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「愛と幻想のファシズム」村上 龍

2011/05/21公開 更新
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愛と幻想のファシズム 上下巻セット

【私の評価】★★☆☆☆(69点)


■この本のストーリーは、
 ドル暴落から世界恐慌が起こり、
 米国は日本のドル債権を凍結。


 その後、
 輸入規制などによりブロック経済化がおこり、
 外貨逃避により日本円が大暴落。
 日本経済は崩壊します。


 そうした中、極左と極右グループが
 日本国内で活動を活発化させるものの
 実はその裏ではアメリカCIAが動いていた・・・。


・混乱が起きればいい、それも早く、
 いろんな混乱が起きた方がいいんだ、
 ゼネストも自衛隊の治安出動も、内乱状態が生じて、
 左翼政権ができて、大失敗をして、国民が心の底から
 絶望したときに、俺が出ていく(上p152)


■この本では、
 中国はまだ近代化できず、
 ソ連も存在しています。


 恐慌におちいる日本と、
 実際に崩壊したソ連経済(ロシア連邦)を入れ替えると
 ストーリーが合っているのかもしれません。


・そう遠くない将来、我々は国際通貨に関しての
 議題を提出するつもりだ。ECU(欧州通貨ユニット)や
 SDR(特別引出権)などとも性質を異にした新しい通貨制度を
 我々は検討中であり、それは『信用』を基にしたきわめて
 安定度の高いものである(上p160)


■小説としては、
 話に引き込まれにくかったので、
 「この本はバブルのピークである
  1987年に書かれた」
 ということを味わいながら読む本だと思いました。


 村上さん、
 良い本をありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・世界経済が、つまり通貨が、一挙に崩壊してしまえば、
 支配権を握るのは、原料を含めた資源・エネルギーだ。
 農業の近代化に失敗した中国は大量の飼料をアメリカに
 頼らざるを得なくなった(下p33)


・ヒトラーは実に細かいところまで考えています・・・
 教育では当然原住民に高等教育をしない、
 学校教育は有料にして、ぜいぜい交通標識が
 わかるようになればいいなんて言っているんです。(上p139)


・アメリカは占領が下手だった、
 アメリカにも占領された経験がなかったからだ・・・
 しかしソ連はそんなことじゃすまないぞ、
 あれほど占領のうまい国はない、
 気付いた時にはもう遅いんだ(下p20)


・「我々先進諸国の人間が浪費する食糧の半分を
 分け与えれば、アフリカの飢饉が救える、・・・
 私達は常に食糧の自給率を上げよと訴えてきたのです」
 「・・・食糧自給率というのなら
 まずあなたその手に持っている
 マイクロレコーダーを捨てて
 百姓になりなさい、(上p228)


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【私の評価】★★☆☆☆(69点)



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