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「日本文明の興廃 いま岐路に立つこの国」中西 輝政

2012/09/22公開 更新
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日本文明の興廃 いま岐路に立つこの国


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

 地味な本ですが、日本の将来を考えた一冊です。天皇制から始まりますが、全体的には日本が国家主権を持った普通の国となることを目指すというもの。国家の盛衰は、その国民の精神のあり方で決まります。その日本精神の発露として、国家的な判断がなされ、外交が行われるわけです。戦後の外交を見ていると日本の将来に不安を持つのは当然ではないでしょうか。


 例えば戦前は、日本を孤立させ包囲し開戦へと追い込もうとするソ連や中国、そして英・米などの企図が明白だったのに、日本はみすみす相手の術中にはまったのです。どうしてそうなってしまったのか、私たちは分析し、これからの日本の政治に反省点を反映させなければならないのでしょう。


・中国・韓国の内政干渉を受け入れてきた日本政府・・・「靖国参拝反対」という国際ルールを無視した内政干渉・・・2002年5月の瀋陽・日本総領事館への中国官憲の侵入・・・「日本の主権は尊重する必要のないもの」と受け取るであろう(p228)


 著者の考えは、日本の外交は戦前から変わらないということです。過去の歴史を見ると、国際社会は配慮してくれるだろうと、何も発信しない、抗議しないことで、日本に不利な状況が生まれてしまうというパターンなのです。


 どうしようもない状況になってしまってから、急に原則論に従って強硬的な行動に出ざるをえなくなってしまうのです。この繰り返しが日本の外交であった、と著者は分析しています。最初から、日本の強い立場を示していれば、相手国も簡単には行動できなかったはずなのに、冷静に対応しているようみ見えるから、間違ったメッセージを相手に与えてしまうのです。


 尖閣諸島にしても、中国共産党が1992年に、尖閣諸島、西沙・南沙諸島を中国の領土とした「領海法」を施行したときに、現在の中国共産党のような厳しい対応を取るべきであったということです。中国共産党からしてみれば、法律を作ってしまった時点で、尖閣諸島は中国共産党のものであり、その時の対応で勝負は決まったのです。


・日本が国際連盟を脱退した直接の原因は、満州国の成立を認めないとする「リットン調査団」の報告書に反発したからである・・・もし日本が事前に、「報告書の内容しだいでは、国際連盟を脱退する」という態度をちらつかせていれば、報告書はより決定的に日本寄りのものになっていただろう(p198)


 他国による日本の主権の侵害→日本は反論しない→日本に不満が蓄積→日本の不満の爆発。歴史的に日本にはそうした傾向があり、そうならないように日頃から日本の主権を当たり前に主張すべきというのが、著者の考え方です。冷静に対応していると、調子にのって攻めてくるのが外交なのでしょう。


 合理的な主張の一冊でした。中西さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・当時のフランスは、隣国ドイツでヒトラーが出現しナチスが強大化していくにもかかわらず、「やがて豊かになればドイツは民主主義になる」「ナチスの強大化した軍備も自分たちに向かうことはない」ととらえ自国の防衛にほとんど手を打っていなかった(p78)


・中国は依然として北朝鮮に大きな影響力を保持し、北の核・ミサイル開発にも多かれ少なかれ関与してきたのである。ここにも反日デモと同様の構図がある。つまり、「手を焼いている」のではなく、密かに「手を貸している」のである。(p305)


・これまでなぜ日本だけが、これほど強く戦争責任を問われてきたかということである・・・朝鮮戦争では米軍を中心とした国連軍と韓国人が数百万人も殺されている。これは共産中国が北朝鮮に味方して戦ったことが大きい・・・国際社会は中国の戦争責任を問うこともなく1971年には北京政権に国連の常任理事国の座を用意しているのである(p219)


・アメリカはいち早く京都議定書から脱退した。それは、ヨーロッパがいまのまま何の努力も要さず目標達成が可能なのに対し、日米はその経済競争力に大きな制約を加えられることになるからである(p108)


日本文明の興廃 いま岐路に立つこの国
中西 輝政
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【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1部 確かな国家観をもって日本の危機に立ち向かえ
第2部 歪んだ歴史観の呪縛を解き放て
第3部 国際政治の現実を直視せよ



著者経歴

 中西 輝政(なかにし てるまさ)・・・1947年生まれ。スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院教授。専攻は、国際政治学、国際関係史、文明史。


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