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「ドル漂流」榊原 英資

2011/05/22公開 更新
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ドル漂流


【私の評価】★★☆☆☆(68点)


要約と感想レビュー

 ミスター円こと財務省OBの榊原 英資さんの2年前の一冊です。リーマンショックで金融緩和を進めたドル体制は、長期的にドルの凋落傾向は、あまり変わっていません。同様にユーロ危機もあまり状況は変わりません。


・米国債の信用度はまだ今のところ崩れてはいませんが、これだけ赤字が毎年上昇し、対GDP比も上がってくると、将来、米国債の格下げが行なわれることは、ありえないことではありません(p46)


 一方、日本のデフレについては、中国で製品を作って日本で売るというビジネスモデルが原因と説明しています。最終的に中国の物価と日本の物価が合うまで、デフレが続くとしています。


・市場主導で統合が進んでいますから、両国の物価水準は収斂する方向に動きます。物価水準が高い日本がデフレに、物価水準が低い中国がインフレになるのです(p91)


 基軸通貨ドルが長期的に下落し、ユーロも危ない。その未来は榊原さんにもわからないようです。ただ、榊原さんが参考にあげているのは、第一次世界大戦から第二次世界大戦までの大恐慌などにより英国ポンドから米国ドルに基軸通貨が移っていったプロセスです。


 今後はどうなるのでしょうか。榊原さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・グローバリゼーションとIT革命・・・経済統合が世界全体で進んできているのです。つまり一国の貨幣供給と国民所得の値が物価を決定する基本要因だとする閉鎖モデルはもう現実を反映しなくなってしまったのです(p40)


・時として急激に円高に転じたことの記憶から、どうも円高を嫌う傾向が一般的ですが、緩やかな円高は決して嫌うべきものではないでしょう・・・私たちも「強い円は日本の国益」だと考えるべき時にきているのでしょう(p179)


・不安定な移行期に戦争と前後して起こるのが大不況であり、恐慌です。・・・1929年に始まった不況が長期化し深刻化したのは、主として、イギリスが国際経済システムの保証人としての役割を続行する能力を喪失したことと、経済的優位にあるアメリカがそのような役割を引き受ける意思を持たなかったため(p233)


・高福祉には高負担が伴います。フランスの国民負担率(租税プラス社会保障負担率)は61.2%(2007年)。日本の39・5%(2007年)の1.5倍です。日本の国民負担率はアメリカの34.9%(2007年)に次いで低い(p76)


ドル漂流
ドル漂流
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榊原 英資
朝日新聞出版
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)


目次

序章 崩壊するドル本位制
第1章 アメリカ金融帝国、覇権の終焉
第2章 変貌するヨーロッパ
第3章 日本は孤立する
第4章 成熟化する先進国経済
第5章 新興国の台頭
第6章 ドル・ユーロ・円・人民元はどこへ行くか
第7章 無極化する為替の世界
第8章 戦争と恐慌―移行期には何が起きるか



著者経歴

 榊原英資(さかきばら えいすけ)・・・1941年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。大蔵省入省後、米ミシガン大学で経済学博士号取得。IMFエコノミスト、ハーバード大学客員准教授、大蔵省国際金融局長、同財務官を歴任。「ミスター円」と呼ばれ為替・金融制度改革に尽力。慶應義塾大学教授、早稲田大学教授を経て、現在、青山学院大学教授。


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