「新・失敗の本質―「失われた30年」の教訓 」山岡 鉄秀
2019/06/12公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
■アメリカの石油メジャー勤務、
オーストラリアの大学院で学んだ著者から
日本という国はどう見えるのでしょうか。
それは一度決めると変えない伝統主義。
合議制で決断は遅いが、実行は堅実。
道徳を大事にする社会。すぐ謝罪する。
一方で、欧米の多くの国は
事実に基づく分析で決定する合理主義。
権限と責任を持ったリーダーが決断する。
契約、効率、ルールを大事にする社会、
ということです。
そして日本の失敗の本質は、
一度決めると変えないという
日本独特の文化にあるとしています。
安定時は「担ぐ神輿は軽くてバカがいい」
日本文化でよいのかもしれませんが、
戦時には日本文化を変えなければ
また同じ失敗を繰り返すであろう
ということです。
・旧帝国陸海軍は・・最後の最後まで初期の戦法で戦い通して敗北してしまった・・・日本というのはそれくらい伝統主義の国で、与えられた前提を変えることができない・・・誰かが「その前提はおかしい」といえば、袋叩きの対象になってしまう恐れがあります。そのため抜本的な改革が起こりにくい・・・根本的に脅かされて生存が危うくなったとき、初めて変革しようとなる(p181)
■例えば、中国の工作活動への対策として
アメリカは貿易戦争を起こしています。
オーストラリアは外国干渉防止法を
成立させました。
それに対し日本は、中国が表面上軟化
したためか、2018年10月に安倍首相と
経団連が訪中して3000億円の商談を
まとめています。
著者の意見は、中国がすり寄っている
今こそ、尖閣諸島への徴発、反日教育、
反日工作活動の停止を前提条件として
要求すべきということです。
欧米が中国の工作活動に気づき、
手を打っているなかで、
日本だけが何も対策を打たずに
金に目が眩んで中国を助けている。
このままでは天安門事件のときのように
日本は利用されるだけ利用されて
不要になればすぐに攻撃されると
予想しています。
・「静かなる侵略」を招き入れる愚・・国民の血税を注ぐ中韓交流事業・・・中国が仕掛ける超限戦の特徴の一つは、留学生や研究者、ビジネスマンなどの民間人をフルに活用してあらゆるスパイ活動、工作活動を行なうことです。ですから、米国も中国人へのビザ発給を厳格化する対抗措置を取りました。中国への経済的依存度が高いオーストラリアでさえも外国干渉防止法を成立させました(p159)
■外国から見ると日本が見えるのだな、
と思いました。
異文化との交流の機会が少ない日本人には
なかなか持てない視点だと思いました。
また著者は、日本の現実として、
変革の声を上げても、
批判されるだけであることも
知っているからこそ、
この本を書いたのでしょう。
山岡さん、
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・グローバリズムとはビジネスの利益を極大化したい人々(グローバリスト)が国家の転覆をもいとわずに進める世界統一市場化のことで、その本質は国家金融資本だというものです(p4)
・島国の住民である日本人は自分たちの文化の中でしか物事を考えられない、考えようとしない傾向が強く、そのことが度重なる失敗の本質の主原因になっている(p3)
・国際社会でよくいわれていることが、この「日本人は決断できない」です・・・リーダーシップの定義が不明確で、合議制をよしとしているからスピードについていけないのです(p49)
・(憲法が)制定された当時は、戦勝国から悪者にされ、「絶対に侵略戦争ができない国にしないといけない・・という前提がありました・・しかし、今日において何よりも一番大事なことは、日本自身が侵略されないことなのです(p14)
・入学式や卒業式での国旗掲揚を拒否する教師もいるようですが・・日の丸を掲げて、「日本に生まれてよかったなぁ」と自然に思えるような国にしていかなければなりません。日本をそうようないい国にしよう、と思うことがすなわち愛国心です。国旗掲揚に抵抗を感じる人は教職につくべきではない、というのが私の意見です(p205)
・日本人は敗戦のショックと占領軍による教育によって、「愛国心=日の丸=軍国主義=戦争=絶対悪」という固定観念にいまだに縛られているようです。しかし、海外では「自国の文化や歴史に誇りを持つこと」は当たり前であって、エリートほど「国益の確保の大切さ」を教えられるのです。国民が健全な愛国心を持たない国は必ず滅びます(p219)
・アメリカ人が何かを共同で決めるときに重要なコンセプトは、抑制と均衡、それからプロフェッショナリズム、専門知識、責任と権限、報酬などです(p122)
・リーガルコードの人々の問題解決の手法は、「まず分析」です。根本原因は何かというところまで掘り下げていき、原因を突き止めたら、そこから反転して解決方法を考えていく(p110)
・「それは本当だろうか」という検証的思考に、「自分ならどう考えるだろうか」という独自思考・・それがクリティカル・シンキングです(p173)
・日本は中国や韓国から「歴史問題」でさんざん攻撃されていますが・・反論もせず、ダラダラとあいまいな形で放置したのが最大の原因です(p75)
・帝国陸海軍は生活共同体化してしまっていた。下っ端は大変でも、上に行けば行くほど楽になり、だんだん自分の頭で考えなくなっていく。そのため、「下士官が一番優秀で、大将が一番無能」と敵国から評価されていたりすることになったのです(p85)
・真珠湾攻撃の際、司令官の山本五十六は自ら出向かず、部下の南雲忠一中将に任せ、自分は瀬戸内海で将棋を指していたといいます。国の命運を決する大作戦時に、しかも自分がいい出した作戦なのに陣頭指揮を執らないリーダーなど考えられません(p80)
・日本人が失敗する大きな原因の一つが謝罪から入ってしまうことで、これはまさに文化的特質といえます。日本以外の国々では、謝るのは最後の最後で、そのときは罪を認め、刑事責任でも社会的制裁でも受け入れるという前提で行なうものです(p76)
・アメリカが落ち目になったのを機に、中国は「これで勝てる」と手の平を返しました。それが彼らのカルチャ-で、韓国人も同じです・・(p150)
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【私の評価】★★★★☆(88点)
目次
第1章 日本、久しぶりに帰ったら危機だった!
第2章 外交・ビジネス・軍事の失敗は同根だった!
第3章 グローバル時代に重要な「文化の世界地図」
第4章 痛恨!戦い方を知らない日本人
第5章 生き残りのカギは人材育成
著者経歴
山岡鉄秀(やまおか てつひで)・・・1965年、東京都生まれ。中央大学卒業後、シドニー大学大学院、ニューサウスウェールズ大学大学院修士課程修了。2014年、豪州ストラスフィールド市において、中韓反日団体が仕掛ける慰安婦像設置計画に遭遇。子供を持つ母親ら現地日系人を率いてAJCN (Australia-Japan Community Network)を結成。2015年8月、同市での「慰安婦像設置」阻止に成功した。
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