「ブランディング22の法則」アル・ライズ

【私の評価】★★★★☆（81点）

要約と感想レビュー

　著者はこの本を書く前に「フォーカス」という本を書いています。実はこの本も、ブランドを強くしたければ焦点を絞りなさい、という内容となっています。企業は商品ラインアップを絞るほうが、ブランドを顧客に認知させることができ、商品も売れるということです。この本で面白いのは、実例をいくつか示してくれていることでしょう。

　スターバックスは、コーヒーだけを売るコーヒーショップとしてヒットしました。そして、一時期、朝食を出すようになったら業績が下がったのです。
　ドミノ・ピザが商売を始めた時、ピザとサブマリン・サンドウィッチを売っていました。ピザに焦点を当ててグローバルブランドになったのです。
　このように焦点を絞ることで、顧客にブランドを知ってもらえて売上も上がるということです。

・もしあなたが消費者の頭の中に強力なブランドを築くことを望むなら、ご自身のブランドを拡張するのではなく収縮させる必要がある（ｐ29）

　また、興味深い点は、ブランドとは良い商品のことではなく、顧客の頭の中にある言葉やイメージであるという点でしょう。

　エビアンはただの水ですが、フランスの泉から湧きだすミネラル分豊かな水というイメージがあります。コカ・コーラはただの砂糖水ですが、イメージは「アイフィールコーク」。ドミノピザなら「持ち帰り半額」でお得で美味しいというイメージがあります。スターバックス・コーヒーは、オシャレな喫茶店というイメージでしょうか。

　注目すべきなのは、エビアン、ドミノ・ピザ、コカ・コーラ、スターバックスの商品は絞られていますが、めちゃくちゃ美味しいわけではないということです。

・見込み客の頭の中に一つの言葉を所有することに努力を集中すべきである（ｐ67）

　ランチェスター戦略でも弱者は一点集中、差別化、接近戦と言われており、焦点を絞るという当たり前のことのように思えます。ところが仕事が大きくなってくると、なぜか企業は商品ラインナップを広げようとしてしまうのです。

　なぜそうなってしまうのか不思議ですが、マーケッティングの担当者は何かしないと不安になってしまうのではないでしょうか。著者の推奨は、ブランドを棄損するような新しい商品を作り出していくことではなく、そのブランドを維持したうえで、世界で商品を売るというグローバルブランド化戦略です。

　アルさん、良い本をありがとうございました。

この本で私が共感した名言

・あなたが焦点を絞る時、何が起こるだろうか。あなたはゼネラリストではなくスペシャリストになる（ｐ98）

・エビアンはリットル当たりバドワイザーより20％、ボーデンの牛乳より40％、コカコーラより80％高い値段で販売されている（ｐ15）

・なぜコカコーラを飲み、ハーツで車をレンタルし、ハーバード大学で学ぶのだろうか。「なぜならそれがベターだからである」（ｐ62）

・ブランドの数、フレーバーの数、アイテムの数等々が、多ければ多いほど、カテゴリーは混乱する。この結果、一人当たりの消費量は減少する（ｐ146）

・グローバルブランド・・・自国においてはあくまでブランド固有のアイデンティティ（個性）を守り続ける。そしてグローバル化を図る（ｐ224）

▼引用は、この本からです

アル・ライズ,
ローラ・ライズ 、東急エージェンシー出版部

【私の評価】★★★★☆（81点）

目次

第１章　拡張の法則
第２章　収縮の法則
第３章　パブリシティの法則
第４章　広告の法則
第５章　言葉の法則
第６章　信用力の法則
第７章　品質の法則
第８章　カテゴリーの法則
第９章　名前の法則
第10章　ライン延長の法則
第11章　協調の法則
第12章　ジェネリックの法則
第13章　企業の法則
第14章　サブブランドの法則
第15章　兄弟の法則
第16章　形状の法則
第17章　色調の法則
第18章　国境の法則
第19章　一貫性の法則
第20章　変更の法則
第21章　寿命の法則
第22章　特異性の法則

著者経歴

　アル・ライズ（Al Ries）・・・「ポジショニング」という新しい概念を提唱し、マーケティング界に一大旋風を巻き起こして以来、世界屈指のマーケティング戦略家として活躍。アル・ライズは現在、ライズ&ライズ社を経営。

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