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「玉川徹のそもそも総研 原発・電力編」玉川徹

2015/02/28公開 更新
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玉川徹のそもそも総研 原発・電力編


【私の評価】★★☆☆☆(66点)


要約と感想レビュー

 テレビ朝日の玉川徹という人は、どんな人なんだろうと手にした一冊です。一言で言えば、本質を把握していない残念な人という印象でした。


 まず、自然エネルギーについて電事連に取材したときの記載がありますが、電事連の説明も悪かったのだと思いますが、本質を理解していません。負荷が変動する太陽光・風力などの自然エネルギーが昼間だけ大量に系統に入ってくると昼間だけ、調整火力が負荷を減らし、さらにはベースロードの原子力、石炭なども負荷調整が必要となってしまう。したがって、自然エネルギーを導入するには限度があると説明したはずです。


 そうした説明を聞いて、玉川徹氏は原発と自然エネルギーを取り替え可能なことを電事連が恐れていると歪曲して受け取っているのです。ベースロードの原子力と、不安定な風力・太陽光が入れ替わるはずがないのに、このような記載があるのは何も勉強していないし、だれのチェックも受けていないということなのでしょう。


・「電事連」との忘れられないやり取り・・・自然エネルギーで電力の30%をまかなえるとなれば、現在供給の30%を担っている原発と取り替えることも可能だ。そうなると原発にアレルギーを持つ人々に、原発を止める理由を与えてしまう(p41)


 原子力を作ると資産が増えるので電気料金を総括原価で上げることができて電力会社が儲かると主張しています。何を作ろうと総括原価なのだから利益はそれほど変わらないし、利益を増やすために原子力を作ろうなどと思っている人はいないのです。総括原価が悪いという先入観から導き出された、事実誤認としか表現できない主張です。


・なぜ原発を減らしたくなかったのか。原発を減らせば利益が減ってしまう、総括原価方式が一因です(p175)


 さらには、原子力発電開発の諸悪の根源は、「地域独占」「発送電一体」「総括原価方式」であるとしています。これは事実関係を調べたり勉強しないシロウトレベルの議論だと思います。頭の中に「地域独占」「発送電一体」「総括原価方式」が「悪」という前提があって、その前提に合うように取材したデータを理解しようとしているのです。


 「地域独占」「発送電一体」「総括原価方式」は、

 「地域独占」「発送電一体」「総括原価方式」はJRでも同じように常に供給と需要をバランスさせなくてはならない「電力」という商品の特性を考えてエネルギーの安定供給のために作られた仕組みなのです。物事には一長一短であるはずなのに、一方的に角度をつけようとするこのような人がコメンテーターとしてテレビ出演しているのは、いかがなものなのでしょうか。
 

 原発のために総括原価方式にしたのではなく、総括原価のほうが歴史が古いのですから、総括原価を利用して、政府が原子力を電力に押し付けたという見方もあるのではないでしょうか。当時の電力経営者は、役人が原子力をはじめ事業をやってうまくいった試しがない。どうせ原子力を国策としてやるなら電力会社自らが責任を持ってやろうという判断をしたのではないかと私は思うのです。


・では、なぜ総括原価方式は存在したのか。それは、原発を増やしたい政府が民間企業である電力会社に動機を与えるため(p175)


 メディアで発信する立場ですから、もう少し多角的に調査し、本質をつかんで報道してもらいたいと思いました。玉川さんは今もテレビに出演しているようですから、当時よりも学習が進んでいることを期待したいと思います。玉川徹さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・政府の過少申告と小出しの対応がなければ、福島の人々は余計な被曝を避けられたはずです。なぜなら、影響の大きい内部被曝のほとんどは、3月15日の水素爆発直後だからです(p84)


・内閣府の下村健一審議官の証言です。彼によれば、5月6日金曜日に菅総理が浜岡停止を決断したのは、会見の2時間前だったそうです(p106)


・西表(いりおもて)島には地上85メートルの津波の記録がありますしね。そんな地震が来たら、太平洋側の原発はすべてアウトですよ(東海大学地震予知研究センター長尾年恭教授)(p179)


・小出助教は「浜岡原発のどこが危険かという設問はナンセンスであり、どの原発であっても機械としての事故可能性を内在している。だから、事故が起きると取り返しのつかない機械である原発は使うべきではない」という持論を語りました(p47)


・今なお原子力をやろうとする動機があるとすれば、国が『核を保有する』という技術的なポテンシャルを持ち続けたい。こういう動機以外はない、と私は思います(京都大学の小出教授)(p172)


▼引用は下記の書籍からです。
玉川徹のそもそも総研 原発・電力編
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玉川 徹
講談社
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【私の評価】★★☆☆☆(66点)


目次

第1章 電力革命の三段ロケット
第2章 「原子力は安い」の大ウソ!
第3章 被災地をエネルギー先進地に
第4章 福島原発は「メルトダウン」「メルトスルー」を超えた!?
第5章 浜岡原発は安全なのか、現地で視察!
第6章 「節電」は不要! 電気は余っている!
第7章 発送電分離、その意味とは?
第8章 総括原価方式と「原子力をやりたかった理由」


著者経歴

 玉川 徹(たまかわ とおる)・・・1963年宮城県生まれ。テレビ朝日ディレクター兼レポーター。1989年京都大学農学部修士課程修了。同年テレビ朝日入社。「内田忠男モーニングショー」「サンデープロジェクト」「ジャングル」「ザ・スクープ」「スーパーモーニング」などを経て、「モーニングバード」担当。


関連書籍

「「脱原発」を論破する―今、日本人の知性が試されている!」長浜 浩明
「電通と原発報道」本間 龍
「玉川徹のそもそも総研 原発・電力編」玉川徹
「原発のウソ」小出 裕章
「原発賠償の行方」井上 薫


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