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「武士道」新渡戸 稲造

2012/01/13公開 更新
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武士道 (PHP文庫)


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

日米両国の架け橋とならん」新渡戸稲造は1900年、フィラデルフィアで「武士道」を発刊します。日本人でありながらキリスト教徒であり、奥様もアメリカ人なのです。誤解されがちな日本人を論理的に西欧人に説明したのは、彼が最初だったのでしょう。


ある人の発言として「アメリカ人の夫は、人前では妻にキスをするが私室では打つ。しかし日本人の夫は、人前で妻を打って、私室でキスをする」という言葉を紹介していますが、日本人がいかに西欧と異なる考え方をしているのかを説明しているのです。


さらに日本人は、厳しい状況に置かれても常に笑顔を絶やさないという傾向があることを説明し、西欧人にとって謎の日本人の笑顔には、逆境によって乱された心の平衡を取り戻そうとする努力を、うまく隠す役割を果たしていると説明しています。


・アメリカ人が贈り物をするとき、贈る側はその品物を誉め称える。だが、日本ではその品物を「つまらないものですが」と悪く言う・・日本人の場合は、「あなたは立派な人です。どんな贈り物でも立派なあなたにふさわしいものはありません・・・究極のところは同じである(p72)


驚くのは、日本人の特徴を説明するために、プラトン、アリストテレス、フリードリヒ大王、マホメット他の著名人の言動を引用していることです。日本人はこんな傾向があるが、それはフリードリヒ大王と同じ、といった論調で説明されているのです。


例えば、水戸義公(水戸光圀)の「生きるべきときは生き、死ぬべきときにのみ死ぬことこそ、真の勇気である」を引用し、プラトンも、勇気とは「恐るべきものと、恐るべきでないものを識別すること」だと定義している類似性を示すのです。新渡戸 稲造が、西欧の書籍に精通していたことがわかります。


・フリードリヒ大王(プロイセンの王)が「王は国家の第一の召使いである」と記した・・・米沢では、藩主として上杉鷹山が現れ、これとまったく同じ宣言をした(p52)


新渡戸稲造という日本人が存在したこと自体に感動を覚えました。英文で発行されていますので、日英併記されているともっとよかったかもしれません。新渡戸さん、よい本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本人の美しき礼儀の良さは、外国人旅行者の誰もが認めるところである・・・それは金銭上の貧富の差を問うのではなく、いかに人間として立派かを問うのであり、心の価値にもとづく区別なのである。(p63)


・鏡は人間の心を表している。心が完全に平静で澄んでいれば、そこに「神」の姿を見ることができる。それゆえに人は社殿の前に立って参拝するとき、おのれ自身の姿を鏡の中に見るのである(p27)


・「内助の功」・・・アメリカの女性解放運動家が「すべての日本の婦女子は、古い習慣に反逆して立ち上がれ!」と叫んだが、この自己犠牲の教訓が完全になくならない限り、日本の社会はこうした軽はずみは考え方には賛成しないだろう(p155)


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【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第一章 武士道とはなにか
第二章 武士道の源はどこにあるか
第三章 義--武士道の礎石
第四章 勇--勇気と忍耐
第五章 仁--慈悲の心
第六章 礼--仁・義を型として表す
第七章 誠--武士道に二言がない理由
第八章 名誉--命以上に大切な価値
第九章 忠義--武士は何のために生きるのか
第十章 武士はどのように教育されたのか
第十一章 克己--自分に克つ
第十二章 切腹と敵討ち--命をかけた義の実践
第十三章 刀--武士の魂
第十四章 武家の女性に求められた理想
第十五章 武士道はいかにして「大和魂」となったか
第十六章 武士道はなお生き続けるか
第十七章 武士道が日本人に遺したもの


著者経歴

岬龍一郎・・・1946年生まれ。作家・評論家。早稲田大学を経て、情報会社・出版社の役員を歴任。退職後、著述業のかたわら、人材育成のために「人間経営塾」を主宰。国家公務員・地方公務員幹部研修、大手企業研修などの講師を務め、「人の上に立つ者の人間学」を説いている。


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