人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「野心と軽蔑 電力王・福澤桃介」江上剛

2023/09/18公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「野心と軽蔑 電力王・福澤桃介」江上剛


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

桃介は福澤諭吉の婿養子

福澤桃介(ももすけ)とは福澤諭吉の婿養子で、後に「電力王」と言われた人です。諭吉の養子として箔をつけるためか、諭吉の援助で2年間アメリカに留学しています。アメリカ留学中は、語学と実用の勉強の他、ペンシルバニア鉄道の見習いとして鉄道の運営方法を学び、現地のアメリカ人、留学生とも交流を深めたという。慶應義塾の学生の身でありながら、諭吉の養子として見出されたということは、外見・性格の点で特別なところがあったのではないかと思われます。


帰国後、福澤諭吉のツテで、北海道の鉄道会社に入社しています。高い給料をもらって、残業はしないし、仕事の改善を提案する生意気なアメリカ帰り野郎と見られていたようです。桃介は鉄道会社で働きながら、普通のサラリーマンが出世するために仕事もないのに残業をしたりしている生態を観て、もし自分が社長になったときには、そうした見せかけだけの人は出世させてはいけないと、桃介は考えていたようです。


・それらしく振る舞うことが出世の道だということさ・・忙しい振りをしているんだ。全くくだらないことだけど,見せかけだけ忙しくしているんだね(p134)


結核と株式投資

26歳のときに、桃介は結核で吐血し静養生活に入ります。この退屈な静養中に、桃介は北海道の鉄道会社で貯蓄した1000円を元手に株式投資をはじめるのです。結核が寛解したので株式をすべて処分したときには、10万円もの大金が手元に残っていたという。当時は日清戦争に日本が勝ち、景気が良く、だれが株式投資しても勝てる状況であったと思われます。体調が良くなったので、すべてを思い切って処分し勝ち逃げできたので、桃介は天才相場師と呼ばれたという


興味深いのは、桃介は福澤諭吉の娘婿として諭吉の散歩に毎日つき合っていたということです。そして諭吉の散歩には、多くの塾生がぞろぞろと付いていって、社会問題などについて議論していたので、桃介が仕切り役になっていたのです。その塾生の中に、後の電気事業の鬼と言われる松永安左エ門がいました。塾長である福澤諭吉は、薩長に牛耳られている官僚の世界よりは経済界に進み,新たな事業を開拓するよう主張していたためか、桃介は松永安左エ門と貿易会社丸三商会を設立するのです。


・明治32年(1899)に丸三商会を設立した。先生に相談すると,やりなさいと諸手を挙げて賛成し,2万5千円もの大金を出資してくださった・・銀座の地価が坪300円から400円である(p179)


会社の破綻と諭吉の死

ところが三井銀行からの融資を前提とした丸三商会は、最初の取引で、信用調査会社から「信用なし」とされ、三井銀行からの融資が停止されます。融資で仕入れをしようと考えていた丸三商会は、事業ができなくなってしまったのです。桃介も体調が悪化。福澤諭吉も亡くなり、桃介は会社を畳んで、北海道の鉄道会社へ出戻りすることになります。投資では成功したものの、桃介には結核の持病があり、設立した貿易会社も破綻しました。福澤諭吉も亡くなり、桃介は自分がしっかりしないといけないと考えはじめたようです。


桃介は鉄道会社の会社員として信用を作り上げることを重要視するようになり、傲慢な態度を表に出さないようになりました。社会人として一皮むけたのです。一方の松永安左エ門は、九州で石炭事業で会社を大きくしていました。そして、桃介は事業への投資を続け、その後、肥料会社の起業、ビール会社の買収、日本紡績の設立、日本瓦斯(ガス)の発起人となっています。また、松永安左エ門を助ける形で九州での電気鉄道事業にも参入するのです。


・相場師は返上して電力にかけてみようと思う。これからの産業発展には電力が安定的に供給されねばならない・・電力は,儲けは薄くとも広く世間の役に立つ事業だ(p242)


電気事業に注力

電気事業の可能性に気づくと、桃介は電気事業に注力していきます。日本の産業発展のために豊富で安価な電力を供給することが、絶対的に必要だと悟ったのです。特に名古屋電灯の総株式の十分の一を所有する大株主となり、名古屋電灯の常務取締役に就任し、木曽川の水力開発に力を入れたのは先見の明があるといえるのでしょう。高額で不安定電源の太陽光や風力を増やしてきた現在の電気事業との差を感じます。


桃介は株式投資での成功は通帳の数字が増えていくだけですが、電気事業のなら多くの人が喜んでくれると考えていたようです。金を持って死ねるわけではない。魂を振るわせる人生を歩みたいと思っていたのでしょう。アメリカ帰りでありながら、経営者が簡単に従業員をリストラすることを批判し、名古屋電灯では人員整理なしで業績を回復させています。


もう少し桃介さんについて知りたくなりました。江上さん、良い本をありがとうございました。


無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信)
3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。

この本で私が共感した名言

・実際に金持ちになってみると,これでいいのかと思うようになった。人の一生は短く,虚しい。桃介という人間がいたことなど,すぐに忘れられてしまうだろう(p274)


・私が知っている経営者は,会社の廊下にゴミが落ちていれば,率先して拾う。また早朝に社員が出勤してくる前に会社の周辺を掃除する(p208)


・朝は,上役よりも早く出勤し,夜は,だれよりも遅く帰宅する・・熱心に仕事をしていると見せかけることが必要だ。なまじ才能があり,さっさと書類を片付けてしまい,ぼんやりしていると怠け者と思われることがある(p210)


▼引用は、この本からです
「野心と軽蔑 電力王・福澤桃介」江上剛
江上剛、PHP研究所


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1章 美少女
第2章 名門
第3章 アメリカ生活
第4章 新入社員
第5章 失意の時
第6章 裏切りは世の常
第7章 勤め人の生き方
第8章 電力は面白い
第9章 木曽川開発
第10章 桃介流に愉快に生きる



著者経歴

江上剛(えがみ ごう)・・・1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1977年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。2003年に同行を退職し、執筆生活に入る


この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


ブログランキングにほんブログ村



<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメントする


同じカテゴリーの書籍: