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【書評】「生物から見た世界」ヤーコプ・フォン・ユクスキュル

2026/02/20公開 更新
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「生物から見た世界」ヤーコプ・フォン・ユクスキュル


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー


動物が見た世界

読書会の課題本ということで読了!著者のユクスキュルは、エストニア出身の1900年代の動物学の研究者です。


最初に著者が説明するのは、動物が知覚するのが知覚世界(Merkwelt)、動物が作用していくのが作用世界(Wirkwelt)と定義しているところです。つまり、ハエが複眼で見た周りの景色が知覚世界(Merkwelt)で、ハエが飛び回っている状況が作用世界(Wirkwelt)です。


当たり前のことのようですが、知覚世界と作用世界が合わさって環世界(Umwelt)になるとしています。環世界とは、いわゆる自然そのもののことなのでしょう。


動物は、適切な知覚道具と作業道具が選ばれてそれがある制御装置によって結び合わされ・・動物の生活機能を果たす適した一つの全体となったものだ(p6)

動物により目が違う

なぜ、ユクスキュルが知覚世界(Merkwelt)を定義したかといえば、知覚世界(Merkwelt)が動物によって異なるからでしょう。


ハエの目は複眼であり、その長い視覚エレメントは深さが異なり、表面のレンズで屈折した光が距離に応じて異なる深さに焦点が当たるようになっていると推定しています。


マダニは草の茎に登って、哺乳類が通るのを待ちます。そして、ダニが哺乳類の匂いを感じると、草から落ちて哺乳類に取りつくのです。マダニに目はありませんので、匂いがマダニの知覚世界なのです。草から落ちて、哺乳類に噛みつくのが作用世界となります。


鳥の目には、じっとしている虫は見えません。虫が跳ねて移動するときにはじめて知覚して、作用として虫に食いつくのです。


知覚時間・・・映画では・・こまは18分の1秒の速さで次つぎに送られている・・闘魚は自分の映像を1秒に18回表示されたのでは、それと見分けられない。1秒に30回以上映写しなければ見分けられないのである(p54)

魔術のような自然の不思議

自然の生物には、魔術的環世界があるとしています。


例えば、渡り鳥はどうして飛行経路を毎回間違えないのだろう。親の付き添いのない若い渡り鳥は一人で目的地に行けるのであろうか?


エンドウゾウムシは、エンドウ豆に、成虫のゾウムシに変態した後に出やすいように、表面近くまでトンネルを作ります。どうやってエンドウゾウムシは、トンネルを作ることを学んだのであろうか?


ツタノハガイという貝は、干潮時は岩肌のベッドに体を圧しつけて時を過ごし、満潮になると、周辺を歩きまわり、潮が引きはじめるとすぐにベッドに戻るのです。どうやって、元のベッドの位置を把握しているのであろうか?


オトシブミの雌はカバノキの葉の決まった位置に切り込みを入れて、その葉を袋状に巻きます。葉のどの位置を切って、袋状にするノウハウはどのように技術継承されているのだろうか?と著者は問うのです。


堅いカシワの材に、細い産卵管をまるでバターに刺すように突き刺して自分の卵を生みこむヒメバチも彼ら(カミキリムシの幼虫)を亡きものにする(p152)

生物の不思議な世界

古い著作だからなのか、専門用語だからなのか、翻訳家がいまいちなのかわかりませんが、非常に読みにくく感じました。


ただ動物やムシの世界は、不思議なことも多く、ファーブルのように観察に没頭するのもわかる気がします。生物とは本当に神が作ったのではないかと思うくらい、精工で自立した不思議なものなのです。


ユクスキュル さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・動物学研究所では、それまでもうすでに18年間絶食しているダニが生きたまま保存されていた(p23)


・家にイソギンチャクの覆いがついていない・・ヤドカリが自分の家にイソギンチャクをくっつけようとする・・・ヤドカリが飢えている・・ヤドカリがイソギンチャクを食べはじめる(p90)


・猛禽類の巣と猟場の間には中立地帯があり・・・いっさい獲物を襲わない・・・ひなは巣立ちして親の巣のそばで枝から枝へ跳んで過ごす時期に、自分の親に誤って襲われるという危険に遭いやすい。このため、ひなは保護区域である中立地帯で数日間安全に暮らすのである(p112)


▼引用は、この本からです
「生物から見た世界」ヤーコプ・フォン・ユクスキュル
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ヤーコプ・フォン・ユクスキュル (著),
ゲオルク・クリサート(絵)、岩波書店


【私の評価】★★★☆☆(73点)


目次


序章 環境と環世界
一章 環世界の諸空間
二章 最遠平面
三章 知覚時間
四章 単純な環世界
五章 知覚標識としての形と運動
六章 目的と設計(プラン)
七章 知覚像と作用像
八章 なじみの道
九章 家(ハイム)と故郷(ハイマート)
10章 仲間
11章 探索像と探索トーン
12章 魔術的環世界
13章 同じ主体が異なる環世界で客体となる場合


著者経歴


ヤーコプ・フォン・ユクスキュル( Jakob Johann von Uexkull)・・・1864年、エストニアのレヴァール市長であったアレクサンダーの三男として生まれる。地元のドルパート大学で動物学を専攻した後、生理学に転向し、1888年以降ハイデルベルク大学で研究を続ける。日露戦争でロシア国債が紙切れ同然となったため破産し、フリーで研究を続けた。1924年にようやくハンブルク大学付属の〈環境研究所〉所長に招聘され、多くの弟子を育成した。1944年イタリアのカプリ島で療養中に亡くなった。


ゲオルク・クリサート(Georg Kriszat)・・・この本の絵を受け持ったゲオルク・クリサートは、1906年、ペテルブルク生まれ。生物学、化学を学んだのち、1929年から1935年まで、ユクスキュルとともに環世界研究所で研究。ユクスキュルの死後は、スウェーデンの研究所で細胞生理学の研究にたずさわった


生物学関連書籍


「生物から見た世界」ヤーコプ・フォン・ユクスキュル
「利己的な遺伝子」リチャード・ドーキンス
「生物の中の悪魔 「情報」で生命の謎を解く」ポール・デイヴィス
「泳げないカワウソの生きるヒント~「成長」をめぐる生物学」稲垣栄洋
「働かないアリに意義がある」長谷川 英祐


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