【書評】「通州事件 日本人はなぜ虐殺されたのか」藤岡信勝, 三浦小太郎
2020/10/21公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
日本人民間人200人を虐殺
通州事件とは1937年7月29日、北京の東方20キロの通州でおこった支那兵による日本人民間人200人強の虐殺事件です。当時は排日運動が活発で、日本人が殺されたり、いやがらせを受けており、3週間前に盧溝橋で日中の軍事衝突があったばかりでした。
日本が軍事教育した保安隊とはいえ、反日宣伝が行われている中で日本人部隊100人だけを残して本隊が通州を離れたのは認識が甘かった、ということなのでしょう。
中国の兵隊は、大きな針金を持って来て、十数人の男性の掌の穴に通し、数珠つなぎにしたというのですから、殺し方が日本人の常識を超えており、日本人への挑発行為としては絶大な効果がありました。
彼らは日本人を群衆の前で全裸にし、撲殺、強姦、陰部刺突、眼球抉り取り、内臓引き出しなど天人ともに赦さざる猟奇の蛮行を繰り広げた。処刑場では集団銃殺がなされた。女性多数が惨殺された日本旅館は血の海となった(p22)
歴史は80年で繰り返す
通州事件を調べたのは、歴史は80年で繰り返すという説があるからです。通州事件が発生した1937年は83年前。当時、中国共産党は日本を追い出すため抗日統一戦線を作って、組織的に挑発行為を行っていました。その一つが通州事件だったのです。
著者は、近代において日本人が中国大陸と関わるようになってから、3000件の日本人虐殺事件があったと語っています。
80年後、中国共産党は韓国、ロシア、アメリカを取り込んで抗日統一戦線を作って、尖閣諸島を日本から奪おうとしました。反日デモで日本企業が焼き討ちされ、レアアースを禁輸しました。
尖閣諸島は歴史的に中国のものであるという工作活動は続いており、今は、尖閣諸島に中国人民解放軍指揮下の海警局の船が毎日やってきて挑発活動を行っているのです。
1935年12月、中国共産党中央は「瓦窰堡会議」を招集し、抗日民族統一戦線の構築を呼びかけ、日本帝国主義を中国から駆逐し、失地回復を目指す・・1936年3月、劉少奇は天津に赴くと北方局書記に任じられ、売国政府打倒と冀東地区における抗日活動の展開は、党の主要工作任務の一つに位置づけられた(p43)
中国共産党の反日教育は続いている
南京大虐殺を歴史的事実とし、日本人を悪魔のような民族であるとする中国共産党の反日教育は続いています。歴史は繰り返すとすれば、現代の通州事件は形を変えて、現代社会でも起こる可能性が高いのです。
大事なのは、中国で殺されてきたのは日本人だけではなく、文化大革命では地主や富豪の中国人が殺され、現代中国ではチベット人、ウイグル人が、法輪功などの宗教関係者も殺されてきたということです。
「中国共産党に対して認識が甘かった」という80年前の失敗を繰り返したくないと感じました。藤岡さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・排日運動・・1934年から1935年にかけて・・・非武装地帯の唐山で朝鮮系日本人たちが殺される・・・1935年5月、天津にあった親日派の新聞社社長の白逾桓と胡恩溥が拳銃で殺害される・・・日本製品を買った中国人は檻に吊るされて拷問されている・・・日本人には考えられないようなことをやります(p131)
・盧溝橋事件・・・日本に対する挑発は収まらなかった。その背景には、第二次国共合作のもとで、国民党のなかに中国共産党員が潜り込み、日本軍を戦争に引きずり込むために挑発行為を行えというコミンテルンの支持があった。蒋介石も抗日の立場において同調していた(p18)
・首謀者の第一総隊隊長・張慶余・・・「北冀東保安隊通県反正始末記」という手記がある(「反正」は正当な反乱といった意味)。それによれば、事件は二年前、すなわち保安隊創設時から計画され、張は29軍の宋哲元とも密会して資金援助を受けていた(p23)
・森島守人著「陰謀・暗殺・軍刀」・・・森島守人は外交官で、通州事件当時は北平の日本大使館に勤務する参事官・・・わが飛行部隊が、誤って一弾を冀東防共自治政府麾下(きか)の、すなわちわが方に属していた保安隊の上に落とすと、保安隊では自分たちを攻撃したものと早合点して、さきんじて邦人を惨殺した・・・・森島は1955年に、左派社会党の衆議院議員となった(p35)
・「誤爆説」が誤りである第一の理由は、以前から通州でも日本人への殺意を煽る工作が行われていた・・・中国の軍民の間に吹き込まれた反日感情・・・「日本人皆殺し、日本人ぶち殺せ」という興論がたかまってまいりました(p37)
・文化大革命・・・人民解放軍による軍事管制下で毛沢東が民衆に最高指示というお墨付きを与え、社会の害毒でしかない旧地主や旧富農に対する闘争を行えと指示したわけです。要するに地主や富農であった人間を殺してもよいと承認したわけです(p96)
・2016年11月に日テレ系列で「南京事件/兵士たちの遺言」という一時間のテレビ番組がありました・・15年くらい前に刊行された本と、20年くらい前に毎日新聞に載った写真を基に番組を作ったものです・・・その中で通州事件の登録申請を批判しているのです(p79)
・報道する側、特に朝日新聞や毎日新聞、あるいは失礼だけど学者の方々は、加害者とされた日本側の裏付けを取っていません・・・つまり、調べないで書いている。その最たるものが「中国の旅」を書いた本多勝一記者・・・こんな残虐事件、残虐行為が事実として残ることは、日本人の安全にとって由々しい問題ではないかと思った(p156)
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第一章 通州事件とは何か―事件の概要と通説批判 藤岡信勝
第二章 通州事件と南京事件 阿羅健一
第三章 通州事件事件の精神的・思想的背景 北村稔
第四章 通州事件の時代背景 田中秀雄
第五章 「虐殺」をめぐる日中の宣伝戦 田辺敏雄
第六章 通州事件と南モンゴル―民族虐殺の記録として 三浦小太郎
著者経歴
藤岡信勝(ふじおか のぶかつ)・・・1943年北海道生まれ。拓殖大学客員教授。「新しい歴史教科書をつくる会」副会長、「通州事件アーカイブズ設立基金」代表。
三浦小太郎(みうら こたろう)・・・1960年東京生まれ。評論家。「アジア自由民主連帯協議会」事務局長。1990年代から北朝鮮の人権問題、脱北者の支援、アジア諸民族との連帯・支援活動に取り組んでいる。
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