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「炎立つ 1~5」高橋 克彦

2016/02/21公開 更新
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炎立つ 壱 北の埋み火 (講談社文庫)


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

■平安時代の「前九年の役」「後三年の役」から
 源頼朝による奥州藤原氏の討伐までを
 テーマにした歴史小説です。


 舞台は蝦夷と呼ばれた
 奥州(東北地方)。


 物語は、奥州を支配していた
 安倍一族の婚礼の儀に
 陸奥守が招かれるところからはじまります。


 京の朝廷は、奥州から年貢を徴収するため
 胆沢城(岩手県)、多賀城(宮城県)に
 陸奥守を駐在させていました。


 蝦夷から見れば、
 朝廷からは搾取されつづけ
 人として扱われることはない。


 そうした扱いに耐えるか、
 耐えられなければ
 蝦夷の反乱となるのです。


 結果、安倍一族は乱を起こし、
 大和朝廷から侵攻され滅亡しました。


戦には必ず終わりがある。その終わりをどこに定めるかで将の器量が問われる。貞任にはそれがない。どこまでも果てなく続けるであろう。それで勝ちを収めたとてなんになる(弐p68)


■安倍氏と藤原経清を滅ぼした清原家の武貞と
 経清を夫とする安倍頼時の娘が
 息子(清衡)を連れて再婚しています。


 敵との婚姻という不思議な血縁は、
 読みながら納得できませんでした。


 やはりその後、清原家の兄弟間で
 跡継ぎ争いが勃発し、
 清衡が兄:真衡、弟:家衡を退けます。


 清衡は、父である藤原経清の藤原として
 平泉に移り、奥州藤原氏の歴史が
 ここに始まるのです。


 そこに生きた人々が、
 朝廷と戦うのか、恭順するのか
 悩み、決断しながら
 歴史を作ってきたことがわかりました。


・跡呂井(あてるい)を筆頭に安倍貞任さま、藤原経清さまと続いた蝦夷(えみし)の誇りを方々はお忘れか!いずれも帝に抗って堂々と戦さを挑まれた。(四p277)


■東北の歴史とは、
 中央からの攻撃と敗戦の歴史だと
 思いました。


 蝦夷征討(アテルイの敗戦)
 前九年の役、後三年の役(安倍氏の滅亡)
 奥州合戦(奥州藤原氏の滅亡)
 戊申戦争(幕府側の滅亡)


 さすがに大東亜戦争では、
 アメリカには勝てなかった。


 国家にしてみれば、初めての敗戦ですが、
 東北人から見れば、もう一つ敗戦の歴史が
 加えられたということです。


 高橋さん、
 良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・だれに金を掴ませれば戦さを避けることができるのか調べるのじゃ・・公卿どもは本心より武士の台頭を危ぶんでおる。武士が力を持つのは常に戦さを通じてだ(壱p138)


・内裏が陸奥の民を蝦夷を蔑む限り、我らもまた安倍の心意気を忘れてはならぬのだ(五p20)


・「重任はどうだ?よき知恵でもあるか」実を言うとこの時点で宗任にはすでに策がある。が、相手に考える余裕を与えずにそれを強いれば、ただの命令となる。宗任はそれを嫌った。合議という形を重んじたのだ(壱p342)


▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★★☆(84点)



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目次

1 炎立つ 壱 北の埋み火
2 炎立つ 弐 燃える北天
3 炎立つ 参 空への炎
4 炎立つ 四 冥き稲妻
5 炎立つ 伍 光彩楽土


著者経歴

高橋 克彦(たかはし かつひこ)・・・1947年生まれ。小説家。盛岡市在住。岩手中学校・高等学校を経て早稲田大学商学部卒業。盛岡藩の御殿医の家系で開業医の家庭に育ち、医学部受験の経験がある。父は医師の高橋又郎(2002年没)。エッセイストの高橋喜平と、「どろ亀さん」の愛称で親しまれた東大名誉教授の高橋延清は伯父にあたる。

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