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「左遷の哲学―嵐の中でも時間はたつ」伊藤 肇

2012/04/01公開 更新
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左遷の哲学―嵐の中でも時間はたつ (1978年)


【私の評価】★★★☆☆(72点)


要約と感想レビュー

 本棚を整理して出てきた一冊。かなり古い本ですが、ご紹介していなかったので、ご紹介します。「財界」編集長だった著者は、財界人と話した時のエピソードを闘病、浪人、投獄、左遷、挫折にわけて紹介してくれます。


 財界人も組織人ですから、三歩進んで二歩下がる、順調なときもあれば不遇のときもあるわけです。最終的に出世した人は、そうした不遇の時でも力を蓄え、次の飛躍の準備をしていたとわかります。もちろん努力した人すべてが成功するわけではないと思いますが、最低限、ふてくされていては成功はできないのでしょう。


世の中は普通に考えられるよりは案外に公平である・・長い目でみると、やはり正直な者、誠実な者が認められるというのが世の中である(中島董一郎)(p188)


 国内外のエピソードからは、功なり成功した人でも、一時、挫折を味わう時期はかならず来るということです。


 病気になれば、自分の死というものを考えるようになり、左遷されれば、人の気持ちがわかるようになる。挫折とは、悪いことばかりではないのです。


 そして、最終的に成功すれば、そうした挫折の時期をありがたいと思うことができるのです。


・何をやってもうまくいかない。そんな時には、「嵐の中でも時間はたつ」※というマクベスの台詞でも唱えながら、何もやらずにじっと自己に沈潜して時がめぐってくるのを待っているのが得策である(p79)
※Time and the hour runs through the roughest day.


 経験をプラスとするかマイナスとするかは、本人しだいなのでしょう。順調のときは調子に乗らす、辛い時は見ている人は見ていると期待して、自分の道を歩いていくしかないようです。


 伊藤さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・出世は結果であって目的ではない。だから「出世につかえず、仕事に仕える」のがプロの心意気であろう。(p148)


・私は世の青年実業家たちに忠告したい。第一に、性格は中庸を得て、あまり焦慮するな。成功を急ぐな。理論より実際を尊べ。第二に、浪費を省いて蓄積をなし、自分の資産を自分の信ずる事業に投ぜよ。そして、一生を通じて一事業に終始せよ(松永安左エ門)(p62)


・金の使いかたくらい難しいものはない。何故なら、人格がそっくりそのまま反映するからだ(松下幸之助)(p209)


・友を選ぶなら、いい人を選べ。さらに一番悪いのも一人加えておけ。教えられる。(永井隆)(p186)


・死を忘れた自由ではなくて、死を覚悟した自由、そういう自由こそ本当の人間の自由だ(p38)


・実業人が実業人として完成する為には、三つの段階を通らぬとダメだ。第一は長い闘病生活、第二は長い浪人生活、第三は長い投獄生活である。このうちの一つくらいは通らないと、実業人のはしくれにもならない(松永安左エ門)


左遷の哲学―嵐の中でも時間はたつ (1978年)
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伊藤 肇
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【私の評価】★★★☆☆(72点)


著者経歴

 伊藤肇(いとう はじめ)・・・1926年名古屋生まれ。旧満州国立建国大学七期生。中部経済新聞記者。雑誌『財界』副主幹を経て評論家となる。1980年逝去。


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