「失敗学実践講義」畑村 洋太郎
2018/10/09公開 更新

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【私の評価】★★★★★(91点)
要約と感想レビュー
■「失敗学会」を立ち上げた
東京大学の畑村先生の一冊です。
「失敗学会」だけあって
こんな大切なポイントがあったのか!
という学びがいっぱいありました。
事故は繰り返されるものですが、
それを予防しようとする
努力が必要なのでしょう。
・過去に敬虔した事故や失敗とほぼ同じものが、30年後に再び繰り返される・・(p50)
■面白いところは
マスコミは批判していたが、
現場はしっかりやっていたというところ。
例えば、三菱重工業の豪華客船が
3度も火災をおこしましたが、
作業員の全員退避を確認してからの
消化作業を評価しています。
また、日本のロケット技術についても
予算や実験回数、失敗確率から見れば、
よくやっていると評価しています。
感覚ではなく事実とデータ分析で
判断するのが理系らしい
ところなのでしょう。
・ダイヤモンド・プリンセス号の火災事故の場合、突発事故であるにもかかわらず、約1000人の作業員は直後に全員無事に退避しています・・・バーコードで人の出入りをすべて管理していた・・「船内に誰も残っていないのを確認してからすぐに消火活動を開始しよう」という判断を下すことができたのです(p222)
■現場においては、
「失敗学会」は必須と感じました。
30年毎に同じようなトラブルが
起こるという法則を考えれば、
30年前のトラブルを調べると
面白いかもしれませんね。
畑村さん
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・想定され得ることは必ず起こる(p27)
・人の注意力には限界がある(p75)
・「現地」「現物」「現人」が理解の基本(p266)
・マニュアルは変えるためにある・・・マニュアルを肥大化させない・・一番のおすすめは、マニュアルを使う人自身が自分で考えてマニュアルをつくっていくことです(p107)
・2003年5月末の宮城地震の際には、このうち東北新幹線の橋脚が30本程度損傷しました。JR東日本はこれを機に高架橋の安全対策を見直し、8万2000本の約5分の1に当たる1万5000本あまりの橋脚に対し、鉄板を巻いてその内側にコンクリートを注入して強化・・ところが、こうした大切な知識が、残念なことにJR西日本には一切伝わっていませんでした(p138)
・世の中には「バカと専門家は細かいことを言いたがる」という大法則がある(p170)
・みずほ銀行のケースで考えると、新システムが三行の統合までに間に合わないなら当面はそれぞれ古いシステムのまま動かしておき、その間にまったく別の新しいシステムをつくるべきでした(p159)
・システム全体で動かしてみなければ、きちんとした検証はできません。ですからみずほ証券のようなケースでは、証券会社のシステムと東証のシステムをつないだうえでの検証作業を行うことが絶対に必要になります・・・かつて私は、きちんと検証をすることを東証の幹部の人に提案したことがあります。このときは東証側も前向きな姿勢を示していましたが、実現しないうちにみずほ証券のトラブルは発生しました(p165)
・世界の宇宙開発を見ても、ロケットの打ち上げは20回に1回程度の確率で失敗を繰り返しています。そのことを考えると、H2A6号機の失敗時によく言われた、日本のロケット事故がとくに多いという見方は間違いである・・・10分の1程度の予算しかかけておらず、しかもロケットの打ち上げ回数もわずか数十回程度です。それでいて世界のトップレベルの技術に押し上げたことは、客観的に見れば十分評価に値すること・・(p264)
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【私の評価】★★★★★(91点)
目次
第1講 想定され得ることは必ず起こる(六本木ヒルズの大型回転ドア事故)
第2講 人の注意力には限界がある(日本航空の連続トラブル)
第3講 追いつかなかった企業改革のスピード(JR福知山線脱線事故)
第4講 ゼロからつくり直すことの大切さ(金融システムの失敗)
第5講 見たくないものは見えない(リコール隠し)
第6講 起こる前に起こった後のことを考える(火災に学ぶ)
第7講 それぞれの立場から見える風景(JCO臨界事故)
第8講 トップの孤独(ロケットの打ち上げ失敗)
第9講 「現地」「現物」「現人」が理解の基本(JR羽越線脱線事故)
おわりに
補 講 文庫増補版 終章(日本航空の破綻・トヨタのリコール)
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