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「悩める売主を救う 不動産エージェントという選択」大西 倫加 , 長嶋 修

2023/04/22公開 更新
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「悩める売主を救う 不動産エージェントという選択」大西 倫加 , 長嶋 修


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

不動産会社の囲い込みとは

親戚が兄弟で共同名義の不動産を持っていて、遺産相続となる前に共同名義を解除しようとするものの、価格で折り合えないという話を聞いて、不動産について勉強するために手にした一冊です。


この本が指摘しているのは、日本の不動産会社は、売主からの手数料3%だけでなく買主からの手数料3%も稼ぎたいため、不動産を囲い込んでいるというのです。囲い込むとは、売主にとってプラスになる問い合わせや内見要請があっても、交渉中だとか、オーナーの都合が悪いなどと嘘とわからないような理由で、その話を断るというのです。


その証拠にデータベースに掲載されている9割以上の不動産は、「広告掲載区分」が「不可」となっています。他社が広告できないように設定にして、外部から問い合わせが来ないようにしているのです。実際、大手不動産会社の不動産売買の手数料実績は5%前後となっており、およそ半分の取引で売主、買主の両方から手数料を得ているのが実態であるという。


・他の不動産仲介会社から興味をもってくれそうな顧客がいるので、ぜひ内見させてほしいといった要請があっても・・本当か嘘かわからないことを言って遠回しに囲い込む(p25)


不動産エージェントとは

さらに、良い物件をおとり広告として活用している不動産業者もいます。つまり、誰が見てもオトクな物件を広告や店頭でPRして、見込み客を集めるのです。そのため、良い物件ほどなかなか売れないという事象がおきるというのです。良い不動産屋を見分けるコツとして、同じような物件が店頭に表示し続けているのは「おとり物件」の可能性があり、物件が頻繁に入れ替わっている不動産屋は良心的であるとアドバイスしている人もいるくらいなのです。


著者の理想としては、豊富な情報が登録された不動産データベースに誰もがアクセスでき、不動産エージェントが一般的なアメリカをイメージしているのでしょう。不動産エージェントは売主の代理人として不動産の価値を査定して、価格を設定し、販売するだけでなく、リフォームするのか、解体して土地として売るのか、誰に売るのかなどの販売戦略をコンサルタントのように助言するのです。


・1件の物件を使って1件だけ売るのは二流以下、1件の物件を使って5件売れたら一流(p35)


不動産エージェントの成功事例

この本で興味深かったのは、不動産会社を通さずに、不動産エージェントを代理人とした不動産取引の成功事例が5つ紹介されていることでしょう。不動産会社は物件を売って、手数料を稼ぎたいし、ハウスメーカーは建て直しばかり提案してくる傾向にあります。リフォームを提案してリフォームで儲けようと考える会社もあるのです。


不動産は金額が大きく、専門的な知識が必要だからこそ中立的な立場の不動産エージェントの活躍の可能性があるのでしょう。現在の日本では囲い込んだ不動産会社が儲かるという構造になっており、信頼できる会社を探すしかないのです。いずれ、欧米のような透明な仕組みが作られるのでしょう。大西さん, 長嶋さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本の中古不動産は、表面上のスペックでしか担保評価をしない文化が根付いてしまっています(p158)


・日本は新築が85.5%で中古が14.5%・・アメリカは取引全体の81%、イギリスは85.9%、フランスは69.8%が、中古取引となっています(p164)


▼引用は、この本からです
「悩める売主を救う 不動産エージェントという選択」大西 倫加 , 長嶋 修
大西 倫加 , 長嶋 修 、幻冬舎


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

[PART 1] 売主の幸せを追求する「不動産エージェント」とは
特別コラム 不動産市況から考えるベストな売り時とは
[PART 2] 売主が絶対に後悔しないために――。 4人のエージェントによる不動産売却の成功ストーリー
Chapter 1 情報のスペシャリスト/鈴木 成禎
Chapter 2 常識破りの知性派/山本 直彌
Chapter 3 徹底した現場主義/山本 直彌
Chapter 4 人並外れた交渉能力/小池 正也
Chapter 5 エモーショナルな理論派/村田 洋一
特別コラム ホームインスペクションが不動産取引にもたらすもの
[PART 3] 不動産エージェントがこれからの不動産仲介を変える



著者経歴

大西 倫加(おおにし のりか)・・・広告・マーケティング会社などを経て、2003年さくら事務所参画。同社で広報室を立ち上げ、マーケティングPR全般を行う。2011年取締役に就任し、経営企画を担当。2013年1月に代表取締役就任。2008年にはNPO法人 日本ホームインスペクターズ協会の設立から携わり、同協会理事に就任。10年間理事を務め、2019年に退任。2018年、らくだ不動産株式会社設立。代表取締役社長就任。2021年、だいち災害リスク研究所設立。副所長就任。不動産・建築業界を専門とするPRコンサルティングも行っており、執筆協力・出版や講演多数。


長嶋 修(ながしま おさむ)・・・1967年生まれ。不動産コンサルタント。広告代理店、不動産デベロッパーの支店長・不動産売買業務を経験後、業界初の個人向け不動産コンサルティングを行う、株式会社さくら事務所を設立。らくだ不動産株式会社の会長も務める。


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