「電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ」本間 龍
2013/03/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
巨大広告代理店といえば、電通と博報堂です。この本では、元博報堂社員が、今回の原発事故報道を切り口に広告代理店の現状を説明しくれます。だれもが感じていると思いますが、マスコミと広告代理店は、金を出す広告主に頭が上がりません。
一例として、「RCサクセション」の反原発ソング『サマータイム・ブルース』が収録されたアルバム『COVERS』が所属していた東芝EMIが発売中止にしたのは、親会社の東芝が原子炉メーカーであったからとしています。
・営業的見地からみれば、広告出稿額が自社ベストテンに入るような超大型クライアントの批判記事は、よほどの社会的な問題でない限り、絶対に触って欲しくないタブーとなっているのです(p161)
「報道の自由」「ジャーナリズム」など崇高な理念はいろいろありますが、テレビ、新聞は広告収入に依存しているのです。マスコミが、広告主の意向を無視できないのは、当然のことでしょう。
そうした構造的な課題を理解できれば、マスコミへの向き合い方も変わりますし、マスコミもよくやっているといえるのかもしれません。
・思い切って反原発に舵を切った講談社・・・原発叩きをほどほどのレベルに止めた小学館。・・・この選択、果たしてどちらに軍配があがるのでしょうか。(p65)
福島第一原発事故によって、東電や原子力業界から流れていた年間800億円以上の宣伝広告費が消滅しました。電力関係からの広告費が激減したのは、広告代理店にとって大ショックだったようです。
電力業界だけは、アベノミクスと正反対の方向に走っていくことになりそうです。本間さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・媒体費の利益率が非常に高い(おおむね単価の20~25%)・・・これに対しCM制作費や販促活動費、グッズ製作費などの利益率は多くても10%程度、下手をすればそれを下回る程度(p76)
・一業種一社制が常識の海外に比べ、日本の企業はまだまだ競合が大好きです(p116)
・ローカル(TV)局発足当時、当初困難だった経営に資金提供し、なおかつ人材まで派遣したのが電通であり・・経営が軌道に乗ると、当初経営に参画した電通人脈は、そのままローカル局と電通の独占体制を続けるための強力な後ろ盾となっていきました(p149)
▼引用は下記の書籍からです。
亜紀書房
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【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第一章 コントロールされるメディア
第二章 電通と博報堂
第三章 クライアントへの滅私奉公
第四章 経済原理と報道
第五章 崩壊する支配構造
著者経歴
本間龍(ほんま りゅう)・・・著述家。1962年、東京都に生まれる。1989年、博報堂に中途入社し、その後約18年間、一貫して営業を担当する。北陸支社勤務時代は、北陸地域トップ企業の売り上げを6倍にした実績をもつ。2006年、同社退職後に知人に対する詐欺容疑で逮捕・有罪となり、栃木県の黒羽刑務所に1年間服役。出所後、その体験をつづった『「懲役」を知っていますか?』(学習研究社)で作家デビューする。服役を通じて日本刑務所のシステムや司法行政に疑問をもち、調査・研究を始める
関連書籍
「「脱原発」を論破する―今、日本人の知性が試されている!」長浜 浩明
「電通と原発報道」本間 龍
「玉川徹のそもそも総研 原発・電力編」玉川徹
「原発のウソ」小出 裕章
「原発賠償の行方」井上 薫
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