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事実を検証せず報道するジャーナリスト「捏造の科学者 STAP細胞事件」須田 桃子

2016/09/19公開 更新
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「捏造の科学者 STAP細胞事件」須田 桃子


【私の評価】★★☆☆☆(67点)


要約と感想レビュー

小保方氏をSTAP細胞事件の犯人と断定

取材中の執拗さに小保方さんが恐怖を覚えたという毎日新聞の須田桃子氏が書いた、小保方氏をSTAP細胞事件の犯人と断定している一冊です。


以下の引用文を見るとわかるように、その内容のほとんどが若山照彦教授への取材をもとに書いていることがわかります。若山照彦教授も事件の中心人物であるのに、若山照彦教授の話を検証もせずに真実のこととして書いた本が、この本なのです。


事件の中心人物一人だけの証言を基に、小保方さんに全責任を押しつけるかのような記載に、首をかしげざるを得ませんでした。


STAP幹細胞はSTAP細胞を長期培養した後に得られるものだ。長期培養をしたのも保存をしたのも若山先生なので、その間に何が起こったのかは私には分からない・・・元となったのは、若山氏は小保方氏から受け取った「STAP細胞」である。若山氏に全責任を圧しつけるかのようなこの釈明には、首をかしげざるを得なかった。

若山照彦教授の情報を裏取りせず報道

STAP細胞の研究のチームリーダーである若山照彦教授の指導のもとに、STAP細胞を作ったのが客員研究員であった小保方さんであり、そのSTAP細胞からキメラマウスを作ったのが若山照彦教授です。つまり、すり替えることができたのは若山照彦教授か小保方さんかその近くの人のはずなのに、その当事者である若山照彦教授の話だけを正とし、STAP細胞をすり替えたのは小保方さんではないのかと断定調に書いているのが、不自然に感じられる点です。


あたかも取材に応じる替わりに、若山照彦教授に有利な報道をすると取引したかのように感じられる内容です。例えば若山照彦教授が「STAP細胞の遺伝子が異なる系統だった」という情報を提供しているとすれば、その情報の裏を取り、すり替えることのできる人(若山照彦教授もすり替えることができる)をすべて列挙して事実関係を整理するべきなのに、単に小保方氏がすり替えたのではないかという疑念だけを書いているのです。


若山氏へのそれまでの取材によると・・・同じ遺伝子を持つはずのSTAP幹細胞が元の赤ちゃんマウスと異なる系統だったということは、STAP細胞の作製過程か、STAP幹細胞の樹立過程で、他の万能細胞が誤って混入したか、すり替えられた可能性が高まる(p128)

事実と推測をわけず、断定している

事実を確認し、それを第三者の視点で分析したうえで報道するのがジャーナリストの使命かと思いますが、複数の情報源に当たるでもなく、事実と推測をわけることもせず、断定調で書いていることが気になりました。このような内容であるにもかかわらず、この本は、大宅壮一ノンフィクション賞、科学ジャーナリスト大賞を受賞しています。


情報を多角的に検証せず、一方的な内容をそのまま出版している著者の姿勢と、それで良しとする毎日新聞の報道機関としての適格性に首をかしげざるをえない一冊でした。場合によっては「捏造のジャーナリスト」になりかねない一冊だと思われます。


なぜなら笹井氏の死について、著者は本書の中で「考えるほどに、やるせなさが募った」と書いていますが、笹井氏の遺書の中に「マスコミなどからの不当なバッシングで疲れ切ってしまった」との趣旨の記述があったといわれています。笹井氏の死が、著者のように事実を検証せずに、一方的な報道するマスコミに原因がある可能性があるのです。さらに調査を続けます。


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この本で私が共感した名言

・笹井氏がメールで言っていた通り、小保方氏の言う「作製」は、Oct4が働くのを確認した段階までを指しているようだ。ただし、STAP細胞を作るには一回あたり数匹の赤ちゃんマウスが必要だ。若山氏に確認したところ、作製に使ったマウスは購入したのではなく、若山研で繁殖されたもの・・(p180)


・翌16日午後2時からの記者会見では、若山氏が自らの解析を発表した・・・論文上で最も重要な「FLS」と呼ばれる8株は・・・GFP遺伝子が18番ではなく15番の染色体、しかも2本の染色体の片方のみに挿入されていた。これは、若山研が提供した、STAP細胞作製に使ったはずのマウス由来ではないことを意味する(p249)


・小保方氏や笹井氏が4月の記者会見などで若山氏に責任を転嫁するかのような発言を繰り返したことには「僕に全部押しつけられるんじゃないかという恐怖感があった」と振り返り、第三者機関に解析を依頼した動機の中には、自らの潔白を表明したいという気持ちもあったことを明かした(p252)


・STAP幹細胞の作製は小保方氏と若山氏、後者の遺伝子データは小保方氏と笹井氏、さらに遺伝子解析を担当した共著者の共同作業だった。両者の過程に深く関わっているのは、小保方氏一人だ(p265)


▼引用は、この本からです
「捏造の科学者 STAP細胞事件」須田 桃子


【私の評価】★★☆☆☆(67点)


目次

第一章 異例づくしの記者会見
第二章 疑義浮上
第三章 衝撃の撤回呼びかけ
第四章 STAP研究の原点
第五章 不正認定
第六章 小保方氏の反撃
第七章 不正確定
第八章 存在を揺るがす解析
第九章 ついに論文撤回
第十章 軽視された過去の指摘
第十一章 笹井氏の死とCDB「解体」
第十二章 STAP細胞はなかった
最終章 事件が残したもの



著者経歴

須田 桃子(すだ ももこ)・・・1975年千葉県生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了(物理学専攻)。2001年毎日新聞社入社。2006年から東京本社科学環境部記者。本書で大宅壮一ノンフィクション賞、科学ジャーナリスト大賞を受賞。


STAP細胞関連書籍

「STAP細胞 事件の真相」佐藤貴彦
「STAP細胞 残された謎」佐藤貴彦
「あの日」小保方 晴子
「小保方晴子日記」小保方晴子
「捏造の科学者 STAP細胞事件」須田 桃子
「STAP細胞はなぜ潰されたのか ~小保方晴子『あの日』の真実~」渋谷 一郎


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