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「仏教新論」森 政弘

2020/03/08公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

 著者が伝えたいのは、仏教の本質です。長い歴史のなかで、仏教には自力、他力などいろいろな宗派が出てきましたが、本質は同一のなのだという。極端に言えば、善と悪とは一つ。差別も平等も同じ。つまり、そうした二元論を超越した世界があるということです。


 例えば、「差別即平等」という言葉の意味は、親指から小指まで五本とも、それぞれが違った性格と能力を持っているからこそ、お互いに協力し合って手が素晴らしいはたらきを示すことができるのであり、五本の指はそれで平等であるという。差があるから平等なのです。


・自力系(天台宗・真言宗・禅宗などと他力系(浄土宗・浄土真宗など)とでは、見かけ上は正反対の教説が説かれている(p27)


 「一つ」といえば、善も無記も悪も一つ。ここで無記とは、善悪の価値観を超越して淡々と観察することです。たとえば、刀は人を殺傷する悪の存在ですが、メスは人を救う善の存在であり、「鋭利な鉄のへら」なら無記の表現になるのです。


 そして、すべてが一つになると、「自在」になるという。つまり、自力(ミズカラ)と、他力(オノズカラ)が調和したときうまくいくといういことなのです。成功哲学でいえば、成功するべき人格ができれば、自然と周囲から成功するようなことが起こるということです。


 原因と結果の法則と似ていると思いました。自ら努力しつつ「おかげさま」の気持ちを持つということで自在となれるのでしょう。森さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・お経を読むとひと口に言うが、それには三種類の読み方がある。第一は読誦、すなわち声を上げて仏壇の前などでお経を唱える・・・二番目は、机の前で意味をかみしめながら読む・・第三は、・・お経に書いてある内容を日常の生活に生かすという読み方である(p95)


・人間一般には、とらわれと貪欲という精神作用があり、それが自分自身を苦しめ、また他人にも良くない影響を及ぼしているのがふつうである・・・金銭にとらわれ・・名誉にとらわれ・・官能にとらわれおぼれている人もある・・仏教は、何ものにもとらわれない姿勢を養うものと言ってもよいからである(p135)


・我を出して、おれが私がという自己中心的な姿勢は迷いである・・・悟りは、縁によりすべてのものに生かされているという無我の状態と見てよい(p213)


・自在性は人間が知識によって分別してでっちあげたものではなく、人間が分別という作用を働かせる以前から、大自然の基本的性質として備わっているということである・・・自在とは、ひと口に言えば、人知では計り知れないほど優れた、身心でのハタラキの霊妙性と言える・・・(p246)



【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

第1章 真なる仏法
第2章 仏教を貫く論理を超えた「一つ」
第3章 日常の「一つ」
第4章 仏道での「一つ」
第5章 自他を「一つ」に
第6章 『法華経』での「一つ」
第7章 空についての予備的考察
第8章 般若経での「一つ」
第9章 種々の「一つ」
第10章 自在学への道



著者経歴

 森政弘(もり まさひろ)・・・1927年(昭和2年)、三重県に生まれる。名古屋大学工学部電気学科卒業。工学博士。東京大学教授、東京工業大学教授を経て、東京工業大学名誉教授、日本ロボット学会名誉会長、中央学術研究所講師、NPO法人国際ロボフェスタ協会特別顧問、ロボコンマガジン編集顧問を務める。ロボットコンテスト(ロボコン)の創始者であると共に、約四十年にわたる仏教および禅研究家としての著作も多い。紫綬褒章および勲三等旭日中綬章を受章、NHK放送文化賞、ロボット活用社会貢献賞ほかを受賞する


仏教関連書籍

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「ブッダの教えがわかる本―仏教を学ぶ」服部 祖承
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「苦しみの手放し方」大愚 元勝
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「般若心経 生き方を学ぶ」ひろさちや


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