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小保方さんは主犯なのか「STAP細胞 残された謎」佐藤貴彦

2020/11/13公開 更新
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「STAP細胞 残された謎」佐藤貴彦


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

STAP細胞事件調査結果の疑問点

だれもが考えているであろう「STAP細胞とは何だったのか」の答えを示唆する一冊です。


2014年に「STAP細胞はあります!」と記者会見で断言した小保方さんは、マスコミから徹底的に叩かれました。STAP細胞については小保方さんが主導した捏造ということになっていますが、著者は調査報告の杜撰さを指摘し、真相は違うのではないかと問題提起しています。この本で指摘する調査結果の疑問点を挙げていきましょう。


まず理研の報告書では、STAP細胞はES細胞由来と結論付けています。では、STAP細胞を捏造するために、小保方さんがES細胞を若山研究室から盗んだという筋書きです。実は小保方さんは、マウスの系統などについての知識がなく、捏造するに適したES細胞のサンプルを自分で選ぶことはできなかったのです。知識がないのに、どうして同じ系統のサンプルを盗み出すことができるのでしょうか。


ラベルを読めない小保方氏が、若山研に残された種々雑多なサンプルの中から偶然手にしたものが、たまたまSTAP細胞と系統(129B6)が一致していたというのも、出来すぎた話である(p57)

若山照彦教授が手法を変えたらキメラマウスができた

また、チームリーダーであった若山照彦教授が、小保方さんからSTAP細胞をもらってキメラマウスを作る作業をしていたのですが、若山照彦教授は「キメラマウスを作る作業は失敗続きだったが、手法を変えたらキメラマウスを作ることができた」と証言しているのです。


仮に小保方さんの単独犯とすれば、若山照彦教授が手法を変えた瞬間に小保方さんがそれを察知して、ES細胞をSTAP細胞と置き換えて若山照彦教授に渡したことになります。若山教授に気づかれずに細胞を置き換えるという筋書きには無理があります。若山照彦教授が単独でウソをついているか、小保方さんと若山照彦教授が綿密に連携していなければ辻褄が合わないのです。


仮に小保方さんと若山照彦教授が綿密に連携していないとすれば、若山照彦教授が単独で「STAP細胞からキメラマウスを作ることができた」ということを意図的に捏造していたという結論になるわけです。


若山氏は朝日新聞のインタビュー(2月6日)に対して・・・「最初はES細胞と同じ手法で試みたが、一年半ものあいだ失敗が続き、ES細胞と異なった手法を試したところ、いきなり成功した」・・・この事実は、「STAP細胞=ES細胞」であるという説と真っ向から矛盾する。もし、STAP細胞が最初からES細胞であったのだとすれば、一年半ものあいだ失敗し続けることはあり得ない(p77)

物証は若山照彦教授の任意提出

そもそも、この調査の欠陥として「証拠保全」がなされていないことを指摘しています。つまり、物証となるべきSTAP細胞の多くを若山照彦教授は山梨大学へ移管しており、事件の重要な物証が事件の中心人物によって保管され、その人物の任意に提出されるという状況ということです。そして物証の解析も若山研究室を経由して本当に第三者によって解析されたのか疑問があるというのです。


あくまで状況証拠の積み重ねとなりますが、真相はどこにあるのでしょうか。これは名探偵コナンより面白い。続編の「STAP細胞 事件の真相」を購入しました。だいたい真相は予想できますが書籍が送付されてくるのを待ちましょう。


それにしてもこれだけ大問題となった事件なのに、NHKスペシャル、新聞などで不公平で杜撰かつ印象操作的な報道がありました。例えば、『NHKスペシャル調査報告STAP細胞 不正の深層』では、(1)STAP細胞にアクロシンGFPが組み込まれていた。(2)若山研では、アクロシンGFPを組み込んだES細胞が作られていた。(3)留学生の作ったES細胞が小保方氏の冷凍庫から見つかった。という話が順番に述べられ、あたかも小保方さんがES細胞を盗んだかのように報道しています。ところが留学生の作製したES細胞は、STAP細胞の捏造に用いられたとされるアクロシンES細胞とは何の関係もなかったと判明しているのです。


BPO放送人権委員会は2017年2月10日に『NHKスペシャル調査報告STAP細胞 不正の深層』について,「名誉毀損の人権侵害が認められる」と決定,再発防止に努めるよう「勧告」を出しています。NHKは「BPOの決定を真摯に受け止めますが,番組は関係者への取材を尽くし,客観的な事実を積み上げ表現にも配慮しながら制作したもので,人権を侵害したものではないと考えます」としているのです。全く反省していないNHKは、同じことを今後も繰り返すのでしょう。佐藤さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・桂調査委の報告書は、「B6由来のFI幹細胞の正体は、ES細胞90%、TS細胞10%の割合で混ぜたもの」という点に関して遠藤論文と同じ結論を出している。ところが、にもかかわらず、B6由来のFI幹細胞の現物は見つからなかったというのである(p172)


・もし、交配ミスの生じる可能性が全くないというのであれば、STAP細胞の正体はアクロシンES細胞の混入以外にはありえないのであり、この時点で捏造であることは確定する。しかし、若山氏自身が一度は交配ミスと判断したのであれば、やはり交配ミスの「可能性」は皆無ではなかったということになる(p29)


・明らかに不正と思われるのに、不正とは認定されなかった謎の画像がある・・・一方の画像はES細胞由来であり、胎児は光っているが、胎盤は光っていない。そして一方の画像はSTAP細胞由来であり、胎児も胎盤も光っている・・・若山氏自身が述べているように、実際には、ES細胞であっても胎盤は結構光る・・・これは明らかな捏造である(p144)


▼引用は、この本からです
「STAP細胞 残された謎」佐藤貴彦
佐藤貴彦 、パレード


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

第1章 論文不正
第2章 NHKスペシャル『調査報告 STAP細胞 不正の深層』
第3章 「自家蛍光」説
第4章 再現実験の失敗
第5書 桂調査委員会の調査報告(その一)
第6章 石川智久氏による告発
第7章 再び「自家蛍光」
第8章 悪意の証明
第9章 不正の背景
第10章 四つの不正
第11章 桂調査委員会の調査報告(その二)
第12章 遠藤高帆氏の論文
第13章 TCR再構成
第14章 小保方氏の博士論文



著者経歴

佐藤貴彦(サトウタカヒコ)・・・名古屋大学理学部卒


STAP細胞関連書籍

「STAP細胞 事件の真相」佐藤貴彦
「STAP細胞 残された謎」佐藤貴彦
「あの日」小保方 晴子
「小保方晴子日記」小保方晴子
「捏造の科学者 STAP細胞事件」須田 桃子
「STAP細胞はなぜ潰されたのか 小保方晴子『あの日』の真実~」渋谷 一郎


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