「政府はこうして国民を騙す」長谷川 幸洋
2013/04/14公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
だれもが気づいていると思いますが、政治家、官僚、マスコミ、財界などは、力を持つ同士として影響し合っています。もちろん、表(たてまえ)と裏(本音)があり、お互いの力関係の中で妥協もあれば裏切りもある。
この本では、マスコミ側である著者の視点から「これはおかしいな」と思われる事例を教えてもらいましょう。「おかしいな」と感じるということは、本音が見えていない証拠なのです。
・野田佳彦政権が関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させる方針を決めた。・・「安全を確認しなければ再稼働しない」と言っていたかと思えば「電力需給が逼迫する」と稼働の理由を変え、最後は「経済産業省の副大臣や政務官を現地に常駐させる」などと言い出した。(p164)
この本で指摘する事例は、
・小沢一郎民主党元代表の捜査報告書の偽造
・原発事故をおこした東電の救済
・消費税増税
・安倍総裁を嘘で叩くメディア
などです。
こうした事象の本質を報道できないのは、マスコミへの圧力があるからです。それは上司への抗議であったり、出入り禁止であったり、取材拒否。そうして著者を含めたマスコミは、公式発言のみ報道するポチとなっていくのです。
・自由民主党の安倍晋三総裁が2~3%のインフレ目標の設定と大胆な金融緩和を日銀に求めた件で、白川方明日銀総裁が反論した・・・安倍は「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」と言っただけで「建設国債の日銀引き受け」という言葉は安倍のカギカッコ発言の中には出てこない(p248)
紹介される事例は民主党時代のものばかりで、民主党は本当にひどかったと思い出してしまいました。
著者もポチ記者であったと告白しているところが潔い。長谷川さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・ここに「東京電力の処理策」と題された6枚紙がある。作成したのは経産省のベテラン官僚である・・・東電を発想電分離して「東京発電会社」と「東京送電会社」に分けた後に、第2段階として発電部門の東京発電会社を「事業所単位で分割し、持ち株会社の下に子会社として・・その後で子会社の売却を提案している。(p119)
・調査委は東電に一段のリストラを迫っているが、その結果、どうなるかといえば、東電は資産超過の会社になる。いわば贅肉を削ぎ落としてピカピカの会社に生まれ変わるのだ(p130)
・「財務省は水面下で野田に解散を迫っているのではないか」と指摘した。理由は野田が政権を続けて予算編成したところで、政権が交代すれば、予算を作り直す以外になく、そうなれば混乱が続いて、後に控えた消費税引き上げにも悪影響があるからだ(p245)
・永田町から日銀批判が飛んでくると、日銀担当記者はほぼ自動的に日銀側に立ってしまうのだ・・・こうした「記者の理解」は根本を探ると、中央銀行の独立性に対する誤解ないし無知に根ざしている。中央銀行の独立性とは、「政策手段について独立性が認められている」にすぎない(p220)
・政治資金管理団体「陸山会」による土地購入をめぐる事件で、東京第5検察審査会は小沢一郎民主党元代表の起訴相当を議決した。議決を受けて小沢の元秘書を再聴取した東京地検の田代政弘検事が作成した捜査報告書は、元秘書が隠し録りしていた録音記録によって架空であったと明らかになった(p79)
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第1章 情報操作は日常的に行われている
第2章 政府は平気で嘘をつく
第3章 迷走する政治、思考停止したメディア、跋扈する官僚
著者経歴
長谷川幸洋(はせがわ ゆきひろ)・・・1953年千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1977年に中日新聞社入社。東京本社(東京新聞)経済部勤務、ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)卒。ブリュッセル支局長などを経て、現在は東京新聞・中日新聞論説委員。2005年から2008年まで財政制度等審議会臨時委員、06年から09年まで政府税制調査会委員、2013年から規制改革会議委員、2016年から規制改革推進会議委員。読売テレビ系列『そこまで言って委員会NP』、ニッポン放送『ザ・ボイス そこまで言うか! 』のコメンテーター、TOKYO MXなどで放送中の『ニュース女子』MCを務める。
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