「クライマーズ・ハイ」横山 秀夫
2012/03/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
けっこう厚い小説だな・・・と思って読み始めたら、一気に読んでしまった一冊です。落ちもあってなかなかいい。1985年の日航ジャンボ墜落事故で、墜落現場の地元の新聞記者が、事故の真相を追うというストーリーになっています。
新聞社内にも派閥があります。部下と上司との関係も面倒くさい。家族問題のなかで、主人公は友人と登山することになるのです。サラリーマンなら身につまされますね。
・不安と苛立ちが胸をざわめかせていた。唯一の部下というべき佐山を制御できずにいる自分が、ひどく無力な存在に思えてならなかった(p51)
主人公は、物事をはっきり言うタイプです。でも心の中では、人間関係や自分の弱さに葛藤しているのです。強さの中の弱さが人間の本質であり、理想と妥協の間で心は揺れるのです。強さと弱さの合間で葛藤しているなか、主人公はスクープを落としてしまいます。その描写がすばらしい。
・悠木は狼狽した。それがなぜだかわからないまま、今度は膝が震えだした。(p292)
著者は元新聞記者だけあって、新聞社の雰囲気がよく分かりました。純粋に小説として面白いし、社会というものの勉強にもなるのではないでしょうか。
横山さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・命令や指示など幾ら出そうが、事件をやったことにはならない。記者職が染みついた人間は、自分が現場で目にしたことしか誇ることができない(p43)
・這い上がる意思のない人間に何本ロープを垂らしてやろうが無駄なのだ。意思ある人間は、ロープなどなくても必ず這い上がってくる。(p215)
・面白いですよね。誰でもみんな、山に来ると不思議なほど正直になっちゃう・・うん。なぜかな?・・・ひょっとしたらこれがこの世で最後の会話になる。無意識にそう思っているからですよ。山って、そういう場所ですから(p307)
・頭蓋の中で、耳鳴りのような母の声が響いていた。
小さなことを 恐れなさい
大きなことは どうにもならない
小さなことを 恐れなさい
大きなことは どうにかなるの
小さなことを 恐れなさい
小さなうちに 恐れなさい(p375)
【私の評価】★★★★☆(88点)
著者経歴
横山秀夫(よこやま ひでお)・・・昭和32(1957)年東京生まれ。国際商科大学(現・東京国際大学)卒業後、上毛新聞社に入社。12年間の記者生活の後、フリーライターとなる。平成3年「ルパンの消息」が第9回サントリーミステリー大賞佳作に。同10年に「陰の季節」で第5回松本清張賞受賞。同12年「動機」で第53回日本推理作家協会賞短編部門賞を受賞する
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こんにちは。
クライマーズ・ハイは本当にいい小説ですよね。
ドロドロした人間の内面が噴出する横山作品の中でも
特にそれが先鋭化している、読み応えのあるものだと思います。
映画も最高です。僕はブルーレイを買って何度も見てしまっています(笑)。
NHKのドラマの方もいいのですが、僕は映画の方が好きです。
堤真一や堺雅人、尾野真千子など、自分が気に入っている俳優が
出ているせいもあります。
つらつらと書いてしまいました。
では今後も楽しみにしております。
読みました。
メルマガであまり取り上げられない小説ですが、
新聞社の中で日航機墜落を通してサラリーマンが
押し通すのか、折れるのかの葛藤が・・・・
一気に読んでしまいましたが、
読んでいて歯軋りをするようなところもあり
私生活での親子、子育て・・・・
面白かったです