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「「自分」の壁」養老 孟司

2021/06/24公開 更新
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「「自分」の壁」養老 孟司


【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

 400万部売ったという「バカの壁」では人は基本的に理解し合うのは難しい。考え方が違えば、お互いバカだと思っている、と喝破した養老先生が、今度は「自分の壁」を考えます。


 「自分」を切り口にして自分を切り、世の中を切り取ります。例えば、自分らしさとは何なのか。


 戦後は西欧的な考え方が入ってきて自分らしさを尊重するようになったが、元々日本人はみんなに合わせて、世の中の流れに合わせていたのではないか。そうした世の中と折り合うことの大切さを教えたほうが、はるかにましではないか、と養老先生は考えるのです。


 日本人は自分を表に出さず、その分だけ自由にやってきたのであって、思想は自由なのです。


・日本人の思考の特徴は、「実害ないだろう」ということを平気で言えるろころです。「キリストの絵なんか踏んでも別に困らないんだから、とっとと踏んでしまえ」(p42)


 面白いところは、養老先生の考え方は奇をてらうことなく常識人であることです。


 原子力は短所もあるけど長所もあるよな。いじめ対策は逃げ場を作ってあげよう。日本人は正直。国際人はウソが常識。


 投票率が低いというけど、だいたい満たされているからではないのか。一部の人がデモをして「社会を変えよう!」と言っているが、本当に変わるのか。


 そうした考えを強制するわけでもなく、自分は山にムシを採取に行きながら、そう考えてるよ、という感じなのです。


・政治的無関心というものが広がっているとすれば、それは単に切羽詰まっていないと感じている人が多い、ということに過ぎません(p145)


 エネルギー問題のところで養老先生が「原子力は防水にすべし」とか「ダムには土砂が貯まる」と主張されるところは、なるほど普通の人はこうした思考をするのだな、と勉強になりました。


 私にとっては当たり前のことでも、実はそれを知らない人は多い。これこそ「バカの壁」なのでしょう。


 気軽に読めるエッセーでした。養老さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・若い頃、何をすればいいのかまったく見えていませんでした。・・・医学部に入ったのも、そこを出れば仕事があると思ったからです(p14)


・世界のインターネットの書き込みのうち70%ほどが日本語だといいます。日本語を使っているのはせいぜい全世界の人口の2%ですから、いかにそれが多いか(p40)


・どうやったらいじめをなくせるか・・・あんなものなくなるわけがない・・・むしろ考えておくべきなのは、いじめられたときの対処法です・・・いじめられた子が自分の逃げ場をつくれるようにしたほうがいい(p104)


・日本が国際化することは、日本人がもっとウソつきになるということです。日本人の中で国際化が進んでいる人種はオレオレ詐欺の連中かもしれません(p121)


・生きづらい、と言うけれども、戦時中よりも今のほうが生きづらいわけがない。少なくとも、カボチャやサツマイモだけ食わされれる状態ではないだけいい(p151)


・患者さんが亡くなるまでの半年間にかかる医療費・・・最後の一か月だけ倍になっている・・・その倍になっている部分は、家族の願望分です・・・少なくとも家族は救われるという面はあります。特に、うるさい親戚の目を気にする場合はそうでしょう(p165)


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▼引用は、この本からです
「「自分」の壁」養老 孟司


【私の評価】★★★☆☆(75点)



目次

第1章 「自分」は矢印に過ごない
第2章 本当の自分は最後に残る
第3章 私の体は私だけのものではない
第4章 エネルギー問題は自分自身の問題
第5章 日本のシステムは生きている
第6章 絆には良し悪しがある
第7章 政治は現実を動かさない
第8章 「自分」以外の存在を意識する
第9章 あふれる情報に左右されないために
第10章 自信は「自分」で育てるもの


著者経歴

 養老孟司(ようろう たけし)・・・1937(昭和12)年神奈川県鎌倉市生まれ。62年東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。95年東京大学医学部教授を退官し、現在東京大学名誉教授。


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