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「ボロボロになった覇権国家(アメリカ)」北野 幸伯

2005/02/03公開 更新
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ボロボロになった覇権国家(アメリカ)


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

モスクワ国際関係大学では何を教えているのか

これだけ歴史の本や小説を読む私でも、学校での歴史の授業は嫌いでした。それは、歴史の授業といっても、単に過去にあったことを暗記し、年号を暗記するだけだったからです。本当は、どうして日本は戦争したのか、どうして日本は敗戦したのか、知っておく必要があるのに、試験で点数を取るためだけの教育が行われているのです。


そのような授業を受けるくらいなら司馬 遼太郎の文庫本を読んでいたほうが、ずっと楽しく、興味深く歴史を考えることができたのです。「歴史」は重要な知識ですが、それをどうとらえるのか、ということはそれ以上に重要なのです。


それは「現状」をどう認識するのか、ということでもあります。著者は卒業生の半分は外交官、半分はKGBというロシア外務省付属モスクワ国際関係大学を卒業し、カルムイキヤ自治共和国大統領顧問になりました。その国際関係の見方には、一見の価値があります。


一方的な見方をしてはいけない。真実は立場によって異なるから、多角的な見方をするようにしなさい(プーチン大統領のブレーン)(p16)

アメリカの自国ファースト主義

第二次世界大戦は日本がアメリカ・ハワイの真珠湾を攻撃しましたが、これはアメリカが石油の輸出をストップしたからです。当時、日本は石油のほとんどをアメリカに依存していたのです。アメリカも石油をストップすれば、戦争になる可能性は認識していました。日本はアメリカの思惑どおり、追い詰められ、包囲され、先制攻撃を行うように誘導されたともいえるのです。


現在の日本は、アメリカの同盟国として国際ビジネスで獲得した資金の多くをアメリカ国債に投資しています。アメリカのドルが基軸通貨であるのは、ドルが石油の決済通貨であること、日本の資金が還流しているからなのです。日本はアメリカの同盟国ですが、実際にはアメリカの言うには逆らえません。日本は「アメリカ幕府の天領」なのです。


著者が主張するのは、日本の真の意味での独立です。すべてアメリカにOKするのではなく、同盟国として協力するところは協力し、意見すべきところは意見すべきなのです。それは経済でも、軍事でも同じなのです。


この国(アメリカ)がなんとか回っているのは、ドルが基軸通貨だから。他の通貨が基軸通貨になると、アメリカは間違いなく滅んでしまいます(p41)

石油のドル決済の重要性

アメリカはドル以外で石油の決済を認めません。2003年のイラク戦争では、フセイン大統領が2000年に石油をユーロ決済に変更したことに原因があるという人もいます。アメリカは、イラクを叩き潰す理由がほしかったので、大量破壊兵器という理由を作り上げたわけです。


アメリカは、あくまで自国ファーストです。在日米軍がミサイルなどで攻撃されるリスクがあるとわかれば、ハワイに戦力を移転します。日本を守るために在日米軍がいるわけではなく、アメリカの戦略的な前線基地としての在日米軍が存在するわけです。


アメリカは、理由があるから戦争をするのではない。戦争をしたいから理由を探すのである。(p31)

アメリカ経済の破綻の可能性

アメリカ貿易収支は赤字であり、ドルが基軸通貨であることや、日本の資金でなんとか回っている状況です。著者はアメリカの覇権がくずれつつあることを指摘しているのです。簡単には信じられませんが、戦争を続けるアメリカにもいずれ落日のときはくるのでしょう。


本のレベルとしては、メルマガ 『ロシア政治経済ジャーナル』の2倍面白いと思えばいいと思いますので、買うことを考えた人はメルマガのバックナンバーを参照してみてください。


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この本で私が共感した名言

・アメリカ政府は、意図的に、アメリカ本土が攻撃される代わりに日本が攻撃されるように、軍を再編成している。(p254)


・国が自滅したり、衰退したりする主な理由は、「経済が破綻すること」なのです。もっと具体的に言うと、「財政が破綻する」(p52)


▼引用は下記の書籍からです。
ボロボロになった覇権国家(アメリカ)


【私の評価】★★★★★(93点)


目次

まえがき 真実はどこにある?
第1章 ボロボロになったアメリカ―没落する覇権国家の綱渡り
第2章 ドルからユーロへ―ドル体制を脅かす独仏の戦略
第3章 中国の台頭―次の覇権国家を狙う"眠れる獅子"
第4章 オイル戦争―戦わずして勝つロシアの戦略
第5章 天領日本の未来―日本が真の独立を果たす日



著者経歴

北野 幸伯(きたの よしのり)・・・1970年生まれ。国際アナリスト。ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学卒業後、プーチン大統領の元ブレーンとともに日露ビジネスコンサルティング会社IMT設立。1999年からメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」を発行。イラク戦争、北朝鮮情勢、次はイランなど次々と予測を的中させる。モスクワに28年滞在。2018年、日本に帰国


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