「日本国の正体」長谷川 幸洋
2021/06/25公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
日本は官僚の官僚による官僚のための国家であると、現役新聞記者が教えてくれる一冊です。
官僚は審議会で自分の政策を議論させ、マスコミを通じて世論を誘導し、政治家を振り付けして国会を通し、自分でその政策を実行します。そして、税金として集めた資金を配分する権力を活用して、日本のあらゆる分野を支配しているのです。一度法律さえ通ってしまえば、細かい運用は通達や行政指導でどうにでもなるのです。そうした官僚による日本支配に、著者が気づいたときのエピソードが面白い。
著者が財務相の主計官と飲んでいるとき、一人の主査と著者は、政策について議論をはじめたのです。議論する二人を見ながら、主計官の一人が、著者と議論する主査を次のように叱ったのです。
・この人は論説委員だろう。おまえの味方になってもらわなければならない人だ。言い負かそうとして、どうする。そんなことも分からないようじゃ、とても主計官にはできないぞ(p156)
つまり、マスコミは議論する相手ではなく自分の考え、財務相の方針を広報してもらう手段、道具なのだ、ということなのです。国家がどうあるべきか、道具と議論するようなレベルでどうするのか、というのが主計官の言いたいことなのでしょう。
こうして日本を支配する官僚の最大の敵は、郵政民営化や天下り禁止を主導した高橋洋一氏であり、内閣人事局を作り官僚人事に口を挟む安倍元首相なのです。
それ以外の普通の官僚の敵は、簡単に排除されてきました。増税に反対だった中川財務相は朦朧会見。減税を目指した本間会長はスキャンダルで退任。官邸主導を目指した小沢は秘書逮捕。高橋洋一氏も窃盗容疑で書類送検されています。
・郵政民営化や政策金融改革、公務員制度改革などのグランドデザインを描いた高橋(洋一)は、財務省から「三度殺しても足りない男」と言われていた(p20)
こうした構造を見てくると、なぜ安倍元首相を極右、強権政治等と批判するマスコミが存在するのか、なぜ高橋洋一氏が新型コロナの感染者が外国に比べて少ない事実をSNSに投稿すると「屁みたいなもの」 「さざ波」といった表現だけを切り取って批判されるのか、はっきり見えてきました。
安倍元首相も高橋氏も、日本を支配する官僚と官僚のポチであるマスコミの最大の敵だったのです。こうした構造の中で長期政権を実現した安倍首相の偉大さを再確認することができました。
長谷川さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・自分が昇進しなければ、良い天下りポストにはつけないとわかる。ところが、昇進するには、先輩の天下りポスト開拓にどれだけ功績を挙げたかが有力な判断基準になっている(p176)
・会計検査院に無駄遣いの実態をつかまれた省庁は「そちらにこういう天下りを世話するから、今回の件はお手柔らかにお願いしたい」ともちかける。実際に会計検査院OBの天下りを調べると、他省庁が管轄する独立行政法人や外郭団体への天下りが目立っている(p82)
・政策や議論の方向性はあらかじめ決まっている。だから審議会委員の一人や二人が異論を唱えても無駄だ。そんな意見で政策が変わることはありえない(p37)
・財務相の記者クラブに所属している記者が「減税すべきだ」などと書けば、財務官僚を取材しにくくなるのは目に見えている(p103)
・本間会長は税調発足早々から、安倍の期待に応えて成長重視を掲げて法人税減税を射程に入れる。ところが・・・親しい女性と公務員宿舎に同郷していた事実が週刊誌に報じられ・・・退任を余儀なくされてしまったのである・・・財務相しか知らないような情報が外に漏れていた(p64)
・小沢秘書逮捕はもちろん、霞が関にとってグッドニュースだった・・・小沢民主党は局長級以上の国家公務員をいったん退任させて、その後、民主党政権に忠誠を誓う人間を政治任用する計画を明らかにしていた。天下り全廃の方針も掲げていた(p23)
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
第1章 官僚とメディアの本当の関係
第2章 権力の実体
第3章 政策の裏に企みあり
第4章 記者の構造問題
第5章 メディア操作を打破するために
著者経歴
長谷川 幸洋(はせがわ ゆきひろ)・・・1953年生まれ。慶応大学経済学部卒。中日新聞社入社。ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)で国際公共政策修士。東京本社(東京新聞) 経済部、外報部、ブリュッセル支局長などを経て、1999年から東京本社論説委員。2005年~2008年まで財政制度等審議会臨時委員(財務相の諮問機関)、2006年から政府税制調査会委員、2007年から道州制ビジョン懇談会委員を務める
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