「中小企業の「事業承継」 はじめに読む本」藤間 秋男
2021/12/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(91点)
要約と感想レビュー
日本の産業を支える中小企業の経営者の最頻年齢が69歳!?という高齢化の事実にショックを受けながら読み進めた一冊です。多くの経営者は15年もすれば、平均寿命に達してしまうのです。大企業であれば、代表取締役でもある程度の年齢で会長職になるなど制度化されているし、後継者も役員の中から選べばよいのであまり悩む必要はありません。
ところが、オーナー企業の場合には、自分の会社という意識が強いために意図的に後継者を育成し、経営を継承していこうと思わないと、気づいたときには後継者がいないということになりかねません。著者のお勧めは、大企業と同じように役員会のような経営チームを作って、その中で事業継承ることです。後継者はこの経営チームの中から選ぶのです。
・経営チーム・・・資質としては、「自分のことより組織のことを第一に考えられ、人間性が良く模範となれて、自分の子供をその人の下で働かせたいと思える」ような人物(p26)
本書でも触れているように、親族内で事業継承しようとするときは特に注意深く考える必要があります。そもそも子どもが自分の会社を継承しようと思ってくれているのか。古参の社員が、子どもへの事業継承に賛同してくれるのか。子どもに経営者としての資質、能力があるのか。
親族への事業継承はこうした課題が多くハードルが高いだけでなく、仮に能力的に優れていたとしても、他流試合で育てたり、自社の各部門を経験させるなど、若いうちに計画的に育成する配慮が必要となります。また、能力的に適切な人がいない場合、能力のある人を婿養子にする選択肢もあります。いずれにしろ、会社の未来を託せる能力を持った人を選ぶことが肝要なのでしょう。
・新卒で修行先に入ったとして、27歳になったら自社に入社してもらいます・・・あらゆる部門に入れて、ひととおりの経験を積ませます・・朝は誰よりも早く来て、夜は最後に帰る(p32)
それ以外にも、外部から後継者を選ぶなら部門を任せて様子を見るとか、株式は後継者に集中させるとか、経営理念がなければ作るなど、事業継承のコツが充実しています。大塚家具では子どもに株式を均等に配分してしまったため、経営方針が右往左往してしまうことがありましたが、そのような過去の企業の失敗事例に基づく助言なのでしょう。
後継者がいないために廃業となる中小企業も増えています。自分の育てた事業を継承し、将来にわたって発展する会社に作り変えるのは自分のためだけでなく、社会、日本国のためにもなるという著者の志を感じました。非常に重要な課題へ挑戦する一冊としてお勧めします。★5としました。藤間さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・67%以上の株式を後継者に集中させる。兄弟経営では特に注意が必要です(p69)
・社長には管理部門を、専務には営業部門を任せたほうが、うまくいくことが多いです(p48)
・事業継承によってトップが代わると・・・幹部の退社は変革のチャンス(p107)
・新社長は、そうしても就任直後は社員に軽く見られがちです・・・「怒らせると怖いな・・・」と思わせるくらいがちょうどよい(p76)
・「0を1にするタイプ」は独裁に注意・・「1を10にするタイプ」は・・新規事業を立ち上げたりするのは不得手です(p38)
・家訓はいわば「NG ルール」で、経営理念は「目標地点」(p87)
【私の評価】★★★★★(91点)
目次
1 まずは事業承継の意義を知る
2 事業を引き継ぐ準備に入る
3 後継者はどう選ぶか
4 バトンタッチにあたり注意すること
5 最重要課題は経営理念の承継
6 承継後のアフターフォロー
7 事業承継成功の秘訣を老舗に学ぶ
8 100年企業を創る10個のヒント
著者経歴
藤間 秋男(とうま あきお)・・・TOMAコンサルタンツグループ(株)代表取締役会長、TOMA100年企業創りコンサルタンツ(株)代表取締役社長。1952年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手監査法人勤務を経て、1982年藤間公認会計士税理士事務所を開設。2012年より分社化して、TOMA税理士法人、TOMA社会保険労務士法人、TOMA公認会計士共同事務所、TOMA行政書士法人などを母体とする200名のコンサルティングファームを構築。100年企業創りコンサルタントとして100年企業創りと事業承継をライフワークとし、関連セミナーを1500回以上開催。老舗企業を集めたイベント「100年企業サミット」を主催。
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