「人工知能に哲学を教えたら」岡本 裕一朗
2019/07/11公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
■仕事でAI(人工知能)を話題にする
ことが多くなってきたので
手にした一冊です。
本書は人工知能というより
哲学で考えられている思考実験を紹介し、
人工知能をプログラムすることが
難しいことを実感させるものでした。
そもそも人の知能はあいまいであり、
あいまいなままプログラムするのか、
コンピュータのように画一的にするのか
プログラム次第なのでしょう。
・「ハゲ頭のパラドクス」・・・「髪の毛が何本抜けたらハゲ頭か?」という問題です(p23)
■プログラムするのは簡単でも、
いかにプログラムするかは
難しいのです。
例えば、このまま行けば
100人の他人を殺してしまう。
しかし100人を救うためには
自分が死ななければならない
そうしたときに、
自分を殺すか、
100人の他人を殺すか
どのようにプログラムするのか。
それは自動運転や
ロボット兵器が実用化される今、
100人を殺すプログラムが
作られているのです。
・あなたは自動運転車の乗員で・・子どもが突然道路に入り、クルマの前に飛び出してきた。ブレーキをかけても、子どもへの衝突を回避する時間はなさそうだ。進路を変えると、今度はトンネルの壁に激突してしまう。子どもを轢けば子どもが死亡し、壁に激突すれば乗員のあなたが死んでしまう。このとき、自動運転車はどう判断すべきか(p35)
■しかし、哲学者というものは
こんな禅問答のようなこと
(答えのあるようなないようなこと)を
考えて仕事にしていたのか!と
びっくりしました。
理系の私から見れは
哲学とはいかに人間をプログラムするのか、
今の時代なら人工知能をいかに
プログラムすべきかという問題です。
それを哲学とするならば、
哲学なのでしょう。
岡本さん、
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・人工知能に幸福はあるのか?・・(p138)
・人工知能やロボットが人間の代わりに働き、しかも生産力が増大する・・・人間は労働という苦役から開放され、好きな活動を楽しむことができるわけです。それなのに、「人工知能・ロボット労働社会」の到来を、どうして不安の目で見てしまうのでしょうか・・その根本的な理由は、もちろん人間たちの失業にあります(p165)
・2017年に元グーグルのエンジニアであったアンソニー・レバンドウスキーが、人工知能を神として崇めて「未来への道」という宗教団体を設立(p190)
・人工知能が奴隷のように働いてくれるなら、「人工知能に仕事が奪われる」という表現は、まったくの的外れではないでしょうか(p178)
・芸術の価値は誰が決めるか?・・・現代の芸術では、言うまでもなく、実物との類似・再現といった客観的な基準はありません。では、芸術作品の価値は、どのようにして理解されるのでしょうか(p117)
・人間同士の間で、心(記憶)を入れ替えたらどうなるか、という形で問題になってきました・・17世紀のイギリスの経験論の哲学者ジョン・ロックは「王様と靴直し職人」の心を入れ替えたら、人格はどうなるか考えたのです(p143)
・クローン技術や遺伝子改変によって生まれる子どもは、「自然に生まれてきたもの」ではありませんし、「技術的に制作されたもの」とも言えません。今まで自明だった、「自然」と「人工」といったカテゴリーが不分明になる(p247)
・私は何を知りうるか?・・これを形而上学が示す
私は何をなすべきか?・・これを道徳学が示す
私は何を望んでよろしいか?・・これを宗教が教える
人間とは何か?・・これを人間学が教える(p26)
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
第1章 AI VS正義 ――人工知能に倫理を教えられるか
第2章 AI VS脳 ――人工知能にとって「認知」とは何か?
第3章 AI vs芸術家 人工知能はアートを理解できるか?
第4章 AI vs恋愛 人工知能にとって幸福とは何か?
第5章 AI vs労働者 ロボットは仕事を奪うか?
第6章 AI vs宗教 人工知能は神を信じるか?
第7章 AI vs遺伝子 人工知能は人類を滅ぼすのか?
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