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「TVニュースのタブー 特ダネ記者が見た報道現場の内幕」田中 周紀

2018/01/12公開 更新
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TVニュースのタブー 特ダネ記者が見た報道現場の内幕 (光文社新書)


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

テレビ局はニュースの中味よりインパクト

共同通信の特ダネ記者だった著者は、テレビ朝日のニュースステーションのディレクターになりました。そこで驚いたのは、テレビ局とはニュースの中味ではなくインパクトのある映像のあるニュースを報道するところだったのです。つまり、視聴率が取れるニュースを優先して報道しているのです。営利企業ですから当然のことですが、ジャーナリストとしては衝撃的な事実だったようです。


そして新聞では事実の追及に重きが置かれますが、テレビは視聴者へのインパクトが追及されていたという。いかに視聴者の感情に訴えるか。長時間、インタビューして編集で一部しか使わないのは、事実よりインパクトを出すためなのです。事実上、テレビはジャーナリズムではなく、創作も許されるバラエティ番組に近いものであったのです。


・映像メディアのテレビのニュースでは、記事の中身よりもインパクトのある映像を伴うものの方が優先される(p11)


テレビ局にジャーナリズムは存在しない

芸能人が絡む事件が起こると、タレントや所属事務所と顔馴染みのワイドショーのリポーターが、社会部の記者がタレントに都合の悪い質問をしようとするのをブロックする光景に何度か出会ったという。ジャニー喜多川の性加害問題がこれまで問題とならなかったのは、こうした日本にはジャーナリズムが存在しないことの証明なのです。


また、著者がニュースステーションのディレクターだった時、取材した内容を放送しようとすると、幹部から「君が深く取材していることはよく分かった。でもあそこがうちの大口のスポンサーであることは承知しているよな。だから、うちが報道の口火を切ることは遠慮してほしい」と言われたという。このように、テレビ局にジャーナリズムは存在しないのです。


・テレビでは結論をこっちから向こうに投げるような聞き方をしてはダメなんですよ。多少は時間がかかっても、もっと大づかみに質問して向こうに喋らせないと、インタビューとして使いものにならないでしょ(p98)


『報道ステーション』に報道はない

2004年4月に『ニュースステーション』は『報道ステーション』に変わりました。著者は、新しい報ステの空気に違和感を覚え、職場を変えたそうですが、違和感とは何だったのでしょうか。


例えばテレビ局の政治部や経済部の実態は、原稿の文末を「今後の成り行きが注目されます」「難しい判断を迫られそうです」「先行きに暗雲が漂っています」といった陳腐な決まり文句で締める、いわゆる"ナリチュー原稿"ばかりだったという。新聞社や通信社では 「"ナリチュー原稿"は記者の恥」と厳しく教育されていたので、違和感でしかなかったのです。


同じマスコミとはいえ、新聞とテレビとは全く文化が違うということがわかりました。田中さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・テレ朝の経理体制が会社の規模拡大に追いつかず、東京国税局からしばしば申告漏れを指摘されていた時代には、三浦(甲子二)氏が大蔵省の親しいキャリア官僚に働きかけ、税務調査した東京国税局に追徴課税を減額させていたという(p200)


・「人間は一度でも一緒にメシを食えば、お互いの距離が急速に縮まる。同じ会社の人間と食っていても時間の無駄。取材相手と食え」証券業界を担当しているある先輩記者から受けたアドバイスを私は、かなり忠実に守った(p44)


・記者という仕事は、早い話が"個人商店"である・・自分で取ったネタは自分で記事にしたいし、できれば特ダネ扱いにしたい(p76)


TVニュースのタブー 特ダネ記者が見た報道現場の内幕 (光文社新書)
田中 周紀
光文社 (2014-01-17)
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【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

第1章 通信社とは
第2章 金融証券担当
第3章 国税報道
第4章 民放報道との出合い
第5章 2つのニュース
第6章 さらば、ニュースステーション
第7章 デスク稼業の日々
第8章 国税担当への復帰
第9章 民放局の経済部


著者経歴

田中周紀(たなか ちかき)・・・フリージャーナリスト。1961年島根県生まれ。上智大学文学部史学科を卒業後、85年に共同通信社に入社。87年から91年まで本社金融証券部で銀行・証券・保険業界を担当。大阪支社経済部と社会部を経て、95年から97年まで本社社会部で国税当局と証券取引等監視委員会(SESC)を担当。98年から2000年までは本社社会部遊軍で経済事件を中心に取材し、数々の特ダネをものにする。同年にテレビ朝日に転職。02年から04年まで「ニュースステーション」「報道ステーション」のディレクターを務め、06年から10年まで再び国税当局とSESCを担当。著書に『国税記者』(講談社)、『飛ばし 日本企業と外資系金融の共謀』(光文社新書)ある。


偏向報道関連書籍

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「TVニュースのタブー 特ダネ記者が見た報道現場の内幕」田中 周紀
「TBS「報道テロ」全記録―反日放送局の事業免許取り消しを!」
「永田町・霞が関とマスコミに巣食うクズなんてゴミ箱へ捨てろ!」ケント・ギルバート
「日本の政治報道はなぜ「嘘八百」なのか」潮 匡人
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