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「家系図でわかる 日本の上流階級 この国を動かす「名家」「名門」のすべて」八幡和郎

2023/03/02公開 更新
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「家系図でわかる 日本の上流階級 この国を動かす「名家」「名門」のすべて」八幡和郎


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

世襲していけるのが日本

家系図を見て何がおもしろいの?と思いながら読んだ一冊です。政治家の家系図を見てわかるのは、一度議員になれば、世襲していけるのが日本の特徴ということでしょう。


皇室や茶道や歌舞伎のように子弟に伝統を継承するのも一つの文化だと思いますが、政治が世襲に限定されてしまうと、才能のある人が活躍できる可能性を減らしているのではないかと思うのです。


そういえば、田中角栄は官僚、政治家の名前、経歴、出身地、家系などを徹底的に調べ、暗記していたといわれています。この本のような内容を、現実として頭に叩き込んでいたのでしょう。


・総理になる最良の条件は国会議員の息子に生まれ、父親が早く死ぬことである(p14)


財産が政治力の源泉

面白いのは、家系図やそれ以外のところで、なんでこの人が偉くなっているんだろう?という疑問への仮説が浮かび上がってくることです。鳩山由紀夫、邦夫という政治家がいますが、その母親の実家はブリジストンの創業家であり、兄弟2人ともブリジストンの大株主だという。政治的な才能ではなく、個人的な財産が政治力の源泉となっているのです。


文部事務次官を務めた前川喜平の妹は、中曽根弘文の夫人となっています。中曽根内閣が「ゆとり教育路線」を採用したのは、この婚姻関係で政治力を持った前川喜平の活動の成果だったと著者は推測しています。


また、河野洋平が会長、弟の二郎が社長で、河野太郎自身も勤務していた親族企業が、中国共産党と密接な関係がある優良企業から出資を受けて中国で合弁会社を設立していることも注目されるべきでしょう。


・中曽根弘文の夫人・・・は文部事務次官を務めた前川喜平の妹である・・・中曽根内閣が評判が悪い「ゆとり教育路線」を採用したこととこの婚姻関係は無縁ではなく「面従腹背」を座右の銘とする前川の深慮遠謀の「成果」と見られる(p51)


天皇の皇位継承問題

海外では出身階級によって不公平が極端にならないように、分析、対策が講じられているらしいのですが、日本ではそうした議論はありません。日本でも実力が求められる職種では、才能と関係なく、家系や婚姻関係で政治力や権力を持てるような状況は是正していかなくてはならないのでしょう。


逆に天皇の皇位継承問題では、旧宮家の全員を継承権者として十分な人数ではないとしています。したがって、過去に遡れる範囲で男系男子子孫と、明治天皇の女系も含めた子孫くらいは公式化、明確化すべきとしています。八幡さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・ヨーロッパの王室は原則として万世一系である・・フランスなど多くの国で、男系男子、しかも嫡出(ちゃくしゅつ)限定なのである(p151)


・吉田茂から自由党を引き継いだ朝日新聞出身の緒方竹虎・・緒方こそA級戦犯容疑者として収監状が出ていながら健康を理由に免れたり、公然とCIAの資金提供を受けていたりした(p31)


・安田善次郎は富山藩の下級武士の子だが、江戸に出て商人となり・・安田商店を設立。第三国立銀行を設立したが、これが富士銀行となる・・ジョン・レノン夫人のオノ・ヨーコは善次郎の曽孫(p277)


▼引用は、この本からです
「家系図でわかる 日本の上流階級 この国を動かす「名家」「名門」のすべて」八幡和郎
八幡和郎、清談社Publico


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

はじめに なぜ、日本では「世襲」が重視されるのか
第1章 政界の名門1―この国を動かす「家系」の正体
第2章 政界の名門2―総理の座を争った人々のバックグラウンド
第3章 47都道府県の世襲政治家―なぜ、彼らは「王国」を築き上げたのか
第4章 皇族の系譜―令和皇室を読み解く「教養」としてのご一家の素顔
第5章 旧宮家の系譜―皇位継承問題のキーマンたちの実像
第6章 旧華族の系譜―把握しづらいその全貌を総覧する
第7章 経済界、文化界の名門―「日本一の老舗」はどこか
おわりに 家系図を学べば見えてくる「皇位継承問題」の行方



著者経歴

八幡和郎(やわた かずお)・・・1951年、滋賀県大津市に生まれる。東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。北西アジア課長、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。在職中にフランスの国立行政学院(ENA)に留学。現在は徳島文理大学大学院教授を務める


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