「武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』」佐藤 優、原 泰久
2018/02/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(93点)
要約と感想レビュー
中国の紀元前の春秋戦国時代を舞台としたマンガ「キングダム」を引用し、組織で生きていくためのコツを提示した一冊です。中国の考え方は日本よりも長期的であるように思います。今、勝てないなら、戦わないで逃げる。今、勝てるなら、攻撃して皆殺しにする。皆殺しにするのは、生き残った者からの復讐を防ぐためです。
読んでいる最中に、ちょうどテレビで貴乃花親方が貴ノ岩暴行事件について語っていました。正義を貫く貴乃花親方ですが、残念ながら組織とはそういう正義を叩き潰すものだ、と納得しながら読み続けました。
・無理に「勝ち」にこだわって虚勢を張り、自滅するのは愚かだ。まずは「負けない」ことを選択し、長期的に見て勝てばいいという考え方をしたほうがいい(p36)
日本では、正義が勝つということを信じている人が多いようですが、国際世界や世の中では、それが通らないこともあります。自分に正義があっても、実際に現実が動かないことは多い。その時にどうするのか、ということでしょう。貴乃花親方には先がありますので、今、力を蓄積して、次のチャンスを狙うというのが合理的な判断なのでしょう。
・最前線から干されたからといって、この先ずっと裏街道を歩くわけでもない。また風向きが変わればどうなるかわからない。そのときに備えて自分を強くできるのか、それとも諦めや自暴自棄で自分を弱めてしまうのか。干されたときこそ次への準備が問われる(p172)
私も組織の中に30年いますが、どこの組織も同じようなものではないでしょうか。そうした中で、それぞれの人が、それぞれ頑張っているのです。良い・悪い、正義・不義に縛られることなく、求める結果を出していきたいものです。
でも、佐藤さんは官僚時代には自分の道を進んで、臭い飯を食うことになってしまいました。自分の正義の道を進んだのだから後悔はないようですが、「負けない」という点では反省すべきところはあったようです。佐藤さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「世にいう『正義』とはその人柄に宿るのではなく、勝った者に宿るのだ」と、いくら自分が正しい、正義だと信じていて実際にそうだとしても、負けてしまえば正義にならない。だからこそ「引き分けでもいいから絶対に負けない」ことが大事なのである(p43)
・ビジネスの世界で生き残れる人は、どこかで合理的な撤退という決断をしている(p32)
・内部告発者が保護される制度があるのと、現実は別だということだ。組織の論理から考えれば、上を敵に回した内部告発者が不利になるに決まっている。上を刺そうとする人間を、組織は無意識のうちに排除するものだからだ(p69)
・与えられたチャンスは全部受けるというのが基本だが、自分から「お願い」はしてはならない。余計なものがくっついてくるからだ。向こうからお願いされたことは受けていく、というのが組織で生き残るコツである(p91)
・組織の居心地をよくして、仕事がうまく回るようにするために、極端な言い方をすれば「上司にゴマをする」のは決して悪いことではない(p108)
・いかに信頼できる人を見つけて増やせるか・・任せられる人を増やしていくことが自分自身の質を変えていくことにもつながるのである(p120)
・みんなに納得させられるように動ける人間は、メンバーにとってもありがたい存在になる。そういったタイプの人間についていくと自分の生き残りの確率も高まる。強いリーダーシップタイプは、そのやり方が受け入れられなかったときにコケてしまう可能性がある。そうなると自分までも一蓮托生になるからだ(p110)
・新約聖書『ローマの信徒への手紙(12勝9節)』に出てくる「復讐するは我にあり」という言葉がある・・その本意は「復讐は人間がするものではなく、神が行うもの。神の怒りに委ねなさい」ということ(p181)
・東郷氏に教えられたのは「交渉をまとめようとするときに50対50にはしない」ということである・・いかに相手に51%を確保させるかを考える(p83)
・受験に限らず、何かをするときに「終わりの絵」を描くことは目的論的に重要だ・・終わりから考えて、今現在を見ることに意味がある(p49)
・私がいつも勧めているのは、今の自分よりも2割増しの目標を持つこと。自信過剰に5割増しにするのでもなく、自分を過小評価するのもよくない(p21)
・太平洋戦争において、どうして戦力は逐次投入で消耗戦を行って大敗を喫したのか・・唯一といっていいぐらい例外的に全面退却を行ったのが、「キスカ島撤退作戦」で有名な樋口季一郎司令官である(p29)
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【私の評価】★★★★★(93点)
目次
序章 残酷な世界を生き抜く知恵は『キングダム』が教えてくれる
第1章 メンタルタフネス
第2章 やり抜く力
第3章 人脈術
第5章 交渉術
第6章 意思決定力
第7章 資産防衛術
第8章 インテリジェンス
著者経歴
佐藤 優(さとう まさる)・・・1960年生まれ。日本の作家。学位は神学修士(同志社大学・1985年)。同志社大学神学部客員教授、静岡文化芸術大学招聘客員教授。在ロシア日本国大使館三等書記官、外務省国際情報局分析第一課主任分析官、外務省大臣官房総務課課長補佐を歴任。
2002年に鈴木宗男事件に絡む背任容疑で逮捕される。2005年に執行猶予付き有罪判決(懲役2年6か月、執行猶予4年)を受け東京高等裁判所、最高裁判所は上告を棄却し、判決が確定した。