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「般若心経 生き方を学ぶ」ひろさちや

2022/08/26公開 更新
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「般若心経 生き方を学ぶ」ひろさちや


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

 教義があやしい新宗教の本ばかり読んできたので,心機一転。仏教の本を読み始めました。「般若心経」といえば,いつも笑顔で競馬が大好きだった今は亡き伯父さんが、写経していたことを思い出します。


 「般若心経」では色即是空といわれるように、すべては「空」であると考えます。暑い・寒いもない,きれい・汚いもない。では,お金もあるようで,ない。ないようで,あるのでしょうか。お金も「空」だから捨てるとかお布施とか関係ない!というのが,本質的な「般若心経」の読み方ではないのか、と私は思いました。


 その一方で,すべて「空」なのだから,全財産を喜捨しても問題ないという考え方もあるようで,こうした自由なところが仏教のよいところなのでしょう。


・きれいも/汚いもない・・これはすべて物差しの問題なんです(p25)


 興味深かったのは,大乗仏教と小乗仏教の違いです。小乗仏教といわれるのは、後世の暇人が歪めて説いたものとこの本では説明されていますが,イメージとしては出家して修行した人だけが救われる,小さい乗り物のような教えらしいのです。


 もともとのブッダの説かれた仏教は、だれでも救われる、大きな乗り物のような教えであり,これが「大乗仏教」で、「般若心経」は大乗仏教の経典です。大乗仏教では「苦」は「空」ですが,小乗仏教では「欲」を消滅させることで「苦」がなくなるという。欲をなくするという考え方は理想的ですが,実現性が低く,お金を巻き上げるための理屈に使われそうな気がしました。
 

・小乗仏教は・・「欲望」を滅すればいい・・・大乗仏教は「苦」そのものを「空」だと見ます。「苦」なんて,固定的・実体的に存在していないのです(p100)


 また、「般若心経」の基本的な考え方は、成功哲学とまったく同じだと思いました。例えば、この本では頑張らないことを「正精進」と説明していますが、中道(いい加減)だから努力が続くのです。努力は、のんみり,ゆったり,ほどほどに努力するのが成功へ至る道なのです。


 「喜捨」とは喜んで所有物を捨てること。これは与えれば余る、奪い合えばなくなると言われるとおり、仲間で共有することで豊かになれるのです。


 「愛語」とは、無条件の愛のこと。母親であれば子どもに対し、「お母さんは,あなたが大好きよ。あなたがどんなになっても,お母さんがあなたを愛していることだけは忘れないでね」と伝えることが子どもの自尊心を育むのです。


・じつをいえば,人生に目的なんてないのです(p208)


 新宗教では欲を捨て去れ,だから財産をすべて教団に寄付せよとか,地獄に落ちないようにお布施が必要など勝手にルールを作っていますが,「般若心経」ではお金に固執するのかしないのかよくわかりませんでした。


 いずれにしろ宗教というものは、人を幸せにするためのものであり、人それぞれ違うのですから,多くの体系の中から自分に合ったものを選べばよいのではないでしょうか。病気によって薬が違うように,人によって考え方を変えればよいのです。昔は錬金術と言われていた魔術が化学となったように,昔も今も宗教といわれているものは心理学や哲学として体系化できるのではないでしょうか。


 ひろちさやさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・般若とは,ちょっと損をするための智慧だと理解してください(p40)


・隣家からの貰い火で全焼・・・ただ「焼けた」のです。つまり,事実を事実として,淡々と受けとめようとしたのです(p58)


・お煎餅はもともと一つです・・・両親はもともと一つのものです・・大乗仏教は,われわれに「無分別智」・・分別するな!を教えています(p94)


・思うがままにならないことを,思うがままにしようとします。そうすると,そこに苦しみが生じるのです(p96)


・じつをいえば,人生に目的なんてないのです(p208)


・わたしたちみんなは,この人生劇場に配役を与えられて生まれてきました・・・自分に与えられた役柄をしっかりとつとめるべきです(p213)


▼引用は、この本からです
「般若心経 生き方を学ぶ」ひろさちや
ひろさちや、中央公論新社


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

1 『般若波羅蜜多心経』
2 観音在菩薩
3 舎利子よ
4 小乗仏教はだめ
5 ゆったりと歩む 104
6 三世の諸仏
7 般若波羅蜜の真言
8 半眼で見る
エピローグ 人生をプレイする



著者経歴

 ひろさちや・・・1936(昭和11)年、大阪に生まれる。東京大学文学部印度哲学科卒業、同大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。気象大学校教授を経て、仏教・インド思想等、宗教について幅広く執筆・講演活動を行っている。


仏教関連書籍

「仏教新論」森 政弘
「ブッダの教えがわかる本―仏教を学ぶ」服部 祖承
「捨てる力 ブッダの問題解決入門 」大喜多 健吾
「苦しみの手放し方」大愚 元勝
「お母さんにしてもらったことは何ですか?」大山真弘
「般若心経 生き方を学ぶ」ひろさちや


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