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「小泉官邸秘録」飯島 勲

2008/02/21公開 更新
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「小泉官邸秘録」飯島 勲


【私の評価】★★★★★(94点)


要約と感想レビュー

小泉劇場とは何だったのか

小泉劇場、刺客、丸投げなど、多くの名言を残した小泉元首相。その秘書官から小泉政治の裏側を解説した一冊です。読んでみると、小泉改革の内容は、当たり前のことを当たり前にするということであったと思います。例えば、「骨太の方針」については、予算編成は財務省が行なうのではなく、首相の方針の下に編成されるのが当然という考え方なのだとわかります。


予算編成前に、小泉首相が財務省の幹部に「無駄な部門を五兆円削って必要な部門に二兆円回す。これで三兆円を削減する。後の細かい手順・内容は君たちで考えてくれ」と言い渡したことを、予算編成の主導権が財務省から官邸に移った歴史的瞬間だと著者は証言しています。


諮問会議の「骨太の方針」は、この「概算要求基準」に先立って決定される。・・・重要なことは総理自身が主導し議長を務める諮問会議で決定し、それに従った予算編成を財務省が行なっていく、という、考えてみれば当たり前の仕組み、ルールを作ったのである。これは言ってしまえば簡単だが、霞が関(とそれにつながっている族議員や業界)にとっては驚天動地の大事だったのである。(p23)

反発は折り込み済

小泉改革がうまくいったのは、問題点を正しく把握していただけでなく、その対応策があり、そして、その対応策を実現するための諮問会議、人事などの方法論があったことだと感じました。人事を押さえることで、官僚の面従腹背を防ぐことができるのです。大臣であっても官僚機構が自らの組織のために人事や組織を自由に決定できるという人事慣行に口を出すと官僚機構の反発を招くことに、小泉首相は非常に嫌っていたという。


そして、最後の成功の秘密は、首相の命をかけた信念です。決断が大きければ、それだけ反対派の圧力も強くなります。トップの肚が固まっていなければ、改革はできないのです。小泉首相は、「切られるところは反発するぞ。でもその方がいいんだ、反発がある方が分かりやすい。中曽根さんがそう言っていたよ」と語っていたという。


医療制度改革・・・先送りにしたいというのが党の強硬派の固い主張のようであったが、総理は「三割は断固やるぞ。下でどんな議論になろうと最後は自分のところできちんとやるから」と言って全く揺らぐことはなかった。(p91)


一瞬、政治家になりたくなってしまった一冊でした。しかし、当たり前のことを当たり前にすることが、これほどの困難を伴う国家に未来はあるのだろうか?とも疑問を持ちました。


テレビではこうした内容が伝わらないことを不思議に思いながら、★5つとします。


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この本で私が共感した名言

・昼は主に新聞を念頭に置いたカメラなしのぶら下がり取材とし、夕方はテレビで映像が流れることを念頭に置いたカメラ入りのぶら下がり取材とした(p34)


・モンゴルやウズベキスタン、カザフスタンなど、総理就任直後から行きたいと思っていた国でも、結局訪問したのは退任直前の2006年夏である。(p38)


・特殊法人なんてひどいもんだ。隠れ借金の塊だ。こういうことをみんなに分かるようにしないといけないんだ。そうしたら深刻さが分かるぞ(p62)


・防衛庁には、いわゆる背広組の内局と制服組の陸・海・空の自衛隊という異なる組織原理を有する複数のグループが存在し、なかなか考え方が一致しない。そのため、お互いに自分に有利な情報をリークしようとする傾向がある。(p129)


▼引用は、この本からです。
「小泉官邸秘録」飯島 勲


【私の評価】★★★★★(94点)


目次

第1部 小泉内閣誕生 波高き船出
第2部 有言実行 小泉改革の着実な推進
第3部 小泉改革の総仕上げ 郵政民営化



著者経歴

飯島 勲(いいじま いさお)・・・1945年生まれ。小泉純一郎の初当選から議員秘書。小泉の内閣総理大臣在任中は、内閣総理大臣秘書官。


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