「絶対貧困―世界リアル貧困学講義」石井 光太
2011/11/07公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
私も海外を歩いたことがありますが、本当に貧乏なところの経験はありません。アフリカ、アジアには、本当にその日の食べ物に困っている人がいるのです。そうした本当の貧乏とは、生活して体験してみないと実感がわかないのではないでしょうか。
本当の貧乏とは、今日、食べることができない。食べるために、物乞いをする。売春をする。出稼ぎをする。泥棒をする。そうした選択肢しかない人が存在するのです。実際、アフリカの場合、普通の人は、ドラッグを摂取したり、強盗事件や暴力事件を起こす路上生活者を恐れて、近づこうとしないという。路上生活者はギャングのような凶悪な存在なのです。
・路上生活者が自発的に行う犯罪は「泥棒」「恐喝」「強姦」といった元手がかからない単純なものです。この中でもっとも頻繁に行われているのが、泥棒・・・(p202)
こうした貧乏な人たちが移民となって、多くの国に出稼ぎに出ています。そして現地の人と問題を起こしているわけです。貧乏な人たちも生きるのに必死。受け入れる側も、安い労働力というメリットがありますが、治安の悪化、失業の拡大など覚悟が必要となるのでしょう。
実際、日本に不法滞在する外国人が「日本は平和ボケしているから何でも盗みたい放題だ。もし母国でつかまったらその場で射殺されるけど、日本なら監獄の中でおいしいご飯まで出してもらえる」と言っているというのです。また、「日本人男性はコンドームをしません。私の国では、HIVのリスクがあるので二重につける」というのです。
・貧しい外国人は今すぐ職に就く必要があるため、通常は日給千円のところを、二百円でも受けてしまうのです。・・・その結果、地元民がどんどん失業して、不法滞在の外国人がお金持ちになってしまうのです(p69)
著者が恐れるのは、東南アジアから何百万人というホームレスだった人々が押し寄せてきて、彼らが日本で強姦をしたり、重婚をしたりして、十人も十五人も子供を産んで、どんどんホームレスが増えて、やがては日本人よりも多くなることです。事実、途上国ではそういうことが起きているのです。
きれいごとではない「貧困」について考えさせてくれる一冊でした。解決策は自分で考えなくてはならないのでしょう。石井さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・日本の場合は、「豊かになるために売春をする」のですが、途上国では「なんとか一日二、三食たべていくために売春をする」といった意味合いがつよいのです(p241)
・5歳未満児死亡数(1000人あたり)
日本 4人
米国 8人
中国 24人
アフガニスタン 257人
シエラレオネ 270人(p43)
・アフリカの子供の死因(新生児疾患をのぞおく)
1位 肺炎
2位 下痢性疾患
3位 マラリア
4位 HIV/AIDS
5位 麻疹(はしか)(p122)
・アメリカの貧困層の人々は国から配布される食料交換クーポンによってジャンクフードばかり食べているため、どんどん太っていき、より仕事が見つからなくなったり、病気によって早死(p38)
・南アフリカは世界最大級のエイズ大国で、十五歳から四十九歳の人口の約五人に一人がHIV感染し、売春婦の感染率はそれをはるかに上回ると言われています(p268)
新潮社 (2011-06-26)
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【私の評価】★★★★☆(88点)
目次
第一部 スラム編
第一講 スラムの成り立ち
第二講 人々の暮らしと性
第三講 表の職業 闇の職業
第四講 貧民の流入と流出
第二部 路上生活編
第五講 路上生活者とは
第六講 恋愛から婚姻
第七講 出産から葬儀
第八講 物売り
第九講 物乞い
第十講 ストリートチルドレン
第十一講 路上の犯罪
第三部 売春編
第十二講 売春形態と地域
第十三講 売春婦の実態
第十四講 性の国際化
著者経歴
石井光太(いしい こうた)・・・1977(昭和52)年、東京生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『レンタルチャイルド』『ルポ 餓死現場で生きる』『遺体』『蛍の森』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家―わが子を殺す親たち』などがある。
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このメルマガのレビューを見て即効で買いました。
僕も以前からインドやタイ、ベトナムなどの
スラムを旅してきましたが
ここまでスラムの実情や
ストリートチルドレンの様子を
しっかり伝えてくれている本に
感銘を受けました。
素晴らしい本でした!!