「我、弁明せず。」江上 剛

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我、弁明せず (PHP文芸文庫)

【私の評価】★★★☆☆(73点)


■戦前の三井銀行を率いた
 池田成彬(しげあき)の人生です。


 池田成彬は慶応義塾大学から
 ハーバード大学に留学しており、
 義理人情や曖昧な表現を嫌う
 非常に欧米的な人間だったようです。


 そのためか池田成彬は
 不良債権の多い台湾銀行・鈴木商店から
 融資した資金を引き揚げ
 鈴木商店を破綻させています。


・バランスシートは良いけれども、
 どうも不安だと思えば現場に行ってみる。
 そこで真実が分かる場合がある・・・
 いずれにしてもその二つの間で迷いつつ、
 私心を離れて判断することです(p141)


■資本主義とは好況と不況が
 交互にやってきますが、
 池田成彬は不況には役割があると
 理解していたことがわかります。


 不況になると生産性の悪い企業は
 破綻し、合理化した企業だけが
 生き残ります。


 不況とは企業や労働者にとって
 辛い時期ですが、
 不況によって企業が体質改善し
 強い企業に生まれかわるチャンスなのです。


・ここで緊縮方針を採用して、
 物の生産原価を下げて、
 全ての事業を合理化させなければ、
 我が国の前途は明るくなりません。
 二年かかるか、三年かかるかわかりません。
 その間は、確かに困ります・・・
 絶対に我が国は潰れることはありませんので、
 ぜひ泣き言を言う者たちを押さえて
 いただきたいとお願いいたします(p215)


■冷徹な経営に徹することで
 池田成彬が三井銀行を不良債権の少ない
 優良な銀行にしたのだと感じました。


 戦争中は内閣参議として
 予算を要求する軍部と
 真っ向対立しています。


 それでもアメリカとの戦争は
 防げなかったのです。


 江上さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・どんなに多くの資料があろうとも、
 投資判断の際には、その会社を
 経営する人がどういう人間であるかが
 最も重要な要素なのだ(p12)


・秘書が、朝日新聞の記事を成彬のところに
 持ってきた・・記事には
 「三井銀行はけしからん。酷いことをする。
 そのために台湾銀行が休業に追い込まれた」
 と書いてあった・・・
 「卑怯なり」成彬は怒りで顔を赤らめた・・
 コールを引き上げたのが、何が悪いのか。
 正当なる金融取引ではないか。
 だからこそコールはいつでも引き上げられるように
 無条件物にしてあるのだ(p32)


・(1929年)この株価暴落は、まるでドミノ倒しのように
 世界を恐慌に引きずり込んでいく・・・
 昭和5年(1930年)1月11日の東京朝日新聞に
 「我経済史上画期的金輸解禁きょう実施・・
 多年の暗雲ここに一掃され、国力進展の秋来る!」
 とこれ以上なというほどの見出しが躍っている・・
 金解禁は最悪のタイミングで
 実施されたといってもいいだろう(p209)


・三井合名理事長団琢磨が暗殺される・・・
 三井銀行では800万円の赤字を出す・・
 今回の金輸出再禁止で儲けたように
 言われているが、実はこの通りだ・・
 「朝日が一遍ドル買いを攻撃したら、
 いくら後から説明しても駄目です。
 ああいうことは将来注意しなければならんことですね」
 成彬は、マスコミの怖さを漏らしたが、
 最早、手遅れだった(p229)


・名経営者は、情報を自分のものとして適切に
 活用できるかに絶えず努力している・・・
 不祥事を起こして、謝罪する経営者がいる。
 彼らは他人の情報を鵜呑みにして、
 判断を誤る情報収集能力の低い
 経営者だといえるだろう(p273)


・「近衛さんは、聡明な人だが、どうも
 ふわふわと頼りない」
 成彬は艶にこぼした・・・(p353)


・大島浩ドイツ大使、白鳥敏夫イタリア大使は、
 勝手に「ドイツ、イタリア側に立って参戦する」
 という言質を相手に与えていた。
 天皇はこの事態を極めて憂慮し、
 「出先の両大使が、なんら自分と関係なく、
 参戦の意を表したことは、天皇の大権を
 犯したものではないか・・・(p371)


・成彬は、とにかく陸軍とは相容れなかった・・・
 あくまで経済原則から世の中を見ている成彬と、
 端から経済を無視して戦争を拡大している
 陸軍とは合うはずがない。
 また成彬は、腹芸や含みのある言い方などの
 曖昧な態度、あるいは顔を立てるなどの
 非合理的な判断が嫌いだった(p379)


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■目次

第一章 昭和金融恐慌 
第二章 疾風怒濤 
第三章 銀行員へ 
第四章 出世街道 
第五章 三井銀行トップへ 
第六章 ドル買い事件
第七章 血盟団事件
第八章 財閥の転向
第九章 波乱の幕開け 
第十章 蔵相兼商工相 
第十一章 戦争前夜 
第十二章 終戦



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