「学校や塾へ行かずに、いかにして4人の子どもたちは独学力を身につけたのか?」内藤 浩哉
2023/08/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
家での独学で大学入学
タイトルどおり、学校や塾へ行かずに、4人の子どもたちを育てた記録です。子どもたちの勉強は、家で独学(ホームスクーリング)です。ホームスクーリングのきっかけは、著者たちが京都の童仙房という限界集落に住んでいたため小学校が統合され、10キロ離れた学年1クラスの小学校に通わなくてはならなくなったことがきっかけです。
小学校が遠くなったことで、著者は生涯学習のように試験なし・競争なしで、勉強を強制されず自分でじっくり学んでいくのが理想ではないかと考え始めます。最終的には、4人の子どもをホームスクーリングで育てることを選んだのです。もちろん最初からうまくいくはずがありません。小学1年になった長男は計算シートや漢字シートが嫌いでなかなかやろうとせず、強制と自由のバランスに苦労していることがわかります。
・誰からも教わらずに自分で主体的に学ぶ(p24)
読み聞かせ・読書・書き写し
下の子どもたちは、長男よりも読み聞かせを多くしていたためか勉強大好きになって、自ら勉強をはじめました。著者のすごいところは、子どもたちに赤ちゃんの頃から昔話の読み聞かせをしてきたことでしょう。読み聞かせをすることで、子どもたちは自然と本好きになって、小学校に入る頃には自分で問題を読んで、独学することができるようになっていたのです。
ただ、一番下の子どもは、読み聞かせが足りなかったため小学1年生のころ、問題がわからないと苦戦していましたが、読み聞かせを強化することで独学できるようになりました。つまり小学生で独学するためには、大量の読み聞かせ、大量の読書が必要なのです。そして小学生として勉強する中で、大量の書き写しを行っています。書き写しで文章作成能力を養うのです。
小学生時代の毎日の勉強の内容は、書き写し、漢字シート、計算シート、「自由自在」の国語・算数・理解・社会、漢字練習、進研ゼミ、高学年からは基礎英語(暗唱、書き取り)など。中学になると下の子どもがフランス語を勉強したいとか、ラテン語とタミル語を勉強したいと言い出す子どももいて、自由にやりたいことを勉強できる環境であることがわかります。
・「独学の力」は3つの実践からなりたちます。大量の読み聞かせ(昔話!)。大量の読書。大量の書き写し(p43)
書き写しが文章力を作る
ホームスクーリングは法律的には微妙なようですが、下手な先生に学ぶより自分でマイペースで勉強していくのも一つの方法だと思いました。著者は自らあえてホームスクーリングを選択していますが、不登校になって独学せざるをえない子どももいるのですから、参考にしたいものです。
私が特に印象的だったのは、読み聞かせです。私が唯一後悔しているのが、子どもに読み聞かせをしなかったことです。子どもとの時間を作るために、定時に職場から帰宅していたのに、読み聞かせだけは手を抜いていたのです。また、文章力をつけさせるためには、書き写しが効果的とのことです。数学の教科書を書き写すことまでしています。私も松尾芭蕉の「奥の細道」を書き写していたことがありましたので、再度やってみたいと思います。
ホームスクーリング(家での独学)の可能性を教えてくれる一冊でした。学校に行かないのは友人とのふれあいがないので、大丈夫かなと不安になりますが、自由に勉強できるのは魅力的だと感じました。私も教科書を勉強していて、原書を読みたいなと思っても、試験が眼の前にあると、そんな余裕はないのです。現在の学習方法への問題提起と、読み聞かせ・読書・書き写しの大切さを伝えるの一冊として星5としました。内藤さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・日本史、世界史、地理、政治経済、倫理は、現代社会を生きるうえで欠かすことのできない最低限の教養だと思います(p27)
・書き写しながら読んでいくのは面白いです・・・読む傍ら書き写していくような感覚でした(p117)
・そもそも高得点をとろうと思っていませんし・・ゲーム感覚で楽しみながら取り組んでいました(p25)
・図鑑はとても大切です・・図鑑のコンプリートセットを買いました(p130)
・「教養」とは・・「金儲けを目的としない勉強」(p219)
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
まえがき 「経済」「地域」「親の学歴」格差は乗り越えられる
第1章 どうすれば子どもが「教わらずに学べる」ようになるのか?
第2章 「昔話の読み聞かせ」が驚異的な読解力を育てる
第3章 徹底した「書き写し」で学力をみがく
第4章 田舎でスタートした4人の子のホームスクーリング
第5章 ハルとナツ、完全独学で挑む京大受験
第6章 「独学の力」とホームスクーリング
あとがき 教育格差をなくして、あたたかく支え合う世の中を
著者経歴
内藤浩哉(ないとう ひろや)・・・大阪府生まれ、京都大学卒業。1992年、新天地を求めて京都府内の唯一の「村」南山城村の童仙房(標高500メートルにある集落)に移住。結婚後、2000年に第1子が誕生。地元小学校に通わせるつもりだったが、統廃合で長距離登校が余儀なくされた状況下、子ども本人の意思もありホームスクーリングを行うことに。後に誕生した第2~4子もそれに倣い、現在まで誰一人、小中高に通うことなく16年間以上ホームスクーリングを実践している。けっして現在の義務教育や学校教育へ対する不満からではなく、子どもたちの意思と環境の変化による成り行き上の結果だった。そして思いがけず、完全ホームスクーリングでも驚異的な教養と生きるカ、自ら学ぶ姿勢を身につけられるという貴重な実例をもたらした
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