自由主義社会が、人の寿命と幸福と武力を最大化しようとしたとき、何が起きるのか、と問題提起をしています。例えば、カトリック教会は何億もの信徒の忠誠と献金を享受しながら、避妊や中絶を禁止しています。正統派ユダヤ教徒はインターネットを使ってよいのかどうか議論になっているというのです。


・テクノロジーの発展によって人間は経済的にも軍事的にも無用になるという脅威は・・・実際問題としては、民主主義や自由市場などの自由主義の制度がそのような打撃を生き延びられるとは思いにくい(p133)


 投資活動は、人工知能が行うようになる。戦争は、ドローンと人工知能が行うようになる。養鶏は、自動化された養鶏場で行われる。医療も、人工知能が判断するようになる。作曲さえも、アルゴリズムが行う、という世界がやってくるのです。こうしたテクノロジーの進歩は、人類が他の動物に対してしてきたことを、人類に対してする可能性があると警鐘を鳴らしています。


 世界はコンピュータアルゴリズムを作る人と、アルゴリズムに支配される人々に別れ、Google, Apple, Facebook, Amazonといった企業はまさにアルゴリズムとデータを支配しようとする企業群であり、新しい世界をリードしていくのでしょう。ハラリさん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・シンガポールでは・・・大臣の給与はGDPと連動している。シンガポールの経済が成長すると、政府の閣僚は昇給になる(p17)


・2011年、ロボットがたった一台で対応する調剤薬局がサンフランシスコで開業した(p145)


・日本や韓国など、テクノロジーが進歩した国々では出生率が低下している。そこでは、減る一方の子供たちを幼少期から教育するために莫大な資金が投じられており、・・・インドやブラジルやナイジェリアのような巨大な開発途上国は、日本と競うことなど、どうして望みうるだろう?(p187)


・データ至上主義が世界を制服することに成功したら、私たち人間はどうなるのか?・・・人間からアルゴリズムへと権限がいったん移ってしまえば、人間至上主義のプロジェクトは意味を失うかもしれない・・・人間の健康や幸福の重要性は霞んでしまうかもしれないからだ(p243)


▼引用は、この本からです
「ホモ・デウス(下)テクノロジーとサピエンスの未来」ユヴァル・ノア・ハラリ
ユヴァル・ノア・ハラリ,河出書房新社


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

 第6章 現代の契約
 第7章 人間至上主義革命
第3部 ホモ・サピエンスによる制御が不能になる
 第8章 研究室の時限爆弾
 第9章 知能と意識の大いなる分離
 第10章 意識の大海
 第11章 データ教



著者経歴

 ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)・・・1976年生まれのイスラエル人歴史学者。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。軍事史や中世騎士文化についての著書がある。


人類の進化関係書籍

人類進化の700万年」三井 誠
人類大移動 アフリカからイースター島へ
異常気象が変えた人類の歴史」田家 康
ヒトは食べられて進化した」ドナ・ハート ロバート W.サスマン
「ホモ・デウス」ユヴァル・ノア・ハラリ


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