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「利己的な遺伝子」リチャード・ドーキンス

2020/07/27公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

 私たち生物とは、何なのでしょうか。私たちは遺伝という仕組みによって子孫にその形質を伝承し、進化し、一部は自然淘汰されます。雄は雌に惹かれ、交尾し、仲間を作り、戦い、交渉し子孫を残していく。遺伝子によって何が伝えられるのか。遺伝子以外に伝達する仕組みがあるのか。生物を個別の種たらしめているのは何なのだろうか、というのがこの本の問いなのです。


 例えば、マウスは配偶者のものとは違う匂いを妊娠中の雌(メス)がかぐと、流産することがあります。ライオンも群れに新しい雄のライオンが加わると、雄ライオンはそこにいる子どもをすべて殺してしまうとがあるという。


 また、カッコウやミツオシエという鳥は、他の鳥の巣に卵を産み、生まれた子どもは元の巣の子どもを殺してしまいます。これは遺伝子に組み込まれた記憶、習慣、習性なのか。それとも、親から伝えられたノウハウなのでしょうか。


・カッコウと同じように他種の巣に卵を産むミツオシエという鳥がいる。この鳥の雛は、先端のとがった鋭利な嘴を持っており、孵化直後、まだ羽毛もなく目も見えず・・・その嘴で乳兄弟をめった切りにして殺してしまう・・・カッコウの雛は・・・卵を地面へ突き落すのだ(p236)


 この本を読んでわかるのは、遺伝子を読み解いてしまう現代でも生物の遺伝や進化の仕組みはすべてわかっているわけではない、ということです。カッコウの雛は、目も見えないのに自分以外の卵を巣から持ち上げて落として殺してしまう。カマキリの雌は雄との交尾中に雄のアタマを咬み切ってしまうことがある。こうしたことが個別の種において綿々と続いているということは、遺伝子が子孫に伝達していると考えざるをえないのです。


 例えば、ヒトの男性は、女性の肉体の写真で注意を惹きつけられ、勃起さえします。男性の神経系は、写真だけで本物の女性に反応するのと同じように反応してしまう。たとえ長期的に誰の利益にならないことと理性でわかっていても、特定の女性の魅力に抗し難いことがあるのです。経験や知恵は遺伝子で伝わらないとしていますが、本当にそうなのか、実は現代科学でもよくわかっていないのです。


・遺伝子は人体を作り上げていくのを間接的に支配しており、そしてその影響は厳密に一方通行である。すなわち獲得形質は遺伝しない。生涯にどれほど多くの知識や知恵を得ようとも、遺伝的な手立てによってはその一つたりとも子どもたちに伝わらない(p71)


 この地球上の遺伝子を持つ「生物」は、自己修復能力を持ち、複製能力もあり、社会を形作る種もあります。あまりに高度な生物というものは、神という存在を想像させるほど不可思議で興味深いものだと思いました。そしてその「生物」の仕組みを読み解く遺伝子やその他の仕組みは科学としてはどこまでも興味深い分野と言えるのでしょう。ドーキンスさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・カッコウに托卵される小鳥は、自分個人の卵の外観を覚えるのではなくて、自分の種に特有な模様のある卵を本能的に優遇することによって反撃に出た・・・ところが今度はカッコウが自分の卵の色、大きさ、模様を里親の卵にますますそっくりにすることによってこれに応えた(p187)


・ゾウアザラシに関するある研究によれば、観察されたすべての交尾例の88%は、たった4%の雄によって達成されたという(p253)


・突然変異や組み換えや移入によって生じる新しい遺伝子は、大部分が自然淘汰によって罰を受け、進化的に安定なセットが復元される。ときおり、ある新しい遺伝子がそのセットに侵入することに成功し、遺伝子プール内に広がっていくのに成功することもある。すると、不安定な過渡期を経て、やがて、新たな進化的に安定な組み合わせに落ち着く(p163)


・文化的進化と遺伝的進化の類似性はしばしば指摘される・・・現代人の芯かを理解するためには、遺伝子だけをその唯一の基礎と見なす立場を放棄しなければならない・・旋律や観念、キャッチフレーズ、衣服のファッション、壺の作りかた、あるいはアーチの建造法などはいずれもミームの例である(p330)


・ウイルスは、逃亡した「反逆」遺伝子から進化したもので、いまや、精子や卵子といった通常の担体に媒介されることなく、生物の体から体へと直接空中を旅する身の上になったわけだ。この見解が正しいなら、私たちは、私たち自身をウイルスのコロニーと見なしてよいのかもしれない(p315)


・進化的に安定な戦略・・・戦略の一例としては、「相手を攻撃しろ、彼が逃げたら追いかけろ、応酬してきたら逃げるのだ!」・・・コンピュータによるシミュレーションで・・・これまでに挙げた五つの戦略者すべてを自由に振る舞わせると、報復派だけが進化的に安定的であることがわかる。ハト派は、その個体群がタカ派とあばれん坊派の侵略を許すので安定でない。タカ派も、その個体群がハト派とあばれん坊派の侵入を許すので、安定でない(p146)


▼引用は、この本からです

リチャード・ドーキンス、紀伊國屋書店


【私の評価】★★★★☆(82点)


目次

第1章 人はなぜいるのか
第2章 自己複製子
第3章 不滅のコイル
第4章 遺伝子機械
第5章 攻撃――安定性と利己的機械
第6章 遺伝子道
第7章 家族計画
第8章 世代間の争い
第9章 雄と雌の争い
第10章 ぼくの背中を?いておくれ、お返しに背中を踏みつけてやろう
第11章 ミーム――新たな自己複製子
第12章 気のいい奴が一番になる
第13章 遺伝子の長い腕



著者経歴

リチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)・・・1941年ナイロビ生まれ。オックスフォード大学時代は、ノーベル賞を受賞した動物行動学者ニコ・ティンバーゲンに師事。その後、カリフォルニア大学バークレー校を経て、オックスフォード大学講師。


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