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「気づいたら先頭に立っていた日本経済」吉崎 達彦

2023/04/21公開 更新
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「気づいたら先頭に立っていた日本経済」吉崎 達彦


【私の評価】★★★☆☆(77点)


要約と感想レビュー

「遊ぶこと」が中心となる

吉崎さんの講演会に行くことになったので、読んでみた一冊です。2016年の本ですので、2014年の8%への消費増税で景気は失速し、10%への消費増税が予定されている中で、デフレが継続している時期です。この本で吉崎さんが言っていることは、ゲーム、観光、ギャンブルといった「遊ぶこと」が経済活動の中心となるということです。


ソニーは電機メーカーというよりもゲーム、映画、音楽、ネットサービス、金融、画像センサーで稼ぐ企業になっています。鉄道運営会社であるJRも、JR東日本は「エキナカ」で稼ぐことに注力しているし、JR九州も「ゆふいんの森」「あそぼーい!」などの魅力満載の観光列車を作っています。


 自民党との勉強会では、「財政で投資すべき」ものとして、1アジアのインフラ投資、2ツーリズム(観光産業)への投資を提案したという。欧米のように、国の資金で文化財を保護することで、観光産業を支えるのです。


・最近の経済活動というものは、「他人を遊ばせること」の比重がどんどん高まっている(p15)


映画館の稼働率は20%以下

「遊び」といえばゲームでしょう。ゲーム業界で問題となっているのは、スマホです。専用ゲーム機ではなくてスマホでゲームをするようになっているのです。いずれプレステや任天堂スイッチなどが売れなくなり、オンラインでゲームを提供するようになれば、現在のビジネスモデルが崩れてくる可能性が高いのです。


また、映画産業に目を向けると、日本ではたったの2000億円産業であるという。映画館の稼働率はたったの20%以下であり、まだまだ成長の余地があるのです。国内の旅行消費額は、2006年の30兆円をピークに、2014年には22兆円まで減少していますが、外国の旅行者が増えてきているので、トータルとすれば成長の余地があるのです。


・日本のエンゲル係数が上がっている・・・貧困世帯も増えているはずである。その一方で、「日本は高所得者世帯でもエンゲル係数が高い」(p10)


吉崎さんはギャンブラー

実は吉崎さんは、競馬、麻雀好きのギャンブラーだとわかりました。秋には中山競馬場に出没するのだという。また、2011年の東日本大震災の次の年には、東北新幹線に乗って福島競馬場の七夕賞で勝負して、地元経済に貢献したという。ギャンブルは負けているうちが地獄なのではない。負けを取り戻そうと思い始めてからが本当の地獄なのである、という言葉を紹介しているように、遊び人だからこそ、遊びたい人の気持ちがわかるのだと思いました。


今の日本はエネルギー価格の高騰によるインフレに悩んでいますが、いずれ「遊び」が日本経済の中心になっていくのでしょうか。吉崎さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・伊能忠敬・・隠居後の50歳から暦学と天文の勉強を始めて、好きが高じて全国測量の旅に出て、最後は幕命により「大日本沿海輿地全図」・・を作ってしまった(p231)


・北海道の歴史は他所者が作った歴史である。土方歳蔵も石川啄木も、津軽海峡を越えた時点でいわばギャンブラーであった(p105)


・講演終了後に、「為替はどんなふうに見ていますか?」なんて質問が出るのも大阪以西であることが多い・・日本は東日本が輸入をして、西日本が輸出をしている(p100)


・高利回りの株というのは意外と多いものである・・4%以上の銘柄が200社近くもあって・・堅い銘柄を仕込んで、後は買値を忘れて放置しておくという資産運用もアリではないか(p221)


▼引用は、この本からです
「気づいたら先頭に立っていた日本経済」吉崎 達彦
吉崎 達彦、新潮社


【私の評価】★★★☆☆(77点)


目次

第1章 いつの間にか先頭を走っていた日本
第2章 ツーリズムを「大産業」に育てよ
第3章 地方には無限の可能性が眠っている
第4章 おもちゃとゲームとお葬式
第5章 ギャンブラーは経済の救世主
第6章 それでも私は「二郎」に通う
第7章 第2の人生こそ本物の人生だ



著者経歴

吉崎達彦(よしざき たつひこ)・・・双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年富山県生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、日商岩井(現双日)に入社。同社調査・環境部、ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役、日商岩井総合研究所主任エコノミストなどを経て現職。「かんべえ」のハンドルネームで、ホームページ「溜池通信」にて情報の発信を続けている。


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