【書評】「知能とはなにか ヒトとAIのあいだ」田口善弘
2026/01/15公開 更新
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
生成AIの時代
皆さん、チャットGPTやCopilotなどの生成AI使っていますか?現在、生成AIチャットサービスは、検索エンジンのようにも使えるし、対話もできるし、画像や動画を作ってくれる機能まであります。
AIが表舞台に出てきたのは、2022年頃からです。2022年、グーグルが開発した大規模言語モデル(LLM)「ラムダ」で人間の会話を学習させたところ、開発者が「AIが自我を獲得した」と主張し、グーグルから解雇されました。
画像生成AI「ダリ2」や「Stable Diffusion」は文字を入力しただけでプロレベルの画像を作成できたため、イラストレーターの失業が懸念視されました。2022年11月にはチャットGPTが無料公開され、2ヶ月で登録ユーザーが1億人に達しました。
2023年には、文章を入れると歌唱付きの楽曲を生成できる「sunoAI」が公開され、音楽家を失業させるのではないかと言われました。2024年はオープンAIの動画生成AI「Sora」の公開され、実写のようなリアルな動画が作成できるため、映画が作れる日も近いと言われているのです。
グーグルは人間と会話可能な生成AIを公開せず、対してオープンAIはチャットGPTを広く無料公開して時代の寵児に躍り出た(p115)
ニューラルネットワークと生成AI
これら生成AIは、深層学習によりニューラルネットワークを訓練して大規模言語モデル(LLM)を構築しています。ここでニューラルネットワークとは、人間の脳細胞ニューロンの多入力1出力の多数決システムをコンピュータの中で実現したものです。
ニューラルネットワークについては、東京大学の甘利俊一教授が人工知能の研究の中で数理モデルとして発表していました。しかし、ニューラルネットワークにはどんなに学習しても、未知のデータに対する精度が高くならない過学習という問題があり、実用化に至っていなかったのです。
ノーベル賞を受賞するヒントンとホップフィールドは、人工知能冬の時代もニューラルネットワークの研究を続け、「ドロップアウト」のような正則化を導入し、過学習しない未知のデータにも適切に対応できる深層学習に道を開いたのです。
ニューラルネットワークとアーキテクチャが大きく変わらない深層学習が、ニューラルネットワークが苦手とする汎化能力を獲得できたのはなぜか・・大規模化(中間層の数が多いので深層学習という名前がつけられたのだ)と学習データの増大である(p68)
生成AIの仕組み
生成AIの大規模言語モデル(LLM)は、学習を大量に行った基盤モデルを、個別課題に合わせて転移学習させたものです。この基盤モデルは、この単語の後にはこの単語が来る可能性が高い、という単語の相関距離を示した「地図」となっています。
具体的には、文章の一部を隠して当てさせる穴埋め問題と、二つの文章が続いているかどうかを判別する問題の二つを大量の文章で学習することで、自然な言語を生み出せるようになったのです。
つまり、人工知能を作るためには、知能をプログラムするのではなく、人間の知能というフィルターを通して言語化された情報を整理することだったのです。だから将棋では、コンピュータが過去の盤面を深層学習し、似た局面で勝者が打った手を最善手とするプログラムとしたら、コンピュータが人間に勝ってしまうのです。
画像認識も、それまでは人間が「どのような特徴を画像から抽出するか」を手動で入力していましたが、深層学習では、単に画像を入力して「ウマ」とか「イヌ」とかの判別をしろと命令するだけで、大量のデータさえあれば自ら学習して、正解にたどり着くようになったのです。
神経生理学者フェフ・ホーキンスはチャットGPTが世間を席巻するのに先んじて「1000の脳理論」を提唱し、知能とは物事の地図を脳内に作ることだと喝破していた(p136)
これからのAI
生成AIの大規模基盤モデルは、言葉だけでなく、「〇〇のプログラムを書いてください」と「言葉で」命令すると、全く同じものが存在しないにもかかわらず、そのプログラムを作成する「創造力」があるとわかっているという。
自律的なAIが自己フィードバックによる改良を繰り返すことによって、人間を上回る知能が誕生するという仮説もあります。
その一方で、人間の脳は生成AIに比べて非常にわずかなデータを見ただけで本質を理解して学習する能力を持っています。どこまで生成AIが人間に近づくのか、見守りたいものです。田口さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「こういうアニメ/ドラマを30分で作って」とお願いするとすぐに作ってくれるようになるだろう(p177)
・ノイズから脱ノイズして意味ある画像を作る、という過程でニューラルネットワークが使われている。コンピュータにノイズまみれの画像を与え、「ノイズを取り除いたらどんな画像になりますか」という当て物を学習させていると言ってもいいだろう(p121)
・一部の広告業界ではユーザーごとに個別に刺さる動画を作って見せる、という試みがすでに始まっている(p177)
▼引用は、この本からです

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田口善弘 (著)、講談社
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第0章 生成AI狂騒曲
第1章 過去の知能研究
第2章 深層学習から生成AIへ
第3章 脳の機能としての「知能」
第4章 ニューロンの集合体としての脳
第5章 世界のシミュレーターとしての生成AI
第6章 なぜ人間の脳は少ないサンプルで学習できるのか?
第7章 古典力学はまがい物?
第8章 知能研究の今後
第9章 非線形非平衡多自由度系と生成AI
第10章 余談:ロボットとAI
著者経歴
田口 善弘(たぐち よしひろ)・・・1961年、東京生まれ。中央大学理工学部教授。機械学習などを応用したバイオインフォマティクスの研究を行う。スタンフォード大学とエルゼビア社による「世界で最も影響力のある研究者トップ2%」に2021年度から2023年度まで3年連続で選ばれた(分野はバイオインフォマティクス)。最近はテンソル分解の研究に嵌まっており、その成果を2019年9月に英語の専門書(単著)として出版した。
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