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「継続の天才 竹内均」竹内均

2020/07/28公開 更新
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「継続の天才 竹内均」竹内均


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

口頭筆記で原稿を書き上げる

竹内均先生の写真を見てイメージするのは、科学雑誌「ニュートン」の編集長であり、口頭筆記で原稿を書き上げる天才です。確かに「ニュートン」では図解を多用し、非常に分かりやすく最先端の科学を解説してくれるので、私も大好きです。


「ニュートン」を作ったのは、米国の『ナショナル・ジオグラフィック』のような科学雑誌を日本で作りたいと思ったからだという。。大学を辞める十年ほど前から計画し、『ナショナル・ジオグラフィック』や『リーダーズ・ダイジェスト』などが刊行された経緯を調べ、同時に編集作業や印刷工程などについても勉強していたというのです。


また、「ニュートン」を図解で分かりやすく書くのは、若き日に読んだ哲学書『善の研究』が非常に分かりにくかったから、自分が書くときに分かりやすさに配慮しているのです。


西田幾太郎は金沢出身の哲学者で『善の研究』を書いた。そのせいで、私は西田哲学にも手を出してみたが、これが難解でまるで理解できない・・・このとき、私の中に「もしも自分が本を書いたり誰かに講義などをする機会があれば、自分は難しいことをわかりやすく平易に表現しよう」という決意が芽生えてきた(p47)

科学的に正論を主張する

物事の本質をとらえようとする竹内均先生の姿勢に、ロケット開発の父である糸川 英夫のような天才の匂いを感じます。例えば地震は予知できないのだから、予知より防災に金をかけるべきだ、と本当のことを書いてしまう。


日本でも『ナショナル・ジオグラフィック』や『リーダーズ・ダイジェスト』のような雑誌を発行したいと考え、準備し、結果して「ニュートン」を発行してしまう。評論家は、もっともらしい理論を口にして世の中の人を迷わせますが、正しい科学者はあるべき未来を予見し、それに向けて行動するのです。


地震国の日本では、地震予知という政策に対して何十億円もの予算が投じられている。だが、こうした「地震予知」で本当に役立つものはない。なぜなら、地震が起きるのは、たぶんに確立統計的な現象だからだ・・・私の意見では、地震予知をするのは困難なのであるから、その技術研究に予算を使うより、むしろ地震災害の直接的な被害を少なくするための防災に国費を投じるべきだ(p77)

勤勉・正直・感謝

竹内均先生の座右の銘は、勤勉・正直・感謝だという。それは先生の母親が周囲から「仏」と言われていたことから、母親の所作を見ていて勤勉・正直・感謝という言葉が自然と出てきたのだという。まさに親子で継続の天才、正直、感謝の心を忘れない誠実な人であったようです。


そして著者のアドバイスは、自分の好きなこと、得意なことを伸ばしていき、誰にも負けない知識と能力を身につけることです。会社の自分の仕事はキチンとやりながら、自分だけの得意分野を持つのです。竹内先生、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・好奇心を旺盛にするためには、本を読むのが手っ取り早い。私の読書のスピードはかなり速く、横でそれを眺めていたら、それこそ頭に入っているか疑わしくなるそうだ・・・細かい部分にとらわれず、大づかみに内容を把握していくことが大事だ・・・自分で興味を惹かれた部分や自分の得意分野に関する部分をノートに書き写しておく(p145)


・毎日、朝の7時半に自分の研究室に入り、午後4時半になると大学を出て帰宅する・・・電車がガラ空きで空席に座ることができるのだ。こうした電車内で、私は読書をしたり原稿の校正をしたりする(p88)


・健康のためには、運動するのが一番いい。私は70になるまで一日一回約五分間、縄跳びを500回していた(p137)


・デカルト(1596~1650)から私は中庸の大切さを教えられた。古今東西の偉人たちの多くは、中庸を美徳としているが、これも私にはなかなか理解できなかったことだ。なぜなら、中庸というのは、どっちつかずで中途半端であり、重要だとは思えなかったからである(p45)


・評論家の書いた評論ほどつまらないものはない・・・ついこの間まで右翼的な主張を開陳していた者が、今度はすぐに豹変して左翼的言辞をろうする・・・評論家の予想は、ほぼ100%はずれる。この社会の動きは、評論家が考えた空虚な論理ではなく、もっと生身の人間による現実的な現象なのだ(p93)


▼引用は、この本からです
「継続の天才 竹内均」竹内均
竹内均、扶桑社


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

第一章 少年時代
第二章 学問との出会い
第三章 青年時代
第四章 充実時代
第五章 ニュートン編集長へ
第六章 竹内式知的生産の方法



著者経歴

竹内均(たけうち ひとし)・・・大正9(1920)年、福井県大野市生まれ。東京帝国大学理学部地球物理学科卒。昭和38(1963)年、東京大学理学部教授。昭和56(1981)年、東大を定年退職後、東京大学名誉教授。同年、科学雑誌『ニュートン』編集長に就任。代々木ゼミナール札幌、仙台、大阪校校長、日本テレワーク株式会社顧問などを兼任。NHK放送文化賞受賞、勲三等旭日中綬章受章。平成16(2004)年4月20日、83歳にて永眠。


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