「成功するチームの作り方 オーケストラに学ぶプロジェクトマネジメント」増田 智明
2022/04/07公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
「チームの作り方」と思って読み始めたら、主にソフトウェア開発を中心としたプロジェクトマネジメントのお話でした。つまり、ソフトウェア開発プロジェクトをどうやって管理するのかは、オーケストラの指揮者と似ているということです。
プロジェクトの最終形イメージをメンバーと共有すること。全体のバッファーを確保して、クリティカル工程を中心に見ていくこと。定期的に進捗を確認すること。場合によっては、プロトタイプで顧客の意見を取り入れることなど、プロジェクトマネジメントの手法は網羅しています。
また、最新技術を採用することは予想外のトラブルによる失敗リスクが高いので、予想しやすい枯れた技術と使うのが望ましいとしています。さらに、プロジェクトの途中で離職する人や病気で出社できなくなる人もでてくるでしょう。そうしたリスクもある程度織り込んで悲観的に計画するべきなのです。
・プロジェクトの成功率を下げてしまうことを防ぐため、安易な最新技術の導入を避けます(p112)
印象的だったのは、プロジェクトに損害を与える人は排除しましょうと、二箇所で書いていることです。そうした人はいなすだけの対処では不十分と断言しているのです。例えば、自分のプラスだけ考える人。やる気のないフリーライダー。悪意はないが能力が低すぎて全体の足を引っ張る人などです。
その一方で、専門的な高い技術を持った人だけを集めればよいわけではないとも主張しています。トラブルが起きた時、乗り越える力はメンバーの多様性、幅広い知識が助けてくれるからです。組織に害を与える人は冷徹に排除したうえで、多様性をもったチームを目指しているようです。よほど多くの失敗を経験されているんだろうな、と感心しました。
・悪意のある何も進捗のないメンバーやマイナス生産を行うメンバーに対しては叱責よりも、プロフェショナルとしてプロジェクトのメンバーから外れて貰うという方法が有効です(p68)
言い訳のためだけの徹夜作業などはムダと言い切るように、プロとして顧客に認めてもらえる成果を出していくことに注力していることがわかります。そのために週単位、月単位でのチェック、それぞれでどういう根拠で、どう判断したのか記録しておくなど、基本的なことをたんたんとこなしていくという印象でした。
どの程度の人材を集め、どの程度の余裕を確保し、どのように管理していくのか。トラブルがあったらどう対応するのかなどのプロジェクトマネジメントは経験によって、見えてくるところもあるのだろうなと感じました。ソフトウェア開発はイメージが浮かばないところですが、プロジェクトマネジメントとして参考にしたいと思います。
増田さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・形作る作品をイメージで共有する・・・要件定義をクリアすればプロジェクトの完了です(p38)
・楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する(p153)
・大きく失敗しないように回避する、あるいは補修する技術は・・・専門的な技術よりも多様性や変化に強い対応にあります(p99)
・離職や病気・・・属人性を減らすことと同時に、離職リスクが発生した場合にプロジェクトをどうするかとのシミュレーションをあらかじめ行っておきます(p181)
・週単位や月単位でチェックすることによって、いきなり落とし穴にはまってしまうことを避けるようにします(p137)
・航海日誌のように記録を付けておくことは、過去に何が起こったのかを思い出せるのと同時に、自らの判断の拠り所を残しておけます(p140)
・火事場の馬鹿力、監禁状態によるコーディングの効率化、徹夜による前倒し作業の強制などは、すべて焦りから出てくるものです(p52)
・アジャイル開発・・・プロトタイプ的な中間製品を作りながら、顧客の要望を取り入れる方法(p166)
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第1章 コンダクターとプロジェクトマネジメント
第2章 プロジェクト計画、プランニングの伝達
第3章 プロジェクトの構成員
第4章 メンバーの技量
第5章 継続的な努力
第6章 先人の知恵を活用する
第7章 現実を計測する
第8章 変化は好きですか?
第9章 仕事とバランス
第10章 ドロップアウトの条件
第11章 インセンティブと報酬
第12章 差異と反復
著者経歴
増田 智明(ますだ ともあき)・・・大阪大学工学部を卒業後、株式会社セックに入社。10年勤務した後に退職。諸々の会社を経て、フリーランスのプログラマに至る。現在は、株式会社h2ワークス、株式会社システムガーディアンの技術顧問、執筆、フリーランスとして活動中。アジャイル開発、TOC/CCPM、計画駆動などの開発プロセスを眺めつつ、プロジェクトに応じて良いところをピックアップ。最近、大学の頃に挫折したギターをエチュードから再開中。
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