【書評】「 一気にわかる!空港の内幕―日本病のカルテ」猪瀬 直樹
2005/07/20公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
空港のおかしな行政
本書は猪瀬氏が道路関係四公団民営化推進委員に任命された2002年に発行されたものですが、猪瀬氏の官僚国家日本を分析する活動には頭が下がります。
本書は空港についてのおかしな行政について、データを示しながら解説していくのですが、国土交通省は国益ではなく省益を考えているように見えました。
日本には多くの空港があるのに、国際的なハブ空港にはないのです。
空整特会でお金が余っているから、伊丹空港や建設中の神戸空港があるのに、関空は関空でどんどん拡張工事を行う。静岡空港にしても、静岡県の東側の人は中部国際空港のほうが便利なのに、建設を続けている・・・どのような国家的ビジョンに基づいて空港政策を立てるかという、いちばん根幹の視点が欠けているのである。(p52)
世界の空港行政との比較
今の役所が昔の日産に見えてきました。役所にカルロス・ゴーンがやってきたらきっと面白い仕事ができるのだろうな、と考えている若い官僚もいるのではないでしょうか。
世界的な視点でどのような日本にしていくのか、やれることはたくさんあるのです。この本では航空機燃料税を説明しています。
課税前の航空機燃料の価格は、一キロリットルあたり二万七千円前後である。これに一キロリットルあたり二万六千円の航空機燃料税と消費税が課税される・・・ヨーロッパの航空機燃料税はゼロなのだ。・・・アメリカにしても、日本の十八分の一(p40)
空港の実態
空港の実態を、データと猪瀬氏の分析で理解できる良書として★4つとしました。
すでに日本にはたくさんの空港があります。これをどう考えるのか、考えてみたいと思います。
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この本で私が共感した名言
・ある国土交通省の役人がこんなホンネをもらした。「道路関係四公団民営化推進委員会に世間は注目している。猪瀬も当面はそれで手一杯。いまがチャンスだ」(p12)
・成田空港公団(新東京国際空港公団)の予算は、すべて国土交通省からの指示によって決まる。「これだけ使え」と金額を決められ、そのぶんについて事業計画を立てるのである。・・・いかに予算を消化するかという発想で事業計画が立てられる構造になっているため、コスト意識が働かないのである。(p28)
・単純な着陸料をジャンボ機で比較すると、成田95万円、香港46万円、ソウル31万円、ニューヨーク53万円、パリ30万円となっている。(p60)
・官僚の説明に僕は慣れている。外国のデータを持ち出すときはたいがい苦しいときで、前提条件を微妙にずらしているケースが少なくない。(p170)
【私の評価】★★★★☆(83点)
著者経歴
猪瀬 直樹(いのせ なおき)・・・作家。1946年生まれ。「ミカドの肖像」「日本国の研究」など、日本という国家を考える書籍を多数出版。行革断行評議会委員として特殊法人の民営化に取り組む。2012年(平成24年)東京都知事選挙で当選。
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