「論文捏造はなぜ起きたのか?」杉 晴夫

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論文捏造はなぜ起きたのか? (光文社新書)

【私の評価】★★★☆☆(78点)


■STAP細胞問題を切り口に、
 現在の大学の在り方について、
 提言する一冊です。


 著者が考える
 STAP細胞問題の原因の一つは、
 権威ある学術誌への論文掲載の誘惑です。


 『ネイチャー』等の権威ある学術誌に
 論文を掲載できれば、
 引用される可能性が高くなり、
 人事評価で優位に立てるらしい。


『ネイチャー』掲載論文の共著者に名を連ねれば、
 ほんの一部の実験の手伝いをした未熟な研究者であっても、
 インパクトファクター「30」が加算され、
 昇任人事で圧倒的優位に立つのである(p37)


■そして、もう一つの原因は、
 国家予算を使う研究の非効率さです。


 6月にならないと予算が使えない。


 予算は年度内に使い切らなくてはならない


 そして、成果だけは求められる。


 そのため、ちょっと実験結果に手を加えて
 論文を書いてしまおうという
 人がいてもおかしくないということです。


・実際の研究費が大学に交付され、
 研究が可能になるのは、6月である・・・
 研究成果の報告は、筆者の経験では研究費交付年度の
 11月ごろである。・・学術誌に論文を発表し、
 研究能力の高さを示そうと思えば、
 研究機関はさらに短くなる(p79)


■大学の先生も楽ではないと思いました。


 特に真剣に研究をしたい人は、
 予算獲得に悩み、
 予算を獲得したとしても予算の消化に悩む。


 著者は、もう少し柔軟性のある
 研究予算を求めているようです。


 杉さん、
 良い本をありがとうございました。


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■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・わが国では、政府から支給された予算を、
 その年度内に過不足なく使い切らねばならない・・
 会計年度の終わりにあたる三月になると、
 あちこちで道路工事がはじまる・・(p75)


・わが国の研究費申請書の審査は、欧米諸国に
 例を見ないお粗末極まる
ものである・・
 申請件数に比べて極端に少ない申請書の審査員が、
 机上に山積みにされた申請書を片端から読み、
 採否を決定していた(p215)


・筆者のような古い研究者からみると、
 論文に共著者として名を連ねることは、
 他の共著者とともに論文のすべての問題について
 責任を負うことを意味する(p28)


・自然科学の研究は、研究者が予想したように
 進行する保証はまったくない。予想外の方向に
 展開することが多く、・・・悠々と研究している者に、
 「役立たず」の烙印を押しかねない。
 この烙印を押されれば研究費はストップ(p77)


・大型プロジェクトから巨額の研究費を得ている者は、
 一般の研究課題には応募を許されない・・・
 自分の本当にやりたい研究が不可能になることがある(p143)


・巨大プロジェクトの研究補助者に採用されても、
 従来の大学の大学院生のようなゆとりのある
 トレーニングを受けられる保証はなく、
 プロジェクトが終わればこのように使い捨てにされ、
 放り出されるのである(p143)


論文捏造はなぜ起きたのか? (光文社新書)
杉 晴夫
光文社 (2014-09-17)
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【私の評価】★★★☆☆(78点)


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■目次

第1章 理化学研究所STAP細胞事件とは
第2章 研究者はなぜ、データを捏造するのか
第3章 明治時代の生命科学の巨人たちはいかに活躍したか
第4章 近年のわが国の生命科学の沈滞
第5章 科学史上に残る論文捏造
第6章 分子遺伝学の歴史と、今後の目標
第7章 わが国の生命科学の滅亡を阻止するには


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