「地政学の論理―拡大するハートランドと日本の戦略」中川 八洋
2017/04/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
ハートランドとは、ユーラシア大陸のことです。地政学では、ハートランドを支配した国が、世界を制覇できるとしています。この大陸を一つの勢力に独占させないことが大切なのです。しかし、日本には、核弾頭も、巡航ミサイルも、有事にそれを発射する爆撃機や原子力潜水艦もありません。これではユーラシア大陸に巨大な勢力ができれば、いずれ日本は侵略されてしまうだろうと著者はいうのです。
ユーラシア大陸の勢力に対抗するためには、中露を分断すること、そして周辺から包囲することです。スパイクマンは、米国は軍事的に強大な中国の出現を阻止すべきで、米国のアジアの同盟国として、現在の敵国・日本を選択すべきである、と提唱したのです。
・"中露分断"こそ、日本の対中外交の要・・「拡大ハートランド」を阻止せよ(p321)
そして核兵器を配備するのであれば、アメリカの核兵器をレンタルすればいいのです。勝てると思ったら攻撃してくるというのが、ロシア、中国の行動様式ですから、日本にはそれを抑止するための核兵器が必要なのです。日本共産党が1982年から80年代をずっと通して、核兵器を搭載したトマホーク反対運動に全力を投入したことからも暴力革命を目指すソ連にとって核トマホークは邪魔な存在なのです。
・バーナム説が何よりも肯綮に中っているのは、「共産ロシア帝国は、軍事的に勝利できると思ったときは必ず戦争に訴え、敗北すると思ったときは平和を選択する」との、ロシア対外行動の核心を衝く、最重要点であろう(p263)
こうした地政学と反対の行動を取ったのが、戦前の日本です。搾取することしか考えない悪の野蛮な民族であるロシアと組んで、満洲から英米を排除したのです。「米国は仮想敵国」として「日露同盟」を締結させたのが、山縣有朋と井上馨だったのです。
その結果、ロシアは決して満洲に資本を投下しないし、国際的に日本は孤立化し、日本は経済的利益を減らしました。さらに外務大臣の松岡洋右は、『リットン調査団報告書』を誤読し、激昂して国際連盟から脱退しました。『リットン報告書』は、現状を肯定する日本側に配慮した内容だったのです。
現在の日本の平和のためには、武力のバランスを取ることです。そのために巡航ミサイル、核兵器の共同使用など検討してくことが必要なのでしょう。中川さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「樺太は、国後・択捉島とともに、祖国日本の祖先が日本を守らんがために残した、東アジア・リムランド防衛の守護神で固有の領土だから奪還しよう」とか、「日本海とオホーツク海の<日本の内海>化は、どうすればできるか」・・そのような苦慮も沈思も日本にはない(p132)
・「日の丸」核ミサイルは、輸入した米国製であることと、その発射の鍵が必ず日米共同のダブル・キーでなければならないこと、この二つの条件が日本の賢明さというものだろう(p236)
・ロシアでは、2000年、プーチンが大統領になるや中学生以上の男子に、軍事教練を学校の科目として復活した。いつでも「二千万人」の陸軍を編成できる。十五万人という超ミニ陸軍しかない日本の、約百倍である(p250)
・日本の共産主義者が中枢で実権を掌握していた帝国陸軍は、カムフラージュ用の煙幕スローガン「本土決戦」「一億玉砕」で日本国民を騙して、スターリンに奉仕すべく東アジア全域をソ連領とするために・・共産主義の布教のための革命戦争をしていた(p86)
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
序論 米国一極構造で安定堅牢なヨーロッパ、冷戦が再開した"火薬庫"アジア
第1部 英米系地政学―日本の正統外交の脊往
第2部 英米系地政学に叛旗する"アジア主義"―なぜ日本は再び滅亡したいのか
あとがき 出生率三倍増なくして、消える日本の対ハートランド防衛力
著者経歴
中川八洋(なかがわ やつひろ)・・・筑波大学名誉教授。昭和20年生まれ。福岡県出身。東京大学工学部航空学科宇宙工学コース卒、米国スタンフォード大学政治学科大学院修了。昭和55年筑波大学助教授、昭和62年筑波大学教授(平成20年3月定年退官)。専門は、国際政治学および政治哲学・憲法思想
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