「説得の科学―何が人の心を動かすのか」安本 美典
2005/07/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
世の中には、「悪は栄える」「イヤなやつほど出世する」ということがよくあります。
例えば、ひどくいい加減な人間でもヒモとして女性に貢がせることがうまい人がいるかと思えば、人間的にまじめでも女性の前にくるとモジモジしてうまくいかない人もいるでしょう。
どうして、こういうことがあるのかというと、ヒモは悪意から技術を使っているのに対し、よい人は善意から技術を使おうとしていないからです。
上述の女性への対応の例でいえば、冷たく叱るような状況をわざと作っておきながら、しばらくして実は君のためを思って厳しいことを言ったのだよと優しくするのも一つの技術として知られています。
つまり、ヒモは生活がかかっていますから、必死に技術を学び、それを活用するのですが、よい人はそうした技術を使えないのです。
・マルチ商法まがいの方法による商品の販売説明会に、さそわれて出席した。つぎつぎに、人がまえに立って話をする。「十日で、百万円もうけた」・・・会場は、しだいに、もりあがっていく。・・・一種の集団催眠にかかったようなものである。(p126)
この本は、良く言えば「説得」、悪く言えば「洗脳」の技術をまとめた一冊です。
ですから、私は、ぜひ良い人に読んでいただきたい。そして、社会として良い方向に向かうように活用していただきたいのです。
・イメージを、何べんも何べんも思いうかべさせて、ある考え方、ある思想を、潜在意識にまで徹底的に植えつけることが可能である。・・・しかし、「この宗教から逃げだすと、あの世で地獄に行く」というイメージ教育になると、カルト的になる。(p45)
実際には、悪意を持った人がよく学び、活用しています。私たちは、それに負けてはいけない。そのためにもこの本を読んでいただきたい危険な一冊です。
この本で私が共感した名言
・洗脳を含めて、広い意味でのマインドコントロールは、一般的に、つぎの三つの手順をとる。
(1)外部情報を遮断する。
(2)一定情報を注入する。
(3)生理的に不安定な状況におく。(p21)
・自分自身の努力では、酒をやめられなかった人が、新しくはいった人に、「酒をやめよう。酒は害毒があるから」と説明しているうちに、本人の酒がやめられるという現象がある。(p27)
・相手を説得するとき、その恥ずかしい部分をつく。「お前は、こういう恥ずかしいことをしただろう」と、繰りかえしつつく。すると、つつかれた人は、心理的に不安定になる。罪責感をもち、暗示や説得をうけやすくなる。(p33)
・極度な難行苦行を続けていると、目のまえに、まっ白な光が見えたり、身体全体が光で包まれたような感覚を覚えたり、なんともいえない恍惚感を味わうというようなことが起きる。・・・オウム真理教のばあいは、かなり無茶な難行苦行をさせている。(p36)
・「集団的暗示」は、もともとは、ナチスが使った。たくさんの人を集めてみんなに、一定の方向、ある思想などに、「賛成だ」と、意思表明させる。すると、みんなが、そちらの方向に歩きはじめる。(p125)
・ヒットラーは、『わが闘争』の中で述べている。「宣伝は、語るべき思想を少数にとどめて、それをうまずたゆくまでくり返すことが必要である。大衆はなん百ぺんとなくくり返さないと、もともと簡単な思想でも、覚え込まないものである」(p129)
・どんな人でも・・・心の中に、必ずある種の不安定感をもっている。・・自分の存在の意味は、しばしば、自分が属する集団から与えられる。(p132)
【私の評価】★★★★★(90点)
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