「マルカの長い旅」ミリヤム・プレスラー
2011/08/20公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(71点)
要約と感想レビュー
第二次世界大戦中、ドイツのユダヤ人は、ユダヤ人を表す印として正三角形をふたつ組み合わせた黄色い星を胸に着けさせられました。そしてナチスのポーランド侵攻により、ポーランドのユダヤ人もゲットーに集められたり、どこかに連れて行かれたのです。それが何を意味するのか。うすうす知っていたユダヤ人は、隣のハンガリーへ歩いて逃げようとします。
国境を越えるのは違法ですから、見つかればポーランドへ送還され、収容所行きは確実です。案内人の男は、「国境警備隊やハンガリーの警察隊に捕まりたくなかったら、いいかげんに静かにしろ」、とマルカを怒鳴りつけました。国を持たない民族の悲しさを感じました。
マルカは逃亡の途中で、母親と別れ、一人で生きていくことになりました。食べ物を探し、ドイツ人のユダヤ人狩りを避け、たった一人で生きていく。ホームレス小学生なのです。マルカはゲットー内を歩きまわり、たくさんのひとりぼっちの子どもがいました。一人で生きているのは自分だけではなかったのです。
・マルカはチョトカおばさんにもらったリンゴを食べた。長いあいだ、大切な財産として取っておいたリンゴを。今はもう、マルカには何もなくなってしまった(p178)
マルカは実在の人物で、多くは語らなかったようです。ですから著者の想像が入っていますので、ジャンルは小説となるのでしょう。小説であれば、ある程度の想像が入っても許される。
日本も、ソ連の軍事侵攻、シベリア抑留、米国の東京大空襲、原爆投下等についてこうした小説の形で語り継いでいくのがいいのではないかと思いました。プレスラーさん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・マルカは、ロシア人とドイツ人の夢を見ていた。ラヴォツネの町を出て、東の方角へ去っていくロシア人たちの背中。一方で、西からはドイツ人たちが侵入してきた。(p70)
・マルカがその人の前に立って、「お腹がすいているの」と言うと、その人は「お母さんはどこにいるの?」と尋ねた。それを聞いて、マルカは泣きだしてしまった(p186)
【私の評価】★★★☆☆(71点)
著者経歴
ミリヤム・プレスラー(Mirjam Pressler)・・・1940年、ドイツのダルムシュタットに生まれ、養父母に育てられる。フランクフルトの芸術大学で造形を、ミュンヘンで語学を学んだ後、一年間イスラエルで生活。帰国後、さまざまな職業をへて、1980年、初めての作品「ビターチョコレート」(さ・え・ら書房)を発表。以来、多数の話題作を送り出し、数々の賞を受賞している実力派作家。創作活動以外に、翻訳者としても高い評価を得ている
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