「徹底検証「森友・加計事件」―朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」小川榮太郎
2018/07/31公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
獣医学部を新設した加計学園の真実
先日、あるテレビ番組を見ていたら、大学関係者が、理系の獣医学部を新設しても加計学院は儲からない・・儲かるのは文科系の学部であると発言していました。そういえば、本棚に「森友・加計事件」の本があったな!とこの本を手にしました。
では、わざわざ儲からない獣医学部を加計学園が新設しようとしたのは、なぜなのでしょうか。それは愛知県知事や関係者が不足している獣医学を学ぶ学生を増やすために10年以上前から活動してきたのであり、加計学園がカネ儲けのために申請していたわけではないのです。
そもそも獣医学部新設を十年にわたり牽引してきたのは前愛媛県知事加戸守行であって加計孝太郎ではない・・・獣医学部新設を一貫して強く主張してきたのは、安倍ではなく国家戦略特区やその下部組織となるワーキンググループの民間委員たちだ(p3)
森友学園問題の真実
森友学園問題では、朝日新聞は、森友学園への土地売却価格が「豊中市の同じ規模の近隣国有地の10分の1だった」と報道しています。実は事実は全く違っていて、豊中市には、国交省の住宅市街地総合整備事業国庫補助金として7.1億円と、地域活性化と公共投資臨時交付金として総務省、内閣府から6.9億円が支給されており、豊中市の実質負担金は2千万円で、森友学園の実質負担額より安かったという。
また、籠池理事長の証人喚問の翌日の朝日新聞の見出しは「昭恵夫人付職員が関与」でした。見出しは「籠池氏『昭恵夫人から、口止めとも取れるメール』」「お人払いをされ、100万円を頂き金庫に」「夫人から財務省に、動きをかけて頂いた」と、証人喚問の内容を説明するよりも、総理大臣夫人の関与の印象操作に全力をあげていたのです。
現在では森友学園問題は、資金繰りに困っていた籠池理事長と近畿財務局が契約してしまったことにあります。安倍昭恵の名誉校長就任は、契約の四ヶ月後のことで昭恵夫人への「忖度」はあるはずがないのです。新聞記者はそのようなことは知っていたはずなのですが、どうしてこうなってしまったのでしょうか。
そのヒントは、朝日新聞記事の中にあるという。2017年3月16日の「籠池氏取材した作家が発言紹介」「稲田氏と握手し話した」と見出しの記事は菅野完に取材して記事にしたもので、菅野完とは首都圏反原発連合(反原連)に参加し、「レイシストをしばき隊」と称する団体の結成メンバーであり、プロの活動家だったのです。
森友の一件・・この問題を提訴した木村真市議は・・「連帯ユニオン議員ネット」副代表となっているが・・そもそも関西マナコンは過激な極左活動団体なのである・・・沖縄の反基地闘争に注力、「安倍政権打倒」等を掲げ、委員長の武健一は逮捕歴が実に三回・・同時に逮捕された武のボディーガード役は元山口組系の元組長(樺山勝美)であり、また、武は2003年、辻元清美議員に一千万円の献金をしている(p20)
朝日新聞の「印象操作」
朝日新聞の面白いところは、一般に「印象操作」と言われる見出しと内容が合っていない事例があることでしょう。この本では、「総理の意向」の文書は文科省の内部文書の一部を切り取って、あたかも「総理の意向」があったとミスリードしているとしています。そもそも「総理の意向」の発言をしたとされるのは藤原豊審議官であり、その序列は局長と課長の間で、一方の文科省の担当は課長でした。課長と審議官が総理と用談できるはずもなく、そうした審議官が「総理の意向」を持ち出しても実際には安倍首相と関係ないことは官僚にとって常識なのです。
また、朝日新聞は、"安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人『加計学園』"とか、"『官邸の最高レベルが言っている』などと書かれた文書"という決まり文句で読者の潜在意識に暗示をかける手法も紹介しています。意図的なのか、それとも単なる偶然なのか分かりませんが、何重ものチェックの後に報道されているはずですので、組織としての意思があるのでしょう。
朝日新聞が・・一面トップで・・「新学部『総理の意向』」と横に大きくぶち抜き・・朝日新聞は、入手したスクープ文書の写真を一面左に大きく掲載しているのに、周囲に黒い円形のグラデーションを掛けて、一部しか読めないように細工を施している・・「総理のご意向」が書かれた同じ文書のすぐ下に、「総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」と書かれている・・指示がなかったからこそ「総理からの指示に見える」ような操作が必要だ‐この文書はそう読める(p152)
朝日新聞はスラップ訴訟で脅す
なお、朝日新聞はこの本に「誹謗・中傷」があったとして、著者と出版社に5000万円の損害賠償を求めて提訴しています。衝撃的なのは、訴状に「安倍晋三首相が関与したとは報じていない」と書いてあることでしょう。これだけの報道をしておきながら、「安倍晋三首相が関与したとは報じていない」とは、すごい主張です。
本書の内容としては、感情的な表現はありますが、できるだけ得られた情報を読者に伝えようとしていると感じました。なお、このメルマガは書籍の内容を紹介しているだけで「朝日新聞が印象操作をしているとは報じていない」ので、念のため。小川さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・テレビは加計問題「閉会中審査」をどう報じたか?「加計問題」報道全体の時間=8時間36分23秒
うち参考人を直接引用した各時間は・・2時間42分22秒
前川喜平・前文科事務次官の発言を放送した時間2時間33分46秒
加戸守行・前愛媛県知事の発言を放送した時間 6分1秒
原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員の発言を放送した時間 2分35秒(p227)
・同じ戦略特区でも、42年ぶりに医学部として開学した国際医療福祉大学の方は・・・以下の人たちが天下りで役員や理事などに入り込んでいるのである。
宮地貫一(元文科事務次官)副理事長
佐藤禎一(元文科事務次官)教授
渡部俊介(日経新聞論説委員)教授
丸木一成(読売新聞医療情報部長)教授・医療福祉学部長
水巻中正(読売新聞社会保障部長)教授
金野充博(読売新聞政治部)教授
木村伊量(朝日新聞前社長)特任教授
大熊由紀子(朝日新聞論説委員)教授・・・
全メディアがこれだけ遠慮会釈なく叩かれ続けるのも同様で、安倍自身が利権とよほど縁のない政治家だという証左と言えるであろう(p206)
・獣医師会会長の藏内勇夫は自民党福岡県議会議員の実力者で、麻生と懇意である。また、日本獣医師政治連盟委員長の北村直人は元自民党衆議院議員で、石破茂と親密な友人だ(p240)
飛鳥新社 (2017-10-18)
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【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第一章 報道犯罪としての森友学園騒動
第二章 籠池劇場――喜劇と悲劇
第三章 森友問題の核心――九億六千万はなぜ一億三千万になったのか
第四章 加計学園――朝日新聞はいかなる謀略を展開したか
第五章 加計問題の真相に迫る
著者経歴
小川榮太郎(おがわ えいたろう)・・・文藝評論家、社団法人日本平和学研究所理事長。昭和42(1967)年生まれ。大阪大学文学部卒業、埼玉大学大学院修了
加計学園問題関係書籍
「偽りの報道 冤罪「モリ・カケ」事件と朝日新聞」長谷川熙
「徹底検証「森友・加計事件」―朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」小川榮太郎
「大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実」高橋 洋一
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