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「栗山ノート」栗山 英樹

2023/04/20公開 更新
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「栗山ノート」栗山 英樹


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

読書は頭の食事

NHKの番組で、WBCで日本を優勝に導いた栗山英樹監督が、魔術師とも呼ばれた元巨人軍監督の三原脩(おさむ)の秘伝ノートを読み、監督としての哲学を学んだということを知り、そのノートのことだろうと思って読んでみました。残念ながら三原ノートについては、一つも書いてありませんでした。ただ、栗山英樹監督は中国の古典や、松田幸之助、稲森和夫などの名経営者に学んでいることがわかります。読書は頭の食事と自ら言うくらい、監督としてどのように振る舞えばいいのか、どう判断すればよいのか、日々、書籍に学んできたのです。


2012年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任してからは、夜にノートに日記をつけるように書いていたという。その一日でうまくいったこともある、うまくいかなくなったこともある。そうしたことをノートに書き込んでいったのです。仕事をしていれば、人間関係で「信じていた人に裏切られる」ということもある。悲しいことですが、相手にも裏切ることになった理由はある。それに気づかなかった自分を反省し、次からはこうしよう、と考えるというのです。


・自分の能力と、情熱と、時間のすべてを、チームに捧げる。そこに私心はありません(p94)


WBC優勝の要因

興味深かったのは、「この選手は3年後にどうなっているだろう、あの選手は5年後にどこまで成長しているだろう」といった視点が必要であると栗山さんが主張していることです。この教訓が生きたのが、WBCメキシコとの準決勝で、1点差9回裏の無死1,2塁でそれまでヒットの出ていない村上選手に代打を出さず、村上選手に打たせた判断でしょう。栗山監督の中に、村上選手が3年後、5年後に日本プロ野球を背負っていく人間になっているという確信があったと思うのです。だから、ここで村上に打たせないで、どうするのかということです。


また、日本ハムファイターズの監督時代から、先発投手を2,3回で切り替えていくオープナー戦術をテストしています。この経験がWBC決勝での投手を2,3回で切り替えていく戦術とつながって見えました。WBCでは選手も頑張りましたが、栗山監督の采配も、これまでの経験に基づく戦術と選手への配慮という形で結晶化し、WBC優勝という形に昇華されたように感じました。

 
・オープナー戦術は先発投手の層の薄さを補うもの(p112)


自分のすべてを野球に捧げる

野村ノート」のような凄さは感じないのですが、自分の情熱と時間のすべてを、野球に捧げるんだ、という栗山監督の姿勢が伝わってきました。栗山英樹監督はドラフト外でヤクルトに入団し、1年目の最後で1軍に昇格するものの、2年目からは原因不明でめまいがおきるメニエール病を発症して苦しみます。野球人生としては、圧倒的な才能があるわけでもなく、野球をやりたいという情熱だけでここまできたのだと思います。


「成功は常に苦心の日に在り」という言葉が、栗山監督にぴったり合うのだと思いました。栗山さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・一燈照隅・・一人ひとりがそれぞれの役割を果たすということが、生きざまとして素敵なのだ(p84)


・「こうすればうまくいったのに」とため息をこぼすのではなく、「次はこうしよう」という思考になれば、エネルギーが漲ってくるものです(p135)


・夢を見ることは重荷を背負うこと(松下幸之助)(p191)


▼引用は、この本からです
「栗山ノート」栗山 英樹
栗山 英樹、光文社


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

序章 ノートの言葉たちが勇気と希望をくれる
第1章 泰然と
第2章 逆境に
第3章 ためらわず
第4章 信じ抜く
第5章 ともに



著者経歴

栗山英樹(くりやま ひでき)・・・1961年生まれ。東京都出身。創価高校、東京学芸大学を経て、1984年にドラフト外で内野手としてヤクルト・スワローズに入団。1年目で1軍デビューを果たす。俊足巧打の外野手で、89年にはゴールデングラブ賞を獲得。1990年のシーズン終了後、怪我や病気が重なり引退。引退後は解説者、スポーツジャーナリスト。2011年11月、北海道日本ハムファイターズの監督に就任。監督1年目でパ・リーグ制覇。2016年には2度目のリーグ制覇、そして日本一に輝き、正力松太郎賞を受賞。


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