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【書評】「非常識な本質―ヒト・モノ・カネ・時間がなくても最高の結果を創り出せる」水野和敏

2021/03/22公開 更新
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「非常識な本質―ヒト・モノ・カネ・時間がなくても最高の結果を創り出せる」水野和敏


【私の評価】★★★★★(92点)


要約と感想レビュー


水野和敏さんはミスターGT-R

著者の水野和敏さんはミスターGT-R、日産の4輪駆動スーパーカーを開発した人です。若いときは車の開発をしたくて日産に入ったのに部品の図面を書くだけで、組織の歯車のような仕事に幻滅。やる気のない不良社員であったようです。


ところが、販売会社に出向して、車を愛するお客様、車を生活の必需品として使っているお客様を知り、そうしたお客様が喜んでくれるような車を作ろうと心を仕事の虫に変わりました。しかし真面目に仕事をしてみると日本車と欧州車には大きな差がありました。病気になるくらいの衝撃を受け、欧州車に負けないプリメーラ、GT-R(R34型)という車を開発しています。


満たされた「ヒト・モノ・カネ・時間」は組織を崩壊させる・・・グループCでは当時・・各チームは開発部隊を含めると数百人規模でレースにのぞみ、年間予算も50~100億円くらいかけていました・・・私は年間予算を約10億円+αにしてもらいました・・人は50人(p27)

GT-Rは予算も人も通常の半分以下

水野さんのすごいところは、従来の業界で常識とされた開発人数、開発予算の半分以下で成果を出してきたということでしょう。著者はゴーンCEOに、「GT-Rの開発の期間は3年、スタッフ50名でやります」と宣言し、予算も人も通常の半分以下とし、条件は自分の思うようにやらせてもらうこと。結果がでなければ会社を辞める覚悟でした。


人材は、エリートではなく落ちこぼれのような人を集めました。落ちこぼれの寄せ集めの少数でやってみると、「優等生」よりチャレンジしてくれたという。なぜなら、劣等生に失うものはなにもないからです。それはマグレや偶然ではなく、著者は少数にするから効率が上がり、メンバーの士気も上がるという確信があったのです。それを実際にGT-Rの開発で証明したのです。


エリートコースを歩んできた人材・・・彼らを集めると、必ず「新しいことをやって失敗したらどうするの?」という声が上がります(p140)

社内から反対される商品がヒットする

99%の社内の人から反対される商品がヒットする、という著者の法則が本質をとらえていると思いました。なぜ著者が社内の反対に耐えられるのか。それはお客様の喜びだけが、著者の仕事の目標だからです。


だから「レースが僕の生きがいです。僕にレースのことは何でも聞いてください」という人はメンバーに入れなかったという。つまり、お客さまより自分のやりたいことをやる人は不要としたのです。お客様のために苦しむことができない人はいらないというわけです。


99%の人は社内事情や自分のために仕事をしている、というのが悲しい現実なのでしょう。組織の中で自由にやりたいことをやれるものではないけれども、やろうとしなければ、何もできないのだなと思いました。水野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・ゴーンCEOは、僕の手を両手で握りながら力強く言いました・・・君は今日からミスターGT-Rだ・・・この会社に1000万円を超えるスーパーカーをわかっている人はいない。だから、正式な会議や提案の会議は通さなくていい。私とあなたと何人かの少人数、直轄でやっていこう。外野の間違った意見や判断はプロジェクトをダメにする(p134)


・俺の要求したとおりの精度のものを出してくれ・・・いまこの現場でつくっているものは、『俺の作品だ』って言えるものなのか、会社に言われたからつくっているものなのか、どっちだ!?みんな、このラインにスーパーカーを流そうじゃないか(p164)


・日産GT-Rの機能や性能、整備も含めて徹底的にチェックした値付けを保証する「認定中古車制度」をはじめました・・・不正改造を煽っていた雑誌も、日産がアフターパーツを締め出して部品利益を独り占めにしている、ユーザーが自由に走る権利を奪っているなどと書く始末(p216)


・ぶっちぎりで勝ってしまうと、きっとアメリカ人は日本人に対して、翌年にはレースの規定を変えてハンディキャップをつけるだろうということです。本当は15ラップぐらいの差をつけて独走状態・・・そこは抑えて、2位との差が15ラップからひと桁の9ラップになるまでピットで洗車をしていました(p51)


・24時間耐久レースが行われるニュル(ニュルブルクリンク)のサーキットでは、毎年平均50人ものドライバーが事故で命を落としています(p166)


・母は、よく言っていました・・・私は奉公先で赤ん坊を背負いながら、その家にあった本が読めることが最高の幸せだった。おまえには1冊の本のありがたさがわからないだろう(p69)


▼引用は、この本からです
「非常識な本質―ヒト・モノ・カネ・時間がなくても最高の結果を創り出せる」水野和敏
水野和敏、フォレスト出版


【私の評価】★★★★★(92点)


目次

第1章 非常識な本質
第2章 はみ出し者が生きる道
第3章 「お客様は神様」の本当の意味
第4章 世界一を目指した型破りな開発
第5章 答えはいつも会社の外にある
第6章 ブランドの正体



著者経歴

水野和敏(みずの かずとし)・・・1952 年1月長野県生まれ。72 年日産自動車に入社、P10 プリメーラパッケージやスカイラインGT-R(R32 型)の新規パッケージの提案と開発などに従事。1989年ニスモに出向しレーシングチームの監督兼チーフデザイナーに就任。国内耐久選手権3 年連続チャンピオンおよび1992 年デイトナ24 時間レース総合優勝獲得(1992 年は参戦全レース全勝)。1993 年に日産自動車へ復職し、FM パッケージ「スカイライン(V35 型)、フェアレディZ(Z33 型)」、PM パッケージ「日産GT-R(R35型)」など、開発責任者として活動。「ミスター・GT-R」としてすべての統括責任業務を遂行する。2013 年3 月の日産自動車退社後も、セミナー講師や「生きる力プロジェクト」の発起人として活動中。


日産関連書籍

「日産自動車 極秘ファイル 2300枚「絶対的権力者」と戦ったある課長の死闘7年間 」川勝宣昭
「日産自動車の盛衰―自動車労連会長の証言」塩路 一郎
「日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年」井上 久男
「非常識な本質―ヒト・モノ・カネ・時間がなくても最高の結果を創り出せる」水野和敏
「日産の創業者 鮎川義介」宇田川勝


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